Interview | MCウクダダとMC i know


楽しまなきゃ意味がない

 沖縄を拠点に活動し、嫁入りランド、Especiaとの共演、“ゲットー酒場”や“りんご音楽祭”といった名物イベントへの出演などで注目を浴び、2015年にはフル・アルバム『u & i』をリリースしているラップ・デュオ“MCウクダダとMC i know”。ウィットに富んだトラックに、日常生活の喜びや不満を何の衒いもなく綴るリリックを乗せ、フィールドを限定しない神出鬼没の活動を繰り広げるスタイルは一見無節操に思えるかもしれないけれど、その根本は想像以上にシリアスで希望に満ちたもの。沖縄で暮らす2人が今何を思うかを、ざっくばらんに語っていただきました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2016年2月


――ではベタな質問から。結成はいつ頃なんですか?

u 「結成したのは……2年前かな?」
i 「2013年の12月ですね」

――お2人はその以前からお知り合いだったのでしょうか。
i 「大学が一緒なんですけど、高校生のときからお互いやんわり知ってはいたんですよ……」
u 「話せば長くなるんですよ!」

――長い話聞かせてください。
i 「わたしたちファッションが好きで、2人とも“ファッションを楽しもうよ!”みたいな謎のネットサークルみたいなのに入っていて……」
u 「高校3年生限定の、代々続いてるサークルなんですけど。高校は別々だったんですけど、それぞれサークルには入っていて、ネット上でお互いを知るみたいな。メンバー紹介みたいな感じのページがあるんですよ。昔ホームページとか流行ったじゃないですか」
i 「Decologとか」
u 「そうそう。それ以前のやつですね。@peps!」
i 「@peps!ヤバいな!」
u 「完全に@peps!世代なんですよ!でもそれでi knowの存在を知っていて」
i 「それぞれ日記とかがあって(笑)。お互い“なるほどなるほど”みたいな」
u 「“クリーム”っていう団体だったんですけど」

――クリーム!
i 「わたしたち三代目クリームなんですよ(笑)!クリーム最高です。『FRUiTS』とかに載っちゃうレジェンドもいるし」
u 「文化(服装学院)に行く子が多かったり」

――ネットの付き合いだったわけですね。
u 「でもレス飛ばしたりとかはなくて、お互い存在を知ってただけ」
i 「そんな状態のまま、大学で一緒になったんですよね」
u 「大学に入ってからも暫く実際に会うことはなかったんですけど、やっぱりファッションで何かやりたくなって。一緒に始める人を探すにあたって声をかえるのってファッションに興味がある人じゃないですか。クリーム出身で同じ大学の人っていうのがi knowだったんですよ。それでわたしとi know、好っていう子の3人が集まって、後から加わった男の子と4人で“F.O.R”っていう団体を作ったんです」

MCウクダダとMC i know

――エフオーアール?何の略なんですか?
u & i 「“Fashion Over Ryukyu”です!」
u 「街に出ておしゃれな人を撮影する、ファッションスナップみたいなことをブログで始めたんですよ。写真撮らせてもらって、アイテムのブランド名、買った場所も聞いて。初めて話す人ばかりだから、会ったときに抱いた印象や、その人のファッションを斬新だと感じた理由も勝手に文章にしたり」

――真面目ですね。
u 「真面目ですね。研究みたいな感じなのかな」
i 「うん、研究みたいだったよね」

――お2人が一緒に活動を始めたのは、音楽ではなくファッションからのスタートだったんですね。
i 「そうですね。わたしはクラブとか行ってなかったし、ライヴもたまに行く程度だったので」
u 「洋楽のヒットチャートばかり流れてる感じのクラブにがんがん踊りに行ってましたね。うふふは(笑)。ギャルになりたかったんですよ」
i 「そうだね。ウクダダはギャルになりたかったんだよね」

――ギャルにはなれたんですか?
u 「レトロギャルです。ファッションには通じていたかったので」
i 「その頃、80年代っぽいレトロな服が流行ってたんですよ。ぎりぎりギャルだったよね。そこ攻めてたよね」
u 「攻めましたね。レトロなのか、ギャルなのかの危ういラインを」

