寺尾紗穂 + 松井一平

寺尾紗穂 + 松井一平

――お2人で活動するようになったのは何かきっかけがあったのでしょうか。
松井 「次に会ったのっていつだったっけ?」
寺尾 「麻布のRainy Day Bookstore & Cafeで私がふちがみとふなとさんとライヴをやった時だと思う。山野さんと一平さんが観に来てくれて」
松井 「そうだね。そこからちょくちょく会うようになって。あの日終わってから呑みに行って、全員終電逃したんだよ。途中まで一緒にタクシーで帰ったんだけど、タクシーの中で話した会話が、今思えばわりと創作に関することだった気がする。どんな内容か忘れちゃったけど」
寺尾 「私も覚えてない」
松井 「でも良い話をしたような覚えがあるんだよね」
寺尾 「私は呑んだ時に、家庭的なバックグラウンドっていうのかな、そこで通じ合いそうなところを感じたんです」

――家庭的なバックグラウンド?
寺尾 「まあ、普通の家庭環境ではないというか。それを引き摺っている部分があるな、っていう」
松井 「生い立ちとか今に至る経緯が、ちょっと変わってる感じ。それが創作と絡むのかどうかはわからないんだけど」
寺尾 「そうだね。価値観が被るところが多いと思って」
松井 「そういう部分の話をすることが多いよね。例えば、音楽的に“あなたのピアノのタッチが……”みたいなところで惹かれ合ったというよりは、バックグラウンド的な部分の話をしたほうがおもしろい感じだったんで」

――寺尾さんは社会的に弱者とされている人々と関わる活動も多いですよね。一平さんはハードコア・パンクのバンドでも活躍されていたわけですが、ハードコア・パンクも同様にに弱者視点の音楽だと思うんです。そういう部分で通じているのかな?と思っていたのですが。
寺尾 「うるさい感じの音楽をやっているのは知っているんですけど(笑)、どういう内容を歌ってるのかまでは知らなかったです」
松井 「音楽の話自体、ほとんどしてないですね」

寺尾紗穂 + 松井一平
photo ©Ichiko Uemoto 植本一子 | 天然スタジオ

――もっとパーソナルなところで。
松井 「そうですね。たぶん、今まで音楽の話ってしたことないと思う。一緒に曲を作ってても、音楽の話しないもんね。そこがおもしろいところなんですよ」
寺尾 「私、音楽のこと知らないし」
松井 「っていつも言うの(笑)」
寺尾 「本当に、何も知らないんですよ。あの、マスタリングとか全然わからないし。何が変化してるのか全然わからないのに、ああ、良いですね、って相槌打つのが面倒臭い(笑)」
松井 「すごく良い耳持ってるのに、こういうこと言うんだよ(笑)」

――寺尾さん的に音楽を“善し”とするポイントはどのあたりに置いているのでしょうか。
寺尾 「曲の良さ」
松井 「そうなんだ。僕はその時々で移ろう感じ。いつも絶対同じ基準ということはないと思う」

――寺尾さんと作曲はやり易い?
松井 「うん、自分の物指で完成形を決めてないから。例えば自分が送った歌詞が、違う言い回しになって返ってきても納得出来る。別の脳みそな感じが好き。バンドが好きだから(笑)」

――わすれろ草でお話を伺った時にもそうおっしゃってましたもんね。その一平さんのバンド感と、寺尾さんがライヴのMCでよくお話されている花田清輝の“楕円”が、すごく近いように感じるんです。具体的に曲作りはどのように進行するのでしょうか。
寺尾 「一平さんに詞をぽんと投げてもらって、それに対して応えて」
松井 「それを纏め上げてることもないんだよね。投げて、投げ返ってくるだけというか」
寺尾 「ほぼそうだね。私が勝手に言葉を変えたりとかはしてるけど(笑)」
松井 「僕が投げた詞を自分で書き起こして、その字を間違えて読んじゃうみたいなんですよ」
寺尾 「自分の書いた字が汚くて読めなくて」
松井 「ライヴ中に歌ってるのを聴いて、あれ?違うな、と思ったりすることもあるんだけど、それがまた良かったりするんです。それくらいユルいんだけど、緊張感はある関係だと思う。信頼してるっていうことかもしれない。そうじゃないと投げられないから。普通は投げるまでが大変でしょ?しかも、投げてから返ってくるのがすごく速いんですよ。送ってから30分後には絶対曲になって返ってくる」
寺尾 「良いな、と思った詞にはすぐに曲が付けられる。やっぱり、一平さんが書く詞のクオリティが高いところにあるから」
松井 「本当に、この人は果てしなく作れるんじゃないかと思ってしまうくらい速いんですよ。それに、僕が送っているのは “詞”というよりも“詩”なんですよね。僕は “詞”じゃないと歌いにくいんだけど、寺尾さんはメロディに合わせて文章を削ることもなく、僕が思いついて書いた詩にそのままメロディを当ててくるんです。その気持ち良さったらないです。奇跡的というか、おかしい(笑)」
寺尾 「(笑)」
松井 「そういうやりとりをいつも夜中にやってるんだよね」

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