Interview | Asakusa Deathfest


CARNATION | RUDE | SKELETAL REMAINS

 これまでにAGATHOCLESやASUNDER、INCANTATION、NOOTHGRUSH、NUNSLAUGHTER、WORSHIPといった死ぬまでに一度は観てみたい海外のレジェンドを含む面々を招き、古き佳き東京が薫る街・浅草にて開催されてきたエクストリーム・ミュージックのライヴ・シリーズ“Asakusa Extreme”。今年もACxDCやWAR MASTERが出演を果たした同イベントのみならず、近年はスケート・カルチャーとの融合を図る“Grind Fest”もスタートさせている関根成年氏(C.S.S.O.~BUTCHER ABC)主宰レーベルObliteration Recordsが、初のフェス形式イベント“Asakusa Deathfest 2016”を10月29日、30日の2日間に亘り浅草 KURAWOOD(現Gold Sounds)にて開催。日本からはABIGAIL、ANATOMIA、COFFINS、DEADLY SPAWN、F.I.D.、NECROPHILE、SEX MESSIAHら国内に留まらず世界的に支持される精鋭陣が参加。インドネシアからHELLUCINATEとDEADSQUAD、タイからはSHAMBLES、ベルギーからCARNATION、ルクセンブルクからSCARRED、そしてUSからRUDEとSKELETAL REMAINSが参戦し、さながらデスメタル・オリンピックの様相。メタルというカルチャーならではのユナイト精神と浅草の空気との相乗効果でファンのみならず楽しめる空間となっただけではなく、主催の関根氏が「世界で今起こっているデスメタル・シーンの有名無名、関係なく旬なバンドが出演するのが浅草デスフェストです。SKELETAL REMAINSは見てもらった人には納得のハイレベルな演奏、楽曲のクオリティ。彼らはまだ有名ではありませんが、これからどんどん活躍して行くことが予想できるバンドですよね」と語るように、大会場だけに良質な音楽が存在するわけではないという事実を証明する内容ともなりました。

 関根氏はイベント終了後に「今回は1回目という事で集客が良くなかったのが残念です。知られていないけど素晴らしいデスメタル・バンドは沢山いるので、もっと多くの人に観てもらいたいです。来年また同じ場所で出来たら良いと思ってます」とコメント。次回開催への意欲を見せています。本稿では、海外ヘッドライナー3組、CARNATION、RUDE、SKELETAL REMAINSのショート・インタビューをおたのしみください。


取材・文 | 久保田千史 | 2016年11月
通訳 | Kaori Gutunlama (ANATOMIA)
CARNATION

 ベルギーからやってきたCARNATIONは、2013年結成。昨年独Final Gate RecordsからリリースされたEP『Cemetery of the Insane』で注目を浴びています。BOLT THROWERやBENEDICTIONといったUKレジェンドやDISMEMBER、CARNAGEなどを想起させるユーロ・オールドスクールなサウンドが魅力で、ライヴのハイライトにBOLT THROWER「Cenotaph」のカヴァーを持ってくるセンスは10代のメンバーを含む新鋭とは思えません。しかし隠し味程度にINVOCATOR的モダンな要素が加味された佇まいと、さすがH8000ハードコアのお膝元!と膝を打ちたくなる圧巻のブルータルなライヴ・パフォーマンスはやはり勢い溢れる現行バンド。メンバー全員が同席したインタビューでは主に、ステージでの凶暴さがウソのように穏やかなフロントマン・Simon Duson氏が答えてくれました。

――BOLT THROWERとかDEMOLITION HAMMERとか、皆さんが着ているTシャツからしてすでにオールドスクールへの愛が感じられますね。
 「そうですね(笑)。基本的にはオールドスクールのデスメタルが好きなんですけど、1980年代のスラッシュメタルも好きです」

――でも、皆さんお若いですよね。今お幾つくらいなんですか?
 「メンバーの大半が20代前半です。18歳のメンバーもいます」

――18歳!めっちゃ若いですね。そうするとやはり、オールドスクールのデスメタルやスラッシュメタルは全然、リアルタイムで聴いていたわけではないですよね。
 「もちろん。完全に後追いです」

――どうやってそういったものを知っていったのでしょうか。
 「きっかけは伯父さんが聴かせてくれたIRON MAIDENでした。そこからもっと知りたくなって掘り下げてゆく中で、デスメタルを見つけたんです」

