MASONNA

MASONNA

――SOLMANIAとはもっと以前から交流があったのかと思っていました。
 「なかったですね。大野さんはそれまでに1回くらいしか会ったことがなくて。知り合ったきかっけも、なんかアートの人が……」

――アートの人?
 「……思い出した。田村さんていう、ドロドロに溶かしたオブジェを作ってる人で大野さんの芸大時代からの友人だったんですけど。その人がコンタクトを取ってきたんですよ。何でやったかは忘れてしまって……個展をやるから音を使わせてくれとか、そんなんかな。1度大阪で会うことになって、その時に大野さんの家に連れていかれたんですよね。ちらっと」

――それが初対面?
 「うん。ほとんど喋らなかったけど」

――田村さんは音源を聴いてコンタクトを取ってきたんですか?
 「うん。レコードやカセットにコンタクト・アドレスを載せてたんで、手紙が来たんだったかな。彼の作品の写真と一緒に。まあそこからも繋がってるんですけど、それよりもやっぱり岩崎さんの存在のほうが大きかったですね。彼は残念なことに、2005年に突然、バイク事故で亡くなってしまったんですけど……。彼が電話をしてこなかったら、ライヴを今やってなかったかもしれないです。そこから大阪でライヴをするようになって。C.C.C.C.なんかもMONDE BRUITS企画で一緒やったと思うんですけど。SOLMANIA + MASONNAの後に日野繭子さんと一緒に“マゾ繭子”とかやりましたね(笑)。その後本格的にMASONNAのソロでライヴを始めて。92年くらい」

――そんなに後になってからだったんですね。
 「そうですね。色々段階があったんですね。やっぱり初めはライヴを中心に考えてなかったので、今みたいなスタイルでもなくて。一番最初にMASONNA名義でやったライヴは、東京でやったと思うんですよ」

――えっ、そうなんですか?
 「うん。新宿のシアターPOOっていうところで、C.C.C.C.の企画」

――その時はどんなスタイルで?
 「アコースティック・ギターにコンタクト・マイクを付けて、鳴らしながらホールの中に叫んで。まあディレイとか咬ましてたんですけど、叫びながらだんだんギターを破壊していくっていう。音源でやっているようなことはライヴではできないと思ってたんで、逆に違うことしよう思ってて。その時にインキャパの美川さんと初めて会ったの覚えてますね。“録音して良いですか?”って聞かれて、一番前でテレコを準備してたのを覚えてるけど(笑)」

――(笑)。レコーディング・プロジェクトとしてスタートしたということもありますけど、ライヴと録音ではやっぱり勝手が全然違いますよね。作り込み方とか。
 「違いますね。だって、レコーディングは良いところだけが使えるし、編集で何とでもなりますからね。ノイズの出音も録音機材に直接ぶち込むのとアンプから出すのも全然違うのが分かったし。フィードバックを使うから同じにならないんです。それとあの絶叫やテンションがピークのままの状態をライヴで連続してやるのは無理だな、って思ってたんですよね。そうこうしているうちにライヴのお誘いも増えてきて、色んなことが繋がってJOJO広重さんと出会ったり。それでAlchemyからのリリースとかも決まってくるんですよね。その頃、93年前半はたぶん、ライヴをしながらノイズで知り合った人の家に泊めてもらう生活が多かったと思うんですよ(笑)」

――特定の家に住まずに、ということですか?
 「そうですね。カセットを作ってレコード屋に卸したり、買い取ってもらったりして、そのお金を旅費にして大阪とか、東京に行って。働かずにそういう生活をしていたと思うんですよ」

――ということは、結構売れていらっしゃったんですね。
 「売れてましたね(笑)。でも人ん家やからね、タダだから。東京だとMerzbowの秋田(昌美)さんの家によく泊めてもらって。その時にFLYING TESTICLE(Merzbow + MASONNA + Zev Asher)っていうユニットのレコーディングも秋田さんの部屋でしました。そのうち、大阪に住むことになって。94年やったかな。激動の数年間やったから、よく覚えてないけど」

Space Desia
FLYING TESTICLE ‘Space Desia’, 1993 Charnel Music

――何故大阪に住まれることになったのですか?
 「岩崎さんの企画でBEARSに出てるときに、山本精一さんに出会ったんですよね。その時山本さんはBEARSのブッキングもやられてて。ほんで“山崎君、毎月何かノイズの企画やってよ”って言われて。その頃のノイズだけのライヴって、やってもたぶん10人も客来なかったんですよ(笑)。10人以上来たらすごいな、みたいな感じやったんですよね。それなのに、土日とか取らせてくれるんですよ。それも何のノルマもなしで(笑)。“ええねん、ええねん”とか言って。山本さん、どういうアレなんやろ?って思ってましたけど」

――すごいですね。それだけ山本さんは先見の明があったということですよね。間違っていなかったわけですものね。
 「その時間違ってなかったかどうかは分らないですけど(笑)。でもそんなんでやらせてくれて。言ってくれるから何も考えずにやってたんですよね。やりますわ~、みたいな感じで。だったらもうBEARSの近くに引っ越そう思って。引っ越しも岩崎さんの車で手伝ってもらったな。ほんとに世話になってた」

