俺たちは違う
取材・文 | 久保田千史 | 2014年11月
通訳 | 山崎智之
協力 | XTakashiX (OTUS)
――今着ていらっしゃる今回のツアーマーチ、EARTH CRISISモチーフでヤバいですね。
「これ本当にヤバくない?EARTH CRISISが1996年にやったジャパン・ツアーのデザインなんだって!今まで作ってもらったTシャツで一番嬉しいかも」
――Balderoseさんはゲームがお好きなんですか?フォックスハウンドのTシャツを着ていらっしゃいましたけど。
「そうそう。俺はゲームのことはよくわからないんだけど、彼に『METAL GEAR』の話をしたらすごく喜ぶと思うよ(笑)」
――そうなんですね(笑)。彼と知り合ったのはいつ頃?
「EricとJoeとは高校で出会ったから、14歳の時だね」
――Meyersさんは?
「Rebaは中学の時からの友達だから、11か12歳の頃」
――文字通り“キッズ”だった4人は、どんなきっかけでCODE ORANGE KIDSになったのでしょう。
「高校に入ってから、俺がバンドを始めようと思ってRebaとEricを誘ったんだ。Joeも親友だから、最初からバンドにいてほしかったんだけど、RebaとEricがすごく嫌がってさ(笑)」
――どうして(笑)?
「Joeは頭おかしいから。彼の写真を見たらなんとなくわかるでしょ(笑)?“イカれた人とバンドはやれない”って2人に言われたんだけど、なんとか説得して加入させたんだ(笑)。今回のアルバムではJoeが重要な役割を果たしているから、入れて本当に良かったよ。みんなもそう思ってるし」
――バンドを始めるにあたって、何か目標としているようなスタイルはあったのでしょうか。
「とりあえずパンクが好きだからパンクっぽいことをやっていたんだけど、だんだんハードコアとかメタルも入ったエクストリームな方向に進んでいった感じかな。でも自分たちが何をやりたいのか、最初は全然わからなかったんだ。だから1stデモはジュークボックスみたいな内容だったよ。速い曲があったり、スカのパートがあったり、へヴィだったり。そこから徐々に的を絞ってきたんだけど、当時やっていたようなごった煮の感覚は今の音楽性にもすごく役立ってる気がする」
――『I Am King』から“KIDS”を外してCODE ORANGEと名乗るようになったのはどうして?
「特にに意味はないよ。また元に戻ることだってあるかもしれないし(笑)。ただ、違うことがやりたかったというのは確かだよ。今回のアルバムでは音楽的にも、美意識の面でも、いろいろと変化したいことがあったから、名前を変えるというのもその一環だね。ここから先について来られるならついて来てほしいし、ついて来たくなければそれでいいよ、っていう感じで」
――区切りをつけたかったわけですね。
「そう。そういうこと」
――先ほどEARTH CRISISの名前が出ましたが、CODE ORANGEの音楽からは1990年代のハードコアやメタルの影響を強く感じます。でも、リアルタイムで聴いていた世代ではないですよね?
「そうだね。俺たちの住んでいるピッツバーグっていうエリアは、90年代にハードコアとかヘヴィ・ミュージックがすごく盛り上がった地域なんだよ。その当時を体感した友達にいろいろ教えてもらったんだ。EARTH CRISISもそうだし、HATEBREEDとかDISEMBODIED、きのう吉祥寺でライヴを観たUNBROKENもね」
――個人的にはピッツバーグだと、ABNEGATIONが浮かびます。
「うおっ、ABNEGATIONかっこいいよね!大好き。同じペンシルベニアだと、BROTHER’S KEEPERなんかも良いよね」
――現行の同郷バンドでは、PATH TO MISERYのメンバーがアルバムに参加していますよね。
「えっ!PATH TO MISERY知ってるの?本当に!? それはめっちゃ嬉しい。バンドを始めた頃に色んなCDを聴かせてくれたのが彼らだし、15歳で初めてツアーに出た時にバンを運転してくれたのがPATH TO MISERYのヴォーカリストだったんだ。すごく影響を受けた大事なバンドだよ。今回のアルバムに参加してくれているのは、Scott(Vogel / TERROR)以外はみんな地元の友達なんだ。単純に“クールな人”を集めるよりも、あまり知られていなくても実力がある地元と人と一緒にやりたくて」
――良いですね。Vogelさんは、“TERRORのシンガー”というよりも“BURIED ALIVEのシンガー”として参加しているように感じたのですが、気のせいでしょうか(笑)。
「いやいや~、そうなんだよね(笑)。あえてBURIED ALIVE風に歌ってもらったんだ」
――彼にそうお願いして、ということ!?
