Julia Holter

Julia Holter / photo ©Tonje Thilesen

――音楽を始められた頃からやりたい音楽が変化したわけではなく、環境が変化したということなのでしょうか。
 「というよりも、作家として、全体的な目的は特に定めていないんですよ。音楽をもっと深く探求してゆきたいという気持ちはありますが、“こういう音楽がやりたい”という一貫性はないんです。作品毎にそれは変わります。例えば『Tragedy』と『Loud City Song』は、シネマティックな音楽を作りたかったという点で目的が共通しています。“オーディオ・フィルム”のような感じですね。『Ekstasis』と『Have You In My Wilderness』は、同じ時期に作った楽曲のコレクションという側面が強いです。『Tragedy』の時は、もっとオーケストラのような大きい規模でアブストラクトな音楽を作ることを考えていたんですよ。『Have You In My Wilderness』では、歌詞に重きを置きました。そうすると必然的に声に注視することになりますよね。その結果、もっと“曲”の形式というか、先ほどおっしゃっていたように“音楽的”な、トラディショナルな音楽の作り方になっていったのだと思います。作曲にあたって違いがあるとすれば、そこが大きな違いです」

――『Have You In My Wilderness』を構成するにあたって、コンセプトのようなものはありましたか?
 「コンセプトと言えるものはないですが、今考えると、音楽的には1960年代のバラードやクラシックから影響を受けた作品なのだと思います。暖かいサウンドの黄金時代ですね。ただ、それを念頭に置いて制作したわけではないんです。『Ekstasis』についても同じことが言えます。音楽を作っていると、何故かはわかりませんが、ある瞬間に“仕上がった”という感覚が訪れるんです。その出来上がったものを聴いてみて初めて、曲が何からの影響を受けているのか、どんな要素を持っているのか、ということが理解できます。最初からコンセプトがあるわけではなく、後から気付くものなんです。タイトルはそれに合わせて付けていきますね。『Have You In My Wilderness』はタイトル・トラックが最もこの作品を表現していると感じたので、アルバムのタイトルにもしました」

――おもしろいですね。作る音楽を想定してから制作に取り掛かるミュージシャンのほうが多いですよね、きっと。
 「そうかもしれないですね。でも私の周りにはそういった部分でも共感できるミュージシャンがたくさんいます」

――ホルターさんは内面的な、無意識の部分を重視しているということなのでしょうか。
 「全くその通りです」

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