――派手な世界が好きだったわけではなくて、単純にファッションが好きだったということ?
u 「そうです。つるんでた友達がイケイケなんですよ(笑)。元々ヒップホップが好きということもありますけど」
i 「ダンス部だったもんね!」
u 「そう!ガールズ・ヒップホップ(笑)。でも実はi knowもヒップホップ昔から好きなんですよ!」

――やっぱり、そういう今に繋がる下地はあったんですね。
i 「中学生のときに、作詞をしてたんですよ。韻踏んで。まさに厨二病ですね(笑)」
u 「ポエマー」
i 「そうなんすよね~。めっちゃポエマーなんすよ(笑)。わたしは、ハイカラ(HIGH and MIGHTY COLOR)とかモンパチ(MONGOL800)とかが出てきたような、バンドがすごく盛んな地区に住んでいて。みんな中学生の頃からバンドをすごいがんばるんですよ」
u 「バンド・カルチャーすごいよね」
i 「そうそう。バンドがんばってる友達に、自分で書いたリリックを見せてたりしてたんですよ。どう?使っていいよ(ドヤ)?って」
u 「ヤバいよ(笑)」
i 「使わねーよ!みたいな(笑)」

MCウクダダとMC i know

――自分でバンドをやろうとは思わなかったんですか?
i 「思ってなかったですね。カラオケが大好きで、歌うのは楽しいと思ってましたけど、人前でやるなんて考えたこともなかったです」

――お2人は今20代半ばくらいだから、所謂日本のヒットチャートでもラップの曲がフツーに入っている世代ですよね。
u 「あ~!そうですね。RIP SLYMEとか」

――だからラップに親しみがあるのはわかるんですけど……クラブ通いとカラオケ好きポエマーが、どうして実際ラップをやることになったんでしょう。
i 「そうですよね。なんでこんなことになってんの?って話ですよね……」
u 「それもファッションがきっかけだったんです。F.O.Rの紙媒体を作って古着屋さんとかに置かせてもらっていたことがあって、それをG-shelterっていう箱で色々イベントを企画していらっしゃる817さんが見つけて連絡をくださったんですよ。G-shelterで“沖縄のバンドマンはもっとちゃんとお洒落しろよ!”みたいな趣旨の“Beat Gathering”ていうイベントをやっていらっしゃるんですけど、そこに出るバンドのファッションをわたしたちでコーディネートしてほしいっていう依頼で。古着屋さんとタイアップして、お店にバンドのメンバーを連れて行って服を選ぶみたいな。そのときにわたしは、初めてライヴってものを観ました」
i 「SEBASTIAN Xさんとかとやらせていただいたんですよ。各古着屋さんに協力していただいて」
u 「そそれからだんだん、バンドのライヴを聴きに行くようになって、行くクラブも変わりました」
i 「ナンパがないイベント(笑)」
u 「そうそう(笑)。それで音楽が好きな人たちと繋がっていくうちに、“DJやりなよ!”って言われるようになって。機材触ったことないけど?って思ったんですけど、“Hakkin’!!”ていうイベントを主催しているはなまるさんが教えてくれることになったんですよ。はなまるさんは古着が好きで、ファッションの面でも知り合いだったこともあって。それでDJになったんです」

――ラップよりもDJが先だったんですね。
u 「最初はDJウクダダだったんです。“Hakkin’!!”にDJで出演させられることになったとき、“DJネームが必要だな”って言われたんですけど、わたしわからないから決められなくて……。“DJウクダダとDJウッキュンどっちがいい?”って聞かれて、ウクダダを選びました……」

――自分で決めたんじゃなかったんですね(笑)。
u 「しかもその当時オカダダさんのこと知らなくて。でもウルトラマンにダダ星人がいるのは知ってたんです。その頃ダダ星人とわたしは似てたんですよ。ボブだし、白黒しか着ないし。だからウクダダを選んだんですけど……。i knowは元々DJサークルに入ってたんだよね」
i 「大学生のときですね」
u 「それで2人とも“Hakkin’!!”でDJをやるようになりました」