「まさか!Scottはすごく良い友達だけど、そんなこと頼んで断られたら悲しいでしょ(笑)。Scottが自分から“BURIED ALIVE風に歌うぜ”って言ってくれたんだ。たしかにBURIED ALIVEをイメージしてリフを書いた曲ではあったから、彼が気を遣ってくれたんだと思う」
――“〇〇風に”という曲の書き方はよくするのでしょうか。
「めったにやらない。色んなバンドからの影響はかなり受けてるけど、最終的にはイメージしていたものとは違うものに仕上がることが多いよ。BURIED ALIVE風のリフも、結局はそう聴こえないと思うし。これまで受けてきた影響を、自分たちの鍋に入れて煮込む感じなのかな」
――CODE ORANGEはドローニッシュなパートやエレクトロニクス使いなど、エクスペリメンタルな側面を持っているのも特徴的ですよね。どういったところから影響を受けているのですか?
「ALICE IN CHAINSとかMY BLOODY VALENTINE、エレクトロニックなものだったらNINE INCH NAILS、GODFLESHみたいなインダストリアルとか。いろいろ。でも、それもやっぱりそのまま持ってくるようなことはしない。例えばヒップホップだったら、ビートのクールな部分のレイヤーだけを持ってきて俺たちのハードコアに重ねる感じだよ」
――エクスペリメンタルな部分はあっても、軸足はピット・ミュージックということ?
「そうだね。ハードでヘヴィな部分と、ストレンジでエクスペリメンタルな部分を併せ持ったバンドを目指しているんだ。ハードコアのシンプルなところと、もっと複雑で実験的な音楽をミックスした感じの。7分間のエクスペリメンタルなパートと2分間の殺人ブレイクダウンとかね。どんな音楽をやっていても、独自の解釈がないとダメだと思うんだ。実験的なだけのバンドとか、ハードなだけのバンドなら、今いくらでもいるでしょ?俺たちの個性の出し方は、その両方をクロスオーヴァーさせるっていうことなんだ。ただ、エクスペリメンタル志向になるとハードコアから距離を置いてしまったり、もっと悪いと、ハードコアを下に見るようになったりするバンドもいるけど、俺たちは違う。CODE ORANGEは絶対にそうはならないよ。モッシュピットの気持ちを失いたくはない」
――初期のCONVERGEにも、そういう感覚がありましたよね。
「そうだよね。ハードコアらしさが強かった初期のCONVERGEは最高。念のため言っておくけど、今のCONVERGEも好きだし、彼らのことを悪く言っているわけじゃないからね(笑)」
――アルバムでもその感覚は一貫していると思います。でも日本盤にボーナス・トラックとして収録されているネオフォーキーな楽曲も素敵でしたよ。
「ありがとう。あれを本編に入れなかったのは、やっぱり全体の方向性とは違っていたからなんだ。ああいう音楽性もCODE ORANGEの一部であることは間違いないんだけどね。SLOWDIVEとかCHAPTERHOUSE、RIDEなんかも大好きなんだけどね。そのあたりは音楽というよりも美意識として表現することにしているんだ。グレースケールの写真を使ったアートワークとかね。まあ初期Victory Records風の写真も好きなんだけどさ、ヴィジュアル面はそういう美学を表現する場として確保しておきたいんだ」
――例えば音で言えば最近のTITLE FIGHTとか、ヴィジュアルも含めるとNOTHINGなんかは完全にその美学の側になっていますよね。CODE ORANGEもそういう風に振り切れてみたいと思うことはないのでしょうか。
「ないない。全然ないよ。TITLE FIGHTは最高、NOTHINGも友達だし、大好きだけど、俺たちがそうなろうとは思わない。CODE ORANGEは常にヘヴィで、ハードヒッティングな音楽でありたいんだ」
――なるほど。『I Am King』のジャケットはマイブラ・インスパイア?
