寺尾紗穂 + 松井一平

寺尾紗穂 + 松井一平

――それは生活のサイクル上?
寺尾 「うん、子供がいるので、曲を作る時間が深夜しかないんですよ」

――でも、お子さんがいらっしゃると朝も早いでしょう?
寺尾 「そう……ですね」
松井 「だから曲作りに全く時間をかけていなくて。今6曲くらい出来上がってるんですけど」

――2人で集まっての練習もなかなかできないのでは?
寺尾 「練習する時間はないですね……。子供が生まれる前は人並みに練習もしていたんですけど、生まれてから急にその時間がなくなって。その頃はかなり精神的に不安定だったかたな。やっぱり練習しないと怖いから」
松井 「怖いんだ、そういうの」
寺尾 「怖い怖い。だって、100からいきなりほぼ0の状態になって、それでもライヴは普通にやらなきゃいけないから。不安はすごく大きくて」
松井 「あんまり不安に思わなそうな印象があったんだけど(笑)」
寺尾 「うん、今はそういう状態になったんだけど(笑)。だんだんライヴの当日、本番に集中する感覚が掴めてきたというか。実際、日常ほとんど練習をしていないと、その場で弾くのがすごく楽しいんですよ。練習があると、その成果を出すような感じになりがちだけど、純粋に喜びの場になるというか」
松井 「喜んでたんだ、知らなかった……喜んでるようには見えなかった(笑)」
寺尾 「(笑)。明るい歌が少ないからね」
松井 「その前に、音楽が好きなのかどうかもよくわからなかった(笑)」
寺尾 「好き好き。弾いて、歌うのが好きなんだよね」

――好きじゃないと音楽やってない気はするんですけど……(笑)。
松井 「そうなんだけどさ(笑)。寺尾さんはそれが不思議に思える感じがあるんだよね。苦しんでるとまでは言わないけど、あまりに自然にやってるから」

――作曲についてそういったお話を伺ってると、寺尾さんの弾き語りと一平さんのドローイングでのライヴに直結していそうな感じがしますね。
寺尾 「でも、作曲の時に即興みたいなのはなくて、型としては作った時にきちっと決まってるんですよ。それを多少崩すことはあるけれど。ライヴであまり変化しないでしょ?」
松井 「うーん……変化すると思うんだけど……。アレンジが毎回違う気がする(笑)」
寺尾 「ああ、あれはね、いつも勘違いしちゃう曲なの(笑)」

――特に打ち合わせはしていないのでしょうか。
松井 「全く。“こういう曲やるよ”っていうのも聞かされてないもん」
寺尾 「順番もちゃんと教えてないね(笑)」
松井 「何曲やるかも決まってないから、尺も決まってなくて(笑)」
寺尾 「まあ、だいたい出来た曲をやるという感じで。一緒に作った曲を中心に」

――画文集『おきば』を作るにあたっても、そういう関係性で進行してゆくのでしょうか。
松井 「最初に作ろうと思った時点で、寺尾さんには自由に書いてもらって、僕も自由にやる感じで良いんじゃないかな、と思って」

「おきば 2」
寺尾紗穂 + 松井一平 ‘おきば 2’, 2013

――相談めいたものもなく?
寺尾 「うん、なかったですね。書いて、送って」
松井 「でも途中で原稿がぐちゃぐちゃになっちゃって、書く気なくしたりしてたよね(笑)。手書きだから。1回心が墜落して」
寺尾 「そう」
松井 「それを引き上げることはしましたけど」
寺尾 「うふふ(笑)」

――寺尾さんの文章は独特のリズム感があって、音は出ないけれど、音楽アルバムのような仕上がりに感じました。
松井 「ありがとう。僕もそういうところが良いと思ってて。寺尾さんは会話もメールの文面も、イメージがすごく飛ぶっていうか(笑)。それが文章の中にも入ってる」

――先ほどお話に出てきた植野さんをはじめ、寺尾さんは様々な方とコラボレートされていますが、長期的なスパンで一緒に活動されているのは一平さんくらいなのではないでしょうか。
寺尾 「そうですね。一平さんは、出会えた、っていう感じだったから」
松井 「音楽だけで繋がってるような感じではないのが良いんだと思う。音楽は置いておいてもいいかな、っていうくらいの。普通に人としてたまたま出会えて、お互いたまたま音楽をやっていたっていう言い方が一番近いかも」
寺尾 「だから創作も、お互いなんか呼吸みたいにやりとりが出来て」
松井 「なんか、全然気負ってない。何にも」

寺尾紗穂 official site | http://www.sahoterao.com/
松井一平 official site | http://ippeimatsui.com/