――“DJウクダダとDJ i know”結成?
i 「それが、いつも別々の月に出ていたんですよね。それぞれほかの現場にも定期的に呼ばれるようになった頃に、“Hakkin’!!”の1周年イベントがあったんです。そのときやっと2人一緒ブッキングされて」
u 「一緒に同じイベントに出たのはそれが初めてだったんだよね」
i 「そうそう。せっかくアニヴァーサリー・イベントだからサプライズしようや、って話になって、DJなのに2人が急に歌い出すっていうのを思いついたんですよ。おもしろくね?みたいな感じで。それでオリジナルの歌を作ることにしたんですけど……」
u 「よく知らないインストのトラックに歌を乗せるっていう」

――最初は“ラップ”というより、“歌”でいく予定だったんですか。
i 「そうです。でもポエマー時代からの性で……ごめんウクダダ、韻は踏むのは止められんわ……みたいな」
u 「そもそも、“歌を作る”っていう概念自体がなかったんだよね。このトラックだったらラップ、みたいな感覚もなくて」
i 「トラックはただのインスト、みたいな(笑)。そのときに作ったのが“はじめてのhakkin’!!バースデー”っていう曲。自己紹介ラップからの“Hakkin’!!”おめでとう!みたいなやつですね。それが当日、大成功で」
u 「みんな喜んでくれたんだよね」
i 「自分たちで思っていたよりも好評で、その翌月に、はなまるさんと一緒に“Hakkin’!!”を企画している人が別にやっている“踊ロック”っていうイベントにも2人で呼ばれちゃって。これは完全にフリだと思って、すぐ踊ロックのラップを作ったんです」
u 「本番でi knowがめっちゃ暴れたんだよね……」
i 「DJのときに、RIZEの“日本刀”を流してブチあがってたんですよ(笑)。でも、それを観た方が“楽曲を提供させてください”って声をかけてくださって。それが今、曲を作ってくださっているMad Yellowさんだったんです」

――なんだか順風満帆な感じですね。
i 「そうなんですよ。だからわたしたちもなんで今取材されてるのかよくわからないし……。リハの順番がどうこうとか言う人間になると思ってなかったんですよ」
u 「今でも照れるもんね、リハ。マイクチェックとか、何言ったらいいのかわからないもんね」
i 「ハァ、ハァ、しか言えない。ワンツワンツーは言えない。恥ずかしくて(笑)」
u 「ワンツワンツー!ハァ、ハァ!ふひゃひゃ(笑)」

――そういうことする存在に、憧れはあったわけですか?
i 「憧れはありましたよ」
u 「わたしはないです!」
i 「うそっ」
u 「ないない」
i 「憧れというか、すごいな、って感じですね。なりたいっていう気持ちはわたしも全くなかったです。完全に受身」
u 「そうだね。人前で歌いたいとか、目立ちたいとかは全然なかったですね」

――売れたい、みたいな上昇志向も全然ないわけですね。
u & i 「ないない!」
i 「それは今もないです。CDだって流通させてないですし……」
u 「面倒を見てくださってる方々に、やる気ないのか!ってよく怒られるんですけど……」

――やっぱり“楽しみたい”という気持ちで続けている部分が大きいのでしょうか。
i 「そうですね。楽しみたいがためにやってるし、みんなも楽しんでくれるから」
u 「楽しいって言ってもらえたら、わたしたちも楽しいし、やった最高だ!みたいな感じです」

――それは理想的ですね。
u & i 「うん」
u 「だからストイックさはないんですよ……」
i 「全然ないです。“ラップやってます!”とか言ってますけど、ゴリゴリでラップやってる人とはたぶん土俵から違うんですよね。沖縄の中部にラップがすごい盛んな地域があって、“高校生ラップ選手権”で準優勝した子とかもいるんです。そういう子たちがわたしたちの曲を“新鮮でおもしろいです”って言ってくれるんですよ。でも申し訳ない気分になる……。アイドルとか言われたりもするんですけど、まじアイドルに謝りたい……。Especiaさんと共演させていただいたときに、RYUKYU IDOLさんていう沖縄のアイドルと、Chuning Candyさんていうモデル事務所に所属してる中学生の子たちも一緒に出たんですけど、すっごいかわいいんですよ」
u 「スタイルもめちゃめちゃ良いしさあ~」
i 「呑みながらライヴするオバさんたちが来ちゃってすいません……ていう(笑)。わたしたちなんてクソみたいな輩でしょ」

