Kyoka

Kyoka

――あの展示は“山ノ家”(新潟・松代)で制作されたんですよね。
 「はい。汗をかきながら(笑)。今年も山ノ家でのレジデンスをしたいと思っていて、日程を調整中なんです」

――所謂ビーティなエレクトロニック・ミュージックと、制作で汗をかくようなマニュファクチュア的な表現を両立している方ってなかなかないと思うんです。そういった意味で、自分に近いと感じる人はいますか?Kouhei Matsunagaさんは近い気がしますけど。
 「そうですね、Kouheiさんは絵も描いてますもんね。でもどうだろう、わたしの周りはけっこうそういう人が多いかもしれないです。まあCarsten(Nicolai)は展示もやってますけど、ほんわかしたところはないですもんね……褒め言葉です(笑)。Grischa Lichtenbergerは、拾ってきた木材のフォルムを活かした、ちょっとほんわか系サウンドアートの展示をよくやっていますね。少し前にGrischaとKANGDING RAY(David Letellier)がベルリンで一緒に展示をやっていたんですけど、それがすごくおもしろかったです。結局実際には観に行けなくて、後で2人が写真を送ってくれたんですよ。KANGDING RAYはちゃんとCADで設計したアルミのカキーンとした作品なんですけど、その隣でGrischaが木を使った展示をやっていて」

――組み合わせの妙もありあそうですね。
 「そう。2人ともコンセプトの説明を熱心にしてくれて、ちゃんとしたアーティストさんたちなんだ、ということを再確認しました(笑)」

――Kyokaさんだってちゃんとしてますよ(笑)。ベルリンでは展示活動やっていないんですか?
 「1度やったことがあるんですけど、最近はベルリンにそこまで長くいないから。でも追々やりたいです」

Kyoka
photo ©Ryo Mitamura 三田村 亮

――どういったものを計画しているのでしょう。
 「そのアイディアが出ないからやれないっていうのもあるんですよね(笑)。少しはあるんですけど、もう少し考えたくて。とりあえず3月末からスウェーデンのElektronmusikstudion EMSというところででレジデンスをやります。少し前にも1週間ほど行っていたんですけど、モジュラー・シンセがたくさんあるのがそこのウリなんですよ。モジュラー・シンセ漬けの日々を送る中で、人生変わる気がするほど音が見えてきて。今までなんとなくわかるけど確信が持てなかった予測の部分が、全部確信になっちゃった感じがしたんですよ。自分で機材を作る工具が全部揃ってる部屋とか、サウンドとデザインに関する書籍が充実してる部屋、サラウンドの部屋なんかがあったりするので、また行ったら自分が出来ることをもっと探索したいですね。それを踏まえて何か作れたらいいな。ボーナス・トラックの曲は最初に行った時にそこで作った、初めてのモジュラー・シンセ遊びの曲なんですよ。もしかしたらパッと聴きはサラっとはしてるかもしれないですけど、音に対する確信を得た上で作った曲なんです。Byetone(Olaf Bender)とFrank、Robertに聴かせたら、“Kyokaがいきなり進化した!”ってすごく評価を上げてくれて。本当よかった……。わたしいつまでもヨチヨチじゃないのよ!みたいな(笑)」

――ただ、そうやって知識を蓄えていくと、頭でっかちになりがちじゃないですか。それを今回のアルバムのように、自然と体が動くフィジカルな作品に落とし込んでいくというのには、何か拘りがあるんでしょうか。
 「それはありますね。わたしの予想だと、頭でっかちな人って、元からある程度賢い人たちなんだと思うんですよ。たぶん。ちょっと違うところに住んでるのかな、っていう。わたしは賢くないところから始めたから、例えば“曲が作れなくてどうしよう”とか“世の中がよくわからない”って思っている人たちや、不器用な人たちの気持ちがよくわかるんです。わたし自身キョーレツに不器用なので。そういう人たちに対して頭でっかちになるっていうのは、まず出来ない。わたしはガツガツぶつかりまくるタイプなんですよ。頭でっかちになんてなったら、後で痛い目に遭いそう(笑)」

――逆に、色々見えてきてしまったことで、見えなかった頃の心境には戻れない、ということに対する寂しさを感じるようなことはありませんか?
 「それはないです。もっと色々見てみたい。勉強嫌いのわたしが言うのもナニなんですけど、知識って、自分の視野や世界を拡げて、結果的に自分を新しいところに持って行くじゃないですか。そういう意味で、勉強したり、本を読んだりするのも旅と同じ。もっと色々音について知ることによって、どんどん旅をしていきたいと思っていて。今、物理的にわたしが色んな国に行けてるのも、元々はわたしが音を作りたいと思ったことから始まってるから、音について知れば知るほど違う世界に、知らない世界に連れていってくれるんですよ。そこでまたおもしろいと思える人に出会うことで、さらにまた別の世界に行ける。なんか、すごく良い人生だな(笑)」

Kyoka
photo ©Ryo Mitamura 三田村 亮

――良い人生ですね。
 「うん。また最近、改めて思うようになりました。小学生の頃に、こんなに自分の世界が拡がるなんて想像出来なかったじゃないですか。そう考えると、ツイてる(笑)」

――ツイてるだけじゃ、こうはならないでしょう(笑)。
 「そんなことないですよ。わたし、運とタイミングが良いタイプだと思いますよ(笑)」

――最後に、タイトルにはどういう意味が込められているんですか?
 「“Is Superpowered”は、アルバムに入ってる各曲に付けてたんですよ。それぞれ元の素材を“強化”して出来てるから。Raster-Notonて最近、“super”が付く作品が多かったんですよ。池田亮司さんの『supercodex』とか、Frankの『Super.Trigger』、そしてRobertさんの『redsuperstructure.』とか。だから、タイトルを決めることになった時、Olafにに“またsuperか!”って言わせたくてこれにしました(笑)。でもアーティスト名と並ぶと“Kyoka is superpowered”みたいに読めることに気付いてからは、それちょっと恥ずかしいなあ、と思ってるんですよね(笑)」

Kyoka official site | http://www.ufunfunfufu.com/
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