Boris with Merzbow

Boris with Merzbow, 2016

――ロックは死んでいると感じて非音楽へと解体した秋田さんと、死んでバラバラになったものから新しいロックを作ろうとするBorisと、相性が良いというのはおもしろいですよね。ある種矛盾するというか。
 「秋田さんは“ノイズ”というカテゴリを作ってきた人だし、やっぱり世代が違うんです。僕らは、“作られたノイズ”を“音楽”として聴いている世代なんで。だから、同じものを聴いても捉え方が全然違うはずなんですよね。でもこうしてコラボレーションが続いていて、おもしろい作品も作れるというのは、本当に幸せなことだと思います。嬉しいですね」

――コラボレーションを具体的に振り返ると、『Megatone』時の秋田さんはラップトップに移行された頃だったと思うんです。今はまたアナログ機材を多用するスタイルに戻っていらっしゃいますよね。Borisは逆に、テクノロジーを駆使する方向へと徐々に歩みを進めていきました。そこでも逆方向の構図が見ます。
 「Borisもよりフィジカルなほうに戻ってきてはいますけどね。一時は同期、シーケンスも使ってライヴやったりしていましたけど、最近はより揺らぎが出るようなスタイルを選ぶようになってきてます。楽曲の制作でもライヴでも。秋田さんも、今ライヴではアナログ機材でインプロヴィゼーション主体の音の出し方になっていますけど、レコーディングではまだPCで緻密に作りこんでゆくスタイルは続いているようです。ライヴと音源制作ではやっぱり違うんですよね」

――なるほど。これまでのコラボレートを通じて、お互いに方法論が流入することもあったのではないかと思ったものですから……。
 「そういうのも自然な流れかな。やっぱり“今どうすべきか”ということはそれぞれに考えていることだと思いますし、どうしても“カウンター”という立場になってしまうところがあるのも同じなので。例えば、世の中の“システム”がよりグリッドに向かうなら、もっと“人”にしかできない音楽にシフトしてゆくような。でも、秋田さんがアナログに戻ったときは“やっぱりこれでいいんだな”って思ったし、背中を押されるような感じはありましたね」

――ラップトップになったときにも、その時代ならではのかっこよさがありましたよね。
 「そうですね。僕らはアナログからデジタルに移行して、そこからアナログに戻った秋田さんを見ているからわかるんですよね。僕らもポストプロダクションを散々やって、そこから身体性重視のスタイルに戻ってきているわけですけど、決して無駄なことはなかった。より懐が拡がったというか、伝えるための言語、音楽的なボキャブラリーが増えたと感じることもあります」

――その感じは、『NOISE』にかなり集約されていますよね。
 「そう言っていただけるとありがたいですね」

――ある種これまでの集大成となった『NOISE』以降におけるMerzbowとの共作は、双方にとって大きな意味を持つと思います。秋田さんも、Merzbow的な『NOISE』にあたる時期を経験されているわけですし、“Boris with Merzbow”にとっての『NOISE』というか。それもあってか、これまでのBoris with Merzbow作品と比較すると、洗練の度合いが全く違うと感じました。
 「そうですか?」

――“PINK FLOYDの作品ではない”というところです。以前、成田 忍さんに“PINK FLOYDみたい”と言われたというお話をされていたので(笑)。その感じは全くないというか。現行バンドの“今”の作品という色合いが強くて。
 「(笑)。なるほどね。MANのカヴァーとかやっていてもそういう感じはするかな?」

――そうですね。
 「ああ……。カヴァー曲を喜んでやっているような素人バンド臭さがなくなって、“今”現行のバンドなっているという感じ(笑)?」

――いえっ、そんな、決して揶揄するような意味ではなくて……。MANのカヴァーに限らずBorisの過去曲も多数収められているわけですが、それらも新鮮な“今”の音として成立しているという。
 「そう言ってもらえるのはありがたいですね。10年以上前の曲を、今もやっていられるというのは嬉しいし」

――秋田さんのサウンドも、やっぱり10年前とは違いますしね。
 「そこも、聴き手の経験で変わってきますもんね」

――そうですね。個人的なお話しをさせていただくと、僕は青春時代に初めて買ったMerzbow作品が『Venereology』という世代なんです。だからやっぱり『Pulse Demon』とか、BASTARD NOISEとのスプリット作といったRelapse(Release Entertainment)からの作品に思い入れがあって。
 「うんうん。僕からすると『Pulse Demon』1枚が名盤視されているのはすごく不思議なんだけど、やっぱりみんな、『Pulse Demon』や『Venereology』が共通認識としてあるみたいなんですよね」

――単純に世代という部分が大きいとは思いますけどね(笑)。だから、今回の作品がRelapseから出るというのはやっぱり嬉しくて。戻ってきた感じというか。
 「そういう意味もあってRelapseから出したかったんですよ」

――そういう意味含まれていたんですか。
 「僕もMerzbowやMASONNAがRelease Entertainmentから出していた時期を体感しているので、そういう流れはもちろんあります」