MCウクダダとMC i know

――何言ってるんすか(笑)。Especiaも、アイドル視されるけどアイドルって肩書きを名乗ったことは一度もないですよね。
u 「そうですよね」

――お2人と一緒じゃないですか。
u 「全然違いますよ!Especiaはマジ最高だよ」
i 「最高だよ。わたしたちはリハの時点ですでに呑んじゃってる状態だったのに、Especiaさんはリハを観てくれたんですよ。最近覚えた言葉で言うと逆リハだったし(笑)、きっと地方に来たら観光もしたいじゃないですか。しかもわたしたちみたいなローカルの人なんて、たぶん興味ないじゃないですか」
u 「そうそう!Especiaさんは最初にリハが終わって、後は遊んでもいいのに、ずっとリハを観ていたんですよ。しかも全員にこやかに」
i 「その時点でかなり胸打たれたよね。本番のライヴを観たら、もう、勝てない。女の子の良い部分が全部集まってる神。これはヤバい!と思って正面から観られなくなっちゃって。脇から観たんですよ」
u 「次の日のワンマンも観に行ったら、Especiaのファンの方がすごく良くしてくれたんだよね。“きのう良かったよ!”とか」
i 「“CD買いました~!”とか」
u 「Especiaも最高ならファンも最高かよ!みたいな」
i 「さすがかよ!っていう。それで前日に倣ってまた端っこで観てたら、Especiaファンが“もっと前に行きなよ!”って言ってくれて」
u 「みんなが道をあけてくれる感じで……」
i 「結局真ん中で観ちゃったら、Especiaの光をドーンと浴びて涙が止まらなくなっちゃって(笑)。ウクダダは最初、号泣するわたしを見て笑ってたんですよ」
u 「そうそう。ブッ!めっちゃ泣いてる(笑)みたいな」
i 「でもウクダダも最終的に一番前に連れて行かれて、マジ泣きしたんだよね(笑)」
u 「なんだろな……尊いもの、たぶん神様とか見たらみんなきっと泣いちゃうじゃないですか。それですね。一生懸命やってるしさあ……尊くて」
i 「そんな状況だったね、完全に。泣いちゃうよ、あんなの。わたしたちも、やるとなったらがんばるよ」
u 「ライヴもちゃんとやります」
i 「でも東京で“ゲットー酒場”に出たときは、呑み過ぎて潰れちゃったんですよね……。ライヴ中お互いにケーブルを踏んで、マイク何回も落として」
u 「ライヴとしては良かったんじゃないかな、っていう……」

――“ゲットー酒場”では藤井洋平さんや黄倉未来さん、CASIOトルコ温泉さんとかと共演されたんですよね。
u 「CASIO超かわいい!女の子が機械をいっぱいいじるのって堪らないじゃないですか。それで歌ってさあ、フラフープ回したりさあ、あれは敵わないよ……」
i 「イベントが楽しすぎて気付いたら酔っぱらってて……ぐでんぐでんになってて……」
u 「なんかカップルに絡んでたよね……」
i 「付き合ってんの?付き合ってんの?ってずっと聞いてたっぽいです……」
u 「呼んでくれた主催の人たちもめっちゃ良い人で安心感あるし、嬉しかった」

――“りんご音楽祭”のときにはもっといろんなの方と共演されましたよね。いかがでしたか?楽しめました?
i 「いろんな人観ましたね」
u 「うん、楽しかった。沖縄の美栄橋に、dj sleeperさんがやってる“ON”ていうお店があるんですけど、i knowがそこで働いていたことがあるんですよ。だから、わたしたちが会ったことある人がみんな“りんご音楽祭”に出ていて。久しぶり~!みたいな」
i 「贅沢だよね、そういうの」

――“りんご音楽祭”はdj sleeperさんとの繋がりで出演することになったということ?
i 「そう思われるかもしれないですけど、オーディションを受けたんです。それで選出されて」
u 「そうなんですよ。“RINGOOO A GO-GO”枠で行きました」