――なるほど。そこまで音楽、というかノイズ一筋だったんですね。ほかに興味が湧いてくるようなことはなかったのですか?
 「なかったですね。でもまあ大阪に住んだら家賃も払わなきゃいけないから、Alchemyで使ってもらって。それで毎月BEARSでライヴをするようになったんですね」

――その頃に現在のMASONNAスタイルを編み出したのですね。
 「そうですね。初めはまだ音源とは全く違う感じでやるのが何回か続いてたんですよ。ハイハット振り回したり、ハーモニカにコンタクトマイク付けてやったり。こないだYouTube観てたらそういうのも上がってた(笑)」

――(笑)。ご自身の昔の姿が、そうしてYouTubeにアップされているというのはどういう気分なんですか?
 「う~ん。最近なんかヒドいですよ。ライヴした次の日とかにもう上がってるんですよね。どうなんだろうね、あれね。あの、昔下北沢でワンマンやった時って来てないですか?」

――Shelter(東京・下北沢)ですよね。
 「そうそう。ゆらゆら帝国とBorisにアンプ借りてやったんですけど。OrangeとAmpegのアンプをバーンとシンメトリーに置いて積み上げて。あの時Borisのスタッフが撮ってて、編集してリリースしたいって言ってたんですけど、観たら自分のパフォーマンスが気に入らんくてボツになったんですよね。久しぶりに観たら良いかも分らないですけど(笑)。まあ映像で観られるんは作品として残すのにすごく拘りがあるんで。だから、勝手にYouTubeに上がってるのはなんかもう別もんの感覚だけど。自分の手は掛けてないから」

――そういうものに憤ったりしませんか?
 「(笑)。どうなんですかねえ……。あれって、苦情みたいなの書いたら削除してもらえるの?」

――してもらえますよ。
 「そうなんですね……どうなんですかね……」

――ノイズ界隈って昔から、好きな人はライヴを録音して帰るじゃないですか、カルチャー的に。バイノーラルで録ったり(笑)。
 「ああ(笑)」

――そういうものの延長線上と考えるのとは、またちょっと違いますよね。
 「ねえ。でもそういう時代なんですよね、今はね。音源もそうやもんね。YouTubeに音源だけのやつもアップされてるし」

――そうですね……。すみません、脱線してしまって。
 「うん。まあ、そういう色んなスタイルでやっているうちに、やっぱりリリース音源の感じに近づけようかなと。ロウな感じでもそれはそれでいいかなって。だんだんMASONNA美学みたいなものが出てきて。やっぱりライヴやるからには他の人がやってない見た目のスタイルをやらないかんと思ってたんですね。テーブルに機材をならべてやる人はいるでしょう。インキャパとかMerzbowとか。ギターでやる人もおるでしょう」

――SOLMANIAですね。
 「そうそう。NULLさんとかね。あと、当時ノイズといえば非常階段やハナタラシのスキャンダラスなパフォーマンスがありましたけど。そのどれにも当てはまらないのが良いな、ということで。テーブルは使わない、楽器を使わない、1人でやる、でヴォーカルがメイン。絶対マイクスタンドを立てて、足元にエフェクター。テーブルやと、まあちょっと動きはあってもそんなに動けれへんし、ギターも持って動いてるんで制限されるし。もっと音と体の動きが連動したものが良いな、と思って、飴の缶にマイクを付けて振れば振るほど音が激しくなるようにして(笑)。それをワイヤレスで飛ばしてエフェクターでフィルターかけたりするんですけど。まあそれは下に置いておいて、振りながら自在にどこへでも行けるっていうか。そういうスタイルに」

――他のノイズ勢に比べると、フィジカル度が高いですよね。それはパンク / ハードコアを経由しているが故なのでしょうか。
 「うん、それもあるし、観に行くんやったら、ヴィジュアルのインパクトが大きい方が良いでしょ。逆にね、音はちゃんとできていないと思うんですよ、ライヴで(笑)」

――そんなことないですよ!
 「いやいや、できてないんですよ(笑)、CDのようには。落ち着いてやったらもっと長い時間できるし、コントロールもできるっていう利点はあるんですけど、それを捨ててでも、ジャンプして飛び降りた瞬間に音が変わったりとか(笑)、そういう方を優先したかったんですよ。自分も観たらそういう方が面白いな、って思って」

――それは“楽しさ”と受け止めて良いのでしょうか。例えばMerzbowだったら、システムに対する憎悪がパフォーマンスに込められていますよね。
 「そんなん全然考えてないです(笑)。なんやろな、“楽しさ”って言うと違うかもしれないですけどね。どうなんやろね。“ショウ”っていうかな。音だけ聴くならCDで十分かな、と思うんですよ。若干の動きでもライヴ感はあるかもしれないですけど、捨て身でやる、っていう感じとは違うと思うんですよ。観ていて」