FKA twigs

FKA twigs / photo ©David Burton

“嘘のない音”を作らなければ

 可憐かつフォギーでありながら圧倒的な存在感の歌唱とダンス、奇形的なトラックメイキングの特異性で脚光を浴びたFKA twigs。ARCA、CLAMS CASINO、INC.(NO WORLD)、Sampha、Devonte Hynes(BLOOD ORANGE)やJessie Ware、Lana Del Reyなども手掛けるEmile Haynieら気鋭クリエイターたちのサポートを受け、身体改造のマイノリティ・イメージを伴うJesse Kandaのアートワークを纏った『LP1』で一躍時の人となった俊才が1月に待望の初来日。謎めいた後味を残すアートフォームについて、お話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2015年1月
通訳 (thanks!) | 染谷和美
main photo | ©David Burton

 「(日本の雑誌を手に取って)日本には、たくさん女の子がいるグループが本当に多いですね……。イギリスでは多くても4人。5人になったらすごく多い感じ。こんなにいたら、名前を覚えられなくないですか?」

――ファンは覚えられるものなんです。それに、特定のメンバーを応援する“推し”というカルチャーもあるので問題ありません。
 「“おし” ……。じゃあ……(アンジュルムの頁を開いて)この中なら、どの子が推し?わたしは(竹内朱莉を指差して)この子!髪型がかわいい。ほら、あなたはどの子(笑)?」

――えっ……皆さん素敵だと思います。
 「なるほどね。模範解答。あなたは良い人ですね(笑)」

――(泣)。さて、今日は『LP1』のパッケージを全ヴァージョン持ってきました。
 「(デラックス・エディションのヴァイナルを手にとって)実はわたし、これ持っていないんです。もらってもいいですか(笑)?」

FKA twigs 'LP1', 2014 Young Turks
FKA twigs ‘LP1’, 2014 Young Turks

――(困)。
 「冗談です(笑)。自分に関する物を集めるのが下手なんですよ。レコードにしろ、掲載された雑誌にしろ。よくお母さんに怒られます。“買いに行かないといけないから、雑誌に載ったらちゃんと教えてくれなきゃ”って(笑)。でもなかなか追いつかないんですよ。ツアーもあるし」

――そうですね、お忙しそうですから。お母さん優しいですね。ヴァイナルはシングル・スリーヴのものと、ゲイトフォールドのデラックス・エディションとありますよね。2種作ることにした意図は?
 「アートワークを手がけてくださったJesse Kandaさんへのリスペクトですね。アルバムのカヴァーというよりも、ひとつのアートだと思うので、“作品”として皆さんに紹介したかったんです。デラックス・エディションには大きくプリントされたカードが入っていて、ひとつひとつ観られるようになっています。額に入れて飾っても良いでしょ。カヴァーに自分の名前やタイトルを入れなかったのも、そういう理由からです」

――Kandaさんのアートとあなたの音楽は、密接な関係にあると考えて良いでしょうか。
 「もちろん。彼とたくさん話をしてから作っていただいたので」

――どんなことをお話されたのでしょう。
 「アルバム制作中の苦労話。音楽は、様々な人と関わって各々のエゴに対処しながら作るものだということを実感したんですよ。これはたしかにわたしの作品ですけど、その中でアートが占めているのは70%くらい。残り30%は人間関係。きちんとやろうとすればするほど、その30%で疲れてしまって……。カヴァー・アートを作っていただくに際しては、赤い色を使うこと、美しくなくても良いからわたしの顔の写真を使うこと以外に具体的なリクエストは出しませんでした。写真はJesseさんの自宅で撮影したものですが、こういう風に仕上がって。顔がひどく歪んでいるのは、わたしがアルバム制作中に受けた心の傷を彼が表現してくれているからだと思います。ビンタされたような心境だったから……」

――その感覚は、音楽にも現れていますね。
 「そうですね、感情を音に反映させたいという気持ちがすごく強いんです。響きとして良いものではなくても、伝えたかった気持ちにフィットする音であれば使います。でも周囲からは“フックが欲しい”とか、“こうすれば人気が出る”とか、わかり易さを要求されることが多くて。人気って何?チャートインすること?わたしはそういう意味での人気ではなく、“誰かが本当に理解してくれる” という意味での喜ばれ方のほうが嬉しい。そのためには、“嘘のない音”を作らなければならないんです。声や歌詞以上に、音で伝えられるのならそうしたい。だから、音作りは緻密に行います。音だけでは伝えきれない部分を歌詞で補うような作り方ですね」

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