――やっぱり真面目にそういうこともやってるんじゃないですか。
u & i 「あはは(笑)」
i 「あっ、そういえば、“りんご音楽祭”の前に“下北沢インディーファンクラブ”にも出たんですよ」
u 「出たっていうか……。嫁入りランドさんのお誘いで少し歌わせていただきました。嫁入りランドさんは2回ほど沖縄にいらっしゃったことがあって、そのときに仲良くなったんですよ。その後わたしたちの東京初ライヴをめいちゅんさんが観に来てくださって、“下北沢インディーファンクラブに嫁入りランドが出るから、ダンサー要員で出ない?”って」
i 「謎オファーだったんだよね(笑)。でもおもしろそうだから、出ますってお返事して」
u 「当日になってめいちゅんさんが“ライヴで聴いた曲が良かったから、1曲歌ってほしい”って言ってくださったんですよ。フロア満員の中で、最初ダンスして……」
i 「“沖縄から来た友達を紹介します”って歌わせてくれて……」
u 「まじアメリカンドリームだったよね」
i 「これがドリーム。夢、見させていただきました!みたいな」

――追い風吹いてますね……。ライヴのときは基本、2人だけでパフォーマンスするんですか?
u & i 「そうですね」

――トラックがバラエティ豊かだから、ライヴでも色々おもしろいこと考えられそうですよね。
i 「そうなんですよ~!」
u 「周りに天才が多くて」

――トラックメイカーの皆さんには、お2人のイメージを伝えて作っていただいてる感じなんですか?
i 「“ね・む・た・い”を作ってくださったCRZKNYさんには、イメージをお伝えしました。でもさ、たぶん信じられない依頼の仕方だったよね。dj sleeperさんの“ON”で知り合って仲良くなって、お願いしたんですけど……」
u 「身の程知らずというか……。あまりそのへんよくわかってないんですよ」
i 「誰がどうすごいとか、全くわかってない(笑)」
u 「めっちゃいい人で最高!みたいな」
i 「音楽もかっこいいよなー!みたいな」
u 「CRZKNYさんに提供してもらえたら最高じゃない!?って妄想が膨らんで」
i 「もしよかったら……ってご連絡したら、“どういうイメージの曲が欲しい?”って言ってくださって。明るくてポップなやつです!って答えたんですよ(笑)。ジュークとか何も知らなくて……CRZKNYさん明るくてポップな曲を作ってないでしょ……」
u 「かっこいいっていうことしかわからなかった(笑)」
i 「それから暫く返事がなくて、ああ……と思っていたら、“ごめん、明るくてポップな曲がなかったら、作ったよ”って送ってくださって」
u 「わざわざ作ってくださったんですよ!」

――わー、めっちゃ良い人ですね!
u 「そうなんですよ!めっちゃ良い人!最高だー!」
i 「うそでしょ~(涙)!って思いました」

――“GOHAN”はnagomu tamaki(aka akinyan electro)さんに作っていただいたんですよね。
u 「nagomu tamakiさんは元々、沖縄の方なんですよ。面識はなかったんですけど、わたしたちが“7月のバッドアイディア”とか“サイキックガール”を出したときに周りの皆さんがリツイートしてくださって、akinyanさんの耳にも届いたんです。それがきっかけで“Lowfer Recordsから出す曲で歌ってくれない?”って声をかけてくださったんですよ。その流れで“GOHAN”ができました。akinyanさんはMarginalRec.ていうレーベルに所属しているんですけど、そこの社長さんが“GOHAN”を気に入ってくださって、同じMarginal所属のFireworks112さんからも曲を提供していただけることになったんです」
i 「Fireworks112さんはオノマトペ大臣さんにトラックを提供したこともあるんですよ~!」
u 「それでできたのが“歯医者さん”です。そりゃかっこいいわけだわ、って感じですよね」

――Rie Mellowjunkさんはどんな方なんですか?
u 「Rieさんは、“Bass Swagga”っていうベースミュージックのイベントのクルーですね。Rieさんが作ってくださった“o.w.n”はめちゃめちゃかっこいいから、みんなに絶対聴いてもらいたいです。ゴリゴリでやっている沖縄のDJ / トラックメイカーの中で、女の人は本当に珍しいんですよ」
i 「ね、すごいよね」