――それが皆さんのやりたいことにフィットしたというわけですね。
 「その通りです」

――ディグってゆく中で、日本の音楽に出会うことはありましたか?
 「何年か前にCOFFINSがベルギーでプレイしたんですけど、それはもちろん観に行きました。それからもっと古い、Xもすごくかっこいいと思います」

――へえ!
 「僕たちとは全然違うスタイルですけどね。できるだけ広い視野で、様々な音楽に触れていたいんです」

――たしかにCARNATIONの音楽は、オールドスクール・デスメタルの一言では片付けられない部分がたくさんありますよね。
 「そうですね。ベーシックにオールドスクール・デスメタルがあるのは間違いないんですけど、例えばベルギーのバンドで言えばABORTEDみたいにモダンなサウンドも好んで聴いているので、そういった影響は少しずつ出ていると思います(*)」
* ライヴ後にはTHE SECRETのTシャツを着ていました。

――初めての日本はいかがですか?
 「人も街も、ライヴ会場も最高ですね。初めての経験にとても興奮しています。嬉しいです」

CARNATION Official Site | http://www.carnationband.com/
RUDE

 ENTOMBEDやSUFFOCATION、EDGE OF SANITYほか名だたる名作デスメタル作品を手がけ、近年はXIBALBAやDISGRACEといったTaylor Young(NAILS, RUCKUS, TWITCHING TONGUES)周辺ハードコア作品にも携わる名匠・Dan Seagraveをアートワークに起用したアルバム『Soul Recall』を独F.D.A. Rekotzから2014年にリリースして話題となったRUDEは、2008年結成の米カリフォルニア出身バンド。PESTILENCE、MORBID ANGELからの影響を公言する徹底的にオールドスクールな重厚サウンドながら、MACABREや初期PUNGENT STENCHの変態感、DISHARMONIC ORCHESTRAやDISEMBOWELMENTの謎感に通じる得体の知れないムード(あくまでムードのみ)も加わったスペシャルなオリジナリティを確立しています。インタビューには、Jason Gluck氏(b)、Chad Gailey氏(dr)、そして現在大阪在住というYusef Wallace氏(vo, g)が答えてくれました。なおRUDEは2017年1月に、再びDan Seagraveがカヴァー・アートを手がけるニュー・アルバム『Remnants…』をリリース予定。こちらもたのしみ。

――資料には“PESTILENCEの影響を受けたバンド”って書いてありますけど、本当なんですか?
Wallace 「当然よ!PESTILENCE最高!あとはMORBID ANGELとDEATHの『Scream Bloody Gore』もね。あんたはどうなの?」
Gailey 「う~ん、TERRORIZER、GRAVE……とかかな。色々。速くてハードヒッティングなドラムが好きなんだ」
Wallace 「ベーシストくんはどう?」
Gluck 「僕は着ているTシャツの通りATHEISTが大好き(笑)。あとはやっぱりSADUS。Steve DiGiorgioのベースは本当にすごいよ!」

――でも、MCがひょうきんだったりするからかもしれないですけど、MACABREみたいに風変わりな雰囲気もあるように思います。
Wallace 「ああ~、なるほどね。MACABREもいいよね。好きでしょ?」
Gailey 「うん、MACABREはかっこいいよ」
Wallace 「僕らは別に何かに怒ったりしてるわけじゃなくて、ただ楽しいからやってるだけ。シリアスなことができないっていうか(笑)」
Gluck 「そうなんだよね。アルバムのカヴァー・アートだけ見たらすごくシリアスに受け取られるかもしれないけど、フツーに人として会う時にはやっぱり楽しいほうが良いよ」

――そのギャップがまた、不思議な雰囲気に繋がっているんでしょうね。
Wallace 「そうだといいな。俺ら誰でもウェルカムだから」
Gailey 「そうだよね、今回だってせっかく日本に来たんだから、みんなでワイワイ楽しみたい。こんな機会なかなかないよ」

RUDE

――今回一緒に出演しているSKELETAL REMAINSはF.D.A. Rekotzのレーベルメイトですけど、本国で共演することはあるんですか?
Wallace 「うん、あるよ。こないだはポートランドの“Famine Fest 2016”っていうフェスに一緒に出たよ。俺らがコヘッドライナーだったんだ(*)」
* ヘッドライナーはMITOCHONDRIONだったようです。