「あ~、それはあまり考えてなかったかも。CODE ORANGEをヴィジュアルで表現するということを考えた時に、浮かんだのが“肌で語る”っていうことだったんだ(笑)。俺たちはフリークで、はみ出し者なんだ、っていうことをエクストリームに表しているよ。これはJoeの額」
――本当に切っているの!?
「本当には切ってないよ、大丈夫(笑)」
――今までお話を伺った限りでは、同世代で活躍している中で音楽的にシンパシーを感じられるバンドが存在しないような気がします。
「そうだね、いないのかも。NAILSやTWITCHING TONGUES、HARMS WAY、もちろんTITLE FIGHTも、音楽は大好きだし、アティテュードの面でもすごく共感するけど、音楽的には同じことをやっているとは思わないし」
――FULL OF HELLについてはいかがですか?かつてスプリットをリリースしていましたが、今でも交流はあるのでしょうか。
「もちろん!すごく仲良くしてるよ。スプリットを作った頃と比べると、音楽的にはお互い全然違う方向に歩いていくことになったけどね。彼らのやっていることもやっぱり大好き。俺はDeathwish inc.傘下でHarm Reductionっていうレーベルをやっていて、UNIT 731みたいな地元のバンドをリリースしているんだけど、彼らに対しても同じ気持ちかな」
――地元のバンドで言うと、STEEL NATIONとかCDCは少し上の世代になるんですか?
「そうだね。STEEL NATIONは子供の頃からライヴを観ていて、すごく好きだったんだよ。彼らの新しいアルバムを自分のレーベルから出せることになって嬉しいよ。CDCも歳上だけど、よく知ってるし、みんな良い人だよ」
――年齢層、エリア問わずたくさん友達がいらっしゃるんですね。
「うん。それがハードコアの良さなんじゃないかな。ハードコアをプレイしていると、年齢も場所も全然気にならない。壁を壊してくれる」
――日本というエリアではいかがですか?知っているバンドはいる?
「こっちでも、NUMBとSANDは誰でも知ってるよ!“誰でも”は言い過ぎか(笑)。ヘヴィなハードコアが好きな人はみんな、っていう意味。DOGGY HOOD$とかCREEPOUTも好きだし、友達のトメ(aka YOYO-T / BOWL HEAD inc. / BLASPHEMY BOYZ)がやっているSOUL VICEもかっこいいよ。良いバンドがたくさんいて羨ましい。envyだっているでしょ?俺はあまり詳しくなくてGAUZEみたいなレジェントしか知らないけど、良いパンクバンドもたくさんいるんだよね。日本はそういう音楽の宝庫だと思うよ。あとはほら、今STAND UNITEDにいる人がタカシ(OTUS)とやっていた東京のストレートエッジ・バンド……」
――INSIDEですか?
「そうそう!INSIDE!すごくかっこいいよね」
――いろいろ詳しいですね。
「そんなことないよ(笑)。自分の国以外で好きなバンドを探すと、一番多く出てくるのは日本なんだ」
――今のハードコアは、全く違うことをやっているバンド同士が同じ気持ちで結びついたりしていることが多くて、おもしろいですね。
「本当にそうなんだよね。FULL OF HELLなんて象徴的だと思う。すごいバンドがほかにもたくさんいるし」
――CODE ORANGEも象徴的なバンドだと思いますよ。
「そう言ってもらえるとすごく嬉しい。ありがとう!」