――名曲“7月のバッドアイディア”を生んだ功労者、Mad Yellowさんについても教えてください。
u 「一番トラックを提供してくださってるのがMadさん」
i 「Madさん、東京のイベントだと、“いきいきナードコア感謝祭 ’15”に出てるよね」
u 「そうそう。ナードコアの方です。最近は仕事が忙しいみたいで、あまり自分のライヴはやっていらっしゃらないんですけど、わたしたちの曲は定期的に作ってくださっていて……」

――じゃあ今は、お2人のためだけにトラックを作ることが多い状態ということですよね。
u 「ありがたいことにそうなんですよ……。Madさんはわたしたちの音楽的なキャラクター付けをしてくれたような感じがあるんですよね。“7月のバッドアイディア”は、実は県民が聴いたら“わーっ(笑)!”ってなる作りなんですよ。“サイキックガール”も、琉球音階を使っていて、音楽は沖縄っぽい感じだし」

――素晴らしい才能に囲まれて、幸せ者ですね。
i 「ほんとそれです」
u 「しかもみんなめっちゃ良い人なんですよ~」
i 「みんなに持ち上げられて、えっ、そうかな(照)?っていう状態」
u 「嬉しいよね!」

――でも、お2人だって努力しているからみんな楽しんでくれるわけでしょう?
i 「それは……どうかな……。努力はしてない気がする……」
u 「努力ないです……」

――続けるだけだって大変でしょう?
i 「なんだろね……」
u 「ノリでやっちゃった感じ……」
i 「名前だってめっちゃフザけてるもんね」
u 「元々はDJウクダダとDJ i knowだったから、じゃあMC?って(笑)。ダサいんですよ。だから“ラップやってるんでしょ?グループ名教えてよ”って聞かれると、声が小さくなる(笑)。トラックはかっこいいけど、歌詞はわたしたちの日常でしかないし……。曲作るのも3、4時間で1曲できちゃうんですよ。トラック聴いて、拍数えて、じゃあ何歌う?みたいな。イメージを決めてから、ファミレスのドリンクバーとかでやっちゃうレベルなんで。反省しかない」

――ああ……。トラックはめちゃめちゃハイクオリティなのに、ヴォーカルだけ何かの内臓マイクとか、めっちゃ小さいマイクで録音してるみたいな音ですよね。それも関係ある?
i 「あはは(笑)!」
u 「わかります?」
i 「2人とも、最初はiPhoneのボイスメモで録ってたんですよ」
u 「アルバムでは違うんですけど、音量がよくわからなかった(笑)」
i 「トラックとのギャップがあるよね、ってわたしたちも思ってて。自覚はある(笑)」

――でも、その雰囲気がすごく良いと思いました。スピード感というか、その時、その場所の気持ちがそのまま録音されている感じで。
i 「それはそうかもしれないです。録音したボイスメモがたくさんあるんですけど、最初の頃はそれを働いてた“ON”でiPhoneジャックインして流して、音楽界隈の人にどうすか?どうすか(ドヤ)?って聞いて回ってたんですよ。それをLUVRAWさんとかにやってたっていう……。恥ずかしい……」
u 「みんなにこやかに聴いてくれていい人(涙)。LEF!!! CREW!!!とかもそう」
i 「LEF!!! CREW!!!は“いいね”って言ってくださって、“はじめてのhakkin’!!バースデー”をLEF!!! CREW!!!のライヴでLEF!!!仕様にしてくださったり」
u 「めっちゃごっつい感じに仕上げてくれて」
i 「大好きだ~」
u 「なんか沖縄っていう場所が恵まれてるのかもしれないね」
i 「そうだね。ほかの地方よりもいろんな人が来てくれるだろうし、アーティストとお客さんの垣根が全然ないっていうか」
u 「わたしたちが勝手に垣根越えてるだけかもしれないけどね(笑)」
i 「そうだね。本当は垣根はあったのかも(笑)」
u 「でもみんな気さくだし。お土地柄も絶対あると思います」

