BLACK GANION

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――そういう、ヒップホップとの繋がりも名古屋は独特ですよね。
 「街が小さいからじゃない?でも最近はあんまり縁がないかな。前は皆でよく遊んでたんだけど、それぞれの追求する道があるからね。その代わりに台頭してるのが即興かな。花電車の渓さんやら、岡崎(幸人)さん(ETERNAL ELYSIUM)やら、ZELDAのNaomiさん(本村直美)やらを集めて即興大会をやったくらいから変態化していったね(笑)。遊んでる奴はどんどん実験的な面白さに向かって行ったかな」

――BLACK GANIONもよりそちらに近づいている感じがしますね。
 「もちろん」

――今回のアルバムは、その空気感を上手く封じ込めたレコーディングになっていますね。
 「そうだね。ベースとドラムなんてほぼワンテイクだもん。音の位置のコントロールは当然気にしてるし。今回オークランドのEarhammer Studiosでレコーディングして、アンプの文化とかに触れたのも大きいと思う。でもやっぱり土地かな。オークランドってやっぱり黒いんだよね、音的に。全盛期に数えるほどしかライヴをやらなかったNEUROSISみたいなバンドがいたからこそ、かどうかは分からないけど、ASUNDERも、STORMCROWも、なんかちょっと違うよね。ゲットーっていうかさ」

――それがしっくりきたということなのでしょうか。名古屋に近い磁場があるのですか?
 「ふてぶてしいところかな。わかんないけど。サンノゼはサンフランシスコの企業の人たちのベッドタウンみたいなところなんだけど、オークランドは刑務所があるアルカトラズの橋を越えたところにあるんだよね。仮に俺たちのアルバムをSteve Albiniが録ったとしたら、それはそれで良いのかもしれないけど、オークランドやっぱりワルさがあるんだと思う」

――海外でのレコーディングは、ほかにどんなメリットがありましたか?
 「英語の環境だったのが良かったかな。日本でも良い作業がいつもできてはいるんだけど、要求を何度も言っていると申し訳ない気持ちが生まれてきちゃったりしてさ。やっぱり日本語だと気使っちゃうじゃん?一生懸命やってくれてるし。そこで妥協しちゃうポイントっていうのが少なからず今まであって。でも英語だとグレーな言葉がない分、関係なく言い合えるっていうかさ。日本的な感謝のフィルターは1回取り除いてみよう、みたいな」

――たしかに、日本的な感謝の気持ちって、複雑というか、独特の湿りがありますもんね。
 「そうなんだよね。岡崎さんはもちろん縁が深くて、腕も良いし、『First』はすごく気に入ってるんだけど。尊敬するエンジニアであると共に、切磋琢磨する仲間でもあるからさ。違う音も試したかったというか。スプリットの音源をEarhammerで録ってみて、ええなあ、と思ったし」

――スプリットとアルバムには同じ楽曲が収められていますが、別の時に録音されているんですか?
 「うん、別のレコーディング。行く度にEarhammerも進化しててさ。今度出るHIGH ON FIREのライヴ盤もGreg(Wilkinson / BRAINOIL, GRAVES AT SEA, LAUDANUM)がミックスしてるから、ちょっと気になるもんね。彼は結構、エンジニアとしては今上り調子なんじゃないかな」

――今回は録音物に加えて、映像作品も同梱されていますよね。
 「PVとかドキュメンタリーはちょっと違うことがしたくて。面白いことをやっていて、コミュニケーションが取れる人を考えた時に、近いフィールドにいた柴田くん(柴田 剛 / 『おそいひと』『堀川中立売』 ほか)が浮かんで。たまたま観て面白いな、って思ったPVが柴田くんの作品だったりしたこともあったしね。しかも彼はFRAMTIDの高山くん(NIGHTMARE / PUNK AND DESTROY)と一緒に住んでたことがあるでしょ。だからちゃんとパンクのマインドを持ってるし、そういう意味でも意思疎通が取れるから」

――映像もそうですし、箱使用のジャケットやポスターも重要なマテリアルですよね。
 「うん、重要。箱はCHAOS CHANNELの時にも使ったから俺的にはそんなに特別なものでもないんだけどね。付録感もあるし」

――パッケージに対する拘りには、何か意味合いが込められているのですか?
 「CDが売れないネガティヴ感より、売る楽しさを考えとったほうが良い、ってことかな。それは最初っからやってたから」

――封筒に入ったEPですね。
 「そうそう。あれはCD棚に縦で入れさせないようにするコンセプトでさ。新譜の期間が過ぎても棚に入らないからさ、表向きに出すしかないでしょ(笑)?」

――なるほど(笑)。今回もそういう意図を込めて?
 「そう。でもさ、インターネットがこれだけ普及しても、エディトリアル・デザインていうか、本の個性ってなくならないでしょ。色んなサイズがあってさ、最初にハードカバーが出て、広まってから文庫版が出るとか。画集だったら、どでかいサイズのものから、紙も柔らかい見易いサイズのものまで、色んな表現の仕方があるじゃない。楽しむポイントいっぱいあるから、絶対になくならないと思うんだよね」

――確かに、そういう部分では音楽のパッケージって自由度が低く見えますよね。
 「そうそう。LPだとでかい分、ジャケットに対する工夫がたくさんあったと思うんだけど。だから買ってて楽しかったんだよね。CDはプラケースに入れるとなるともうフォーマットが決まっちゃうし、コンピュータにデータとして入れちゃえば一緒なのかもしれないけど、やっぱり“物”として触れられることが、イメージを伝える役割として重要だと思うし。何より、楽しいやん。畳むという行為を加えれば、皺は入るけど大きいものが提供できるとかさ。そういうことを考えるのって。本の歴史と比べたら、録音物の歴史なんて全然浅いでしょ。音楽自体は、録音技術のない時代からずっと続いてきた文化なのにさ。破滅の道を想像するよりは、まだまだ楽しいってことを考えたほうがポジティヴでしょ」

――宇野さんは普段、インターネットやコンピュータを普通の人よりもディープに使うお仕事をされていますよね。逆に、ネット配信に関して、ポジティヴな意見をお持ちだったりはしないのでしょうか。例えばまあ、トリルとかヴェイパーなんかはほとんどの音源を無料でばら撒いているわけですよね。あれはあれでネット配信のポジティヴな見せ方のひとつだとは思うんですよ。
 「うん。俺もそうだと思う」

――BlACK GANIONとしてはそういうことは考えていないということですよね。
 「たぶん興味がないんだろうね。職業柄どれだけ駆使していようとも。アナログ的な、動物的な感覚を麻痺させないっていう、また俺的にルールみたいなものがあって。あえてDTMはやらないとか。プロセスは分かってるし、できはするんだけどさ。洋服屋は止めたけど、ミシンもずっと踏んでるし。世代ももちろんあるけどね。ジャケットさえ邪魔、っていうミニマルな価値観も理解はできる。便利だから、っていうのも正しい意見だと思う。でも、そんなに便利競争に付き合わなくても良いような気がしてるしね。だから試聴とかもやってないし。それだけで聴いた気になっちゃいそうでしょ」

――でも最近は、逆に試聴がないとパッケージまでリーチしない、ということもあるじゃないですか。
 「ね。それもすごく良く分かるんだけど。それでも、ウワサとかさ。言霊というか。それってすごい宣伝だと思ってるわけ。そういう魅力というかさ」

――謎めいた。
 「そうそう。本を読んでる感じかな。映画というよりは、本を読んでる印象の方が俺たちには合ってる気がする」

――色んなことが集約されたアルバムになってしまいましたね。
 「ね。欲張りというか。贅沢だよね」

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