――彼らはどちらかというと、シリアスな感じですよね。
Wallace 「そうだね。プロフェッショナルでかっこいいよね」
Gluck 「演奏も一音一音が完璧で、本当すごいと思う」
Wallace 「俺らは全然だもんな~(笑)。ライヴの進行も忘れちゃったりするし……」
Gailey 「SKELETAL REMAINSはセットリストもばっちりだもんね」
Wallace 「彼らは精力的にツアーをやるから、やっぱり俺らとは違うのかな。今俺らはメンバーがそれぞれ違う場所に住んでるから、単発のライヴもなかなかできないんだ。2人オークランドで、1人はポートランド、俺は大阪に住んでるし(笑)」

――そうなんですね……。それなら余計に、楽しまなきゃ損ですね。
Gailey 「そうそう。やっぱり楽しいのが一番だよ」

SKELETAL REMAINS

 米カリフォルニアを拠点に活動するSKELETAL REMAINSは2011年結成、すでに独F.D.A. Rekotzより2枚のアルバム『Beyond the Flesh』(2012)、『Condemned to Misery』(2015)をリリースしている気鋭バンド。MALEVOLENT CREATIONやSINISTER、はたまたDARK ANGELや『Schizophrenia』~『Arise』期のSEPULTURAなどを思わせるソリッドなスラッシュリフとDEATHに通じる流麗なソロワーク、中期BROKEN HOPEやGORGUTSのように複雑な展開とNASTY SAVEGE~OBITUARY譲りのスローパート、Chuck Schuldiner、John Tardy的な爬虫類ヴォーカルなど、90sファンにはツボ過ぎるポイントがこれでもかと詰め込まれたサウンドで、メンバーのルックスを含め、今が2000年代だという事実がマジ数光年先に吹き飛ぶ存在感。“Asakusa Deathfest”でも、サポート・ドラマーがWARBRINGERの一員というサプライズも加わり、重鎮感漂う完璧なパフォーマンスを披露しました。代表してインタビューに答えてくれたのは、現在FUELED BY FIREのギタリストとしても活躍するChris Monroy氏(vo, g)。

――SKELETAL REMAINSは1990年代の、スラッシュメタルからデスメタルに移り行くシーンを体現しているように思うのですが、実際はどうなのでしょう。
 「その通りだね。キッズの頃からスラッシュメタルを聴いていたからな。徐々にエクストリームな音楽性を追求してデスメタルに辿り着いたから、スラッシュがベースにあるのは間違いないと思う」

――スラッシュメタルを聴くようになったきっかけは、どんなことだったのでしょう。
 「とりあえず最初は、所謂クラシックと呼ばれるものから聴き始めたんだ。IRON MAIDEN、METALLICA、SLAYERとかさ。そこからPOSSESSEDを知り、DEATHを聴くようになり……っていう感じだな」

――たしかに、DEATHのテイストはありますね。ベイエリア・スラッシュの雰囲気があるのも印象的なのですが、それはFUELED BY FIREでプレイしていることが関係しているのでしょうか。
 「それはないね。むしろ、俺が加入してからのFUELED BY FIREはデスメタルの要素が少し増えているんじゃないか?SKELETAL REMAINSでは自分が本当にやりたいことだけをやる」

――SKELETAL REMAINSは、みんなファッションもかっこいいですよね。ハイカットのNikeとAdidas、Vansにスリムデニム。今着ていらっしゃるOakland Raidersのジャケットもめっちゃ90sな感じでイカしてます。
 「嬉しいね(笑)。ファッションも、キッズの頃に聴いて影響を受けたバンドに忠実なんだ」

SKELETAL REMAINS + 関根成年氏
SKELETAL REMAINS + 関根成年氏

――一番影響を受けたバンドとなると?
 「SKELETAL REMAINSを始めるにあたって一番影響を受けたのはGORGUTSとPESTILENCEだな。それからDEATHやOBITUARYもね」

――黄金期のRoadrunnerデスメタルですね。
 「それだけ聴いてるわけじゃないけどさ」

――これまで日本のバンドに触れることはありましたか?
 「アンダーグラウンドだとSABBATやMETALUCIFER。LOUDNESSも当然聴いたし、最近はCOFFINSも聴くようになったね。それから、さっきANATOMIAを初めて観てすげー良いと思ったよ」

――初めて来た日本の印象は?
 「はっきり言って日本でライヴができるなんて思ってもいなかったから、夢みたいだね。驚きだよ。ありがとう」

SKELETAL REMAINS Bandcamp | https://skeletalremains.bandcamp.com/