――沖縄、好きですか。
i 「好きだよね」
u 「うん、好き~」

――お2人がやっていることは全体的にすごく楽しい感じだけど、曲を聴いてると、ある種の暗さみたいなところも感じるんですよ。リリックのほとんどが願望を歌うものだったりするし。閉塞感から逃れることを望んでいるような。
i 「そういうところに触れちゃいますか……そういうのはありますよ。やっぱり」
u 「あるある」
i 「人は近いが出会いは遠い、とか。例えば、いいな、って思った男性がいても、これは誰々ちゃんの元彼だ、みたいなことが絶対あるんですよ。だから、気さくにチャレンジできないし」
u 「絶対に誰かが見てるっていうか。誰かと絶対に繋がってしまうというのは、善し悪しあると思う」
i 「良くて悪い。“どこの出身?”自分どこどこだよ、“誰々知ってる?”知ってるー!でもう繋がるから」

――所謂ムラ社会みたいな。
i 「そうですそうです」
u 「そういう感情は、“F.O.R”をやっていても感じていて。沖縄って、ファッションがすごく遠いんですよ。例えば好きな雑誌に載っているブランドって、取り扱ってるお店がほとんどないんです。欲しい服は通販だったり、直接東京に行って買うしかなくて。すぐ手軽に買うっていうことができないんですよ。OPAっていうファッションビルも潰れちゃってドンキホーテになったし、ファッションに興味を持つきっかけすらなくなっていく。古着も、沖縄の古着屋さんはすごく素敵だけど、数がどんどん減っていたり。だからファッション盛り上げたくて、おもしろい人を探すにしても、なかなかいないんですよ。音楽でも、同じことが言えると思います」
i 「掴み取るまでのプロセスに力が必要なんですよ。だから、ファッションが好きだったり、音楽が好きだったりする人は、やっぱり上京しがちで。イケてる人はどんどんいなくなる。でもやっぱり、沖縄にいる人にしかできないことがあるから。ないなりに工夫して、流行がないから作ってる感じです。ガラパゴス化だな」
u 「そうそう」
i 「ファッションも音楽も、それぞれの土地に何かあるっていう状況が素敵なんじゃないかな、って思って」
u 「……っていう感じですかね(笑)。この話は終わり終わり(照)!」
i 「(笑)。でも閉塞感は本当に感じてますね。誰かひとりと喧嘩したら、全部がぐちゃぐちゃになっちゃったりとか。そういうのが顕著に出易い気がします。土地柄として。いろんな県民はいるっちゃいるんですけど、音楽の現場に来る人って限られてるし」
u 「そう~!顔知ってる人しかいない」

――そっかあ……。でもそこは東京も同じかもしれないです。
i 「ああ……。そうなんですかねえ」
u 「行ったら絶対この人いる、みたいなのは、そうかもしれないですね」
i 「でも逆に、このイベントに行ったらみんなに会える、っていうのはあって」
u 「みんな友達みたいな」
i 「身内感はすごくありますね」

――そのあたりは難しいですよね。どの尺度で計測しても。
i 「ですね」

MCウクダダとMC i know

――イケてる人たち上京しがちっておっしゃってましたけど、お2人だってイケてますよね。大都市に上京するという行動について、どう考えていらっしゃるんですか?憧れがあったりするのでしょうか。
u 「わたしはちょっと憧れはするけど……」
i 「わたしは全然ないです。東京、大阪に住みたいとか思わない。LCCのおかげもあって沖縄からすぐ行けるし、住むべき場所じゃないっていう感覚があって。旅行が一番いい」
u 「そうだね。本当に近くなったよね。1万円くらいで行けたりするので。便利な世の中になりましたよ!」

――例えばEspeciaとかは、大都市に対する幻想を音楽として具現化しているわけじゃないですか。
i 「そうですよね。アーバン幻想ですよね」

――それを真に受ける人はいないにしても、幻想は幻想として客観視しているということですね。
i 「そうですね。沖縄に対しても同じ現象があるんですよ。わたしたちには日常としての沖縄があって日々暮らしてるけど、旅行で沖縄に来る人は、海に行こうとか、パイナップルパークに行きたいとか、リゾートとしての沖縄を見てる。わたしたちはそういうところにわざわざ行かないですよ。そういうギャップがあって」
u 「ダイビングなんてしたことないし」
i 「そうそう。そもそも海行かないし。ビーチパーティとかマジ行きたくないし」

――ビーチパーティって、やっぱあるんですね。
i 「ありますあります」
u 「ビーパ」

――ビーパって言うんですか。
i 「そう。大学生はめっちゃビーパしますね。“とりあえずビーパっしょ”みたいな。ビーチでBBQするのビーパって言うんですよ」

――それってお2人の反応から察するに、チャラい感じなんですか。
i 「まあ~、浮かれた感じですよね」
u 「羨ましくもある。でもついていけない」
i 「うん。しかも暑いし、日焼けするし。クーラー効いてるところで食おうや、っていう(笑)。なぜわざわざ?」
u 「沖縄にもちゃんと、インドアはいるんですよ」
i 「そうだよね。みんながみんな酒強いわけでもないしね」

――i knowさんは強いですよね(笑)。
i 「(笑)。まあ、そういう意味で、郊外感、アーバン感と同じことは沖縄にも存在してるな、ってめっちゃ思ってて」

――本当そうですね。
i 「深夜のドライブとかがさあ、一番ローカル感あるよね」
u 「うん」
i 「車社会で、みんな車持ってるから」
u 「電車がないから終電もないし」

――そっか!電車ないんですよね。それは文化的な違いが大きい気がしますね。
u 「そうなんですよ!大学生だと、飲み会やるとなったら、みんなバイトしてるから、居酒屋24:00集合とかになるんですよ。でも間に合う人なんていないんです。ウチナータイムだから」
i 「だから結局1:00とかにスタートして」
u 「朝まで飲むみたいな。車で寝て」
i 「(運転)代行で帰るとか。代行の文化が根強いんですよ」

――“そこじゃないどこか”は、イメージが先行しちゃうっていうことですよね。
i 「そうですよ。イメージでしかない」

MCウクダダとMC i know

――今県内では、どんなアクションをされているのでしょうか。イベントを主催したりということもあるんですか?
u 「わたしは、東京のE.S.Vっていうラップユニットと友達で、彼らが沖縄に来る度に“Endless Summer Vacation”ていうイベントを主催してます」

――出演者としてだけでなく、主催者としてもがんばっていらっしゃったんですね。
u 「でもE.S.Vが来るときだけなので、超不定期なんですけどね。E.S.Vありきのイベント(笑)」

――定期的にとなると?
i 「定期的にやってるのはないよね」
u 「うん……。あとは“Morning On”ていうイベントを“ON”でやっています。朝にDJイベントができたら気持ちいいな、っていう発想で、日曜日の朝7:00から11:00まで、DJと弾き語りとかできる人を呼んで。パン屋さんも出張で来てもらって、朝コーヒー飲みながらパン食べて、DJの音楽聴いて、ライヴ聴いて、みたいな感じのイベントも不定期でやってます」
i 「前回はAlfred Beach Sandalさんが出てて」
u 「ビーサンさん最高!ビーサンさんはよく沖縄に来てくれて、それでまあ、お友達にって言ったらアレですけど(笑)、わたしは仲良しだと思ってる!ENERGISH GOLFさんも来ていた!」

――いい感じの皆さんばかり集まってきますね!
u 「たぶん、周りのみんなが良い人たちだから(笑)」
i 「全然わたしたちの力じゃない、ほんとに」

――そんなことないですよ。ちゃんとしてるし。
i 「嫁入りさんたちにも“ちゃんとしてる”って言われたよね」
u 「言われたね(笑)」
i 「全然ですけど……」

――今後もいろんなことが繋がっていきそうな予感しまくりますね。
u 「そうだといいですね。個人的には、自分たちが楽しまなきゃ意味がないと思ってるので、無理してやっても仕方がない。こんな感じのまま、いろんなところに行けたらいいな、って思う」
i 「北海道行きたい!」
u 「大阪も行きたい!」
i 「たこ焼き!」
u 「大阪は、かわいいCASIOがいるし、チミドロの(スズキ)ナオさんもいるし、お世話になってる“シカク”っていうお店もあるし」
i 「行きたいとこめっちゃいっぱいある!日本海の魚が食べたい!」
u 「金沢も行ってみたい。今までいろんなご縁があって今回も東京にも来られたので、これからもまたいろんなご縁があったらいいな、って思います」

MCウクダダとMC i know Twitter | https://twitter.com/ukudadaiknow