goat / 日野浩志郎

goat

少ない選択肢からアイディアを絞って

 2013年リリースの1stアルバム『New Games』で一躍注目を浴びた大阪のカルテット・goatが、2ndアルバム『Rhythm & Sound』をリリース。ギター、ドラム、ベース、サックスというほぼベーシックな編成ながら12音階から逸脱し、トータル・セリエリズム以降の付加要素を最大限に活かしたリズム志向かつメカニカルな楽曲と、その具現化を可能にする卓越した演奏能力。コンピュータでの作曲と演奏能力の関係はブライアン・ファーニホウなどを思わせます。フィジカルならではの疲労、揺らぎが生むグルーヴ、ミニマルな没入と緊張は、シンプルながら圧倒的な吸引力。そのスタイルが2ndアルバムではさらに強化され、マスターピースと言うべき次元に到達しています。作品について、bonanzasでもコンポーザーを務め、ソロ名義“YPY”やカセットテープ・レーベル「birdFriend」のオーナーとしても活躍する中心人物・日野浩志郎氏にお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2015年2月
main photo | ©Yusuke Nishimitsu 西光祐輔

――『New Games』をリリースしてからの反響、大きかったんじゃないですか?
 「反響はありましたね。そんなに広がったりしない音楽かな、と思っていたので、すごくびっくりしたというか。HEADZから出したというのも大きいとは思いますけど。やっぱり、日本で出すことになったらHEADZが一番合ってるかな、と思っていたので」

――それは以前から思っていたんですか?
 「思ってましたね。でもHEADZからのリリースが決まったのは、初めてライヴをやった直後くらいだったんですよ。iPhone4台くらい使って、それぞれのパートを撮影するっていうミュージック・ビデオみたいなものを作って、“よかったら観てください”くらいの感じで言ったら“じゃあうちから出しましょう”みたいな話にすぐなって(笑)。その時点ではまだ2曲しか無かったんですけど」

――じゃあ1stはけっこう慌しかったんですね。
 「慌しかったですね。リリースが決まったところから“じゃあ、がんばります!”みたいな感じですぐ作って。本当に、“がんばって作った”という感じでした(笑)」

――それに比べたら今回はじっくり作れました?
 「そんなこともなくて(笑)。リリース・パーティのことを先に決めて、それに向けてちょっと作っていきますか、と思っていたんですけど、気を許してソロをやったり、ほかのことをやっちゃったりして。ぎりぎりになって一気に曲を作る感じでした。年末年始が本当、鬼のように忙しかったです。三が日は30時間くらいデモ作りだったし……」

――そもそも、先にリリース・パーティの日取りを決めるというのはどういった意図から?
 「先に決めておいたほうが動く、っていう性格だから(笑)」

――制約を設けて、というか。
 「そうですね」

――それって、goatの音楽性にも通じる部分があるような気がしますね(笑)。
 「たしかに(笑)。ルールはありますからね。でも本当は、メンバーにもすごく言われるけど、もうちょっとゆっくり録りたいんですよ(笑)。最後のレコーディングが1月の中旬くらいだったんですけど、元旦に最後の曲を作り始めた感じで。練習する日が10日も残ってない、みたいな」

――goatは練習無いとかなり厳しそうですよね。
 「だから大変でした。特にドラムが難しいから、ワー!ってなってたけど(笑)。本当ごめん!頼むからやってくれ!とか言いながら。ギターはけっこう簡単に弾けるように作ったけど(笑)。ほかのメンバーに皺寄せが行ってるっていう。そこから1日5、6時間くらい毎日練習して臨みました。大阪のCONPASS(心斎橋)でレコーディングしたんですけど、スケジュールぎりぎりだったから、オールナイトだったりでみんなぼろぼろになって」

――かわいそう……(笑)。練習やレコーディングがキツそうなのは音楽からもなんとなく想像出来るのですが、作曲はどのように進めていくのでしょう。
 「全楽器のデモを僕がパソコンで作りますね」

――それをメンバーにはどうやって伝えてゆくのでしょう。譜面で?
 「そうです。譜面……と言いうとちょっと大それてますね。僕が打ち込んだソフトのスクリーンショット撮って(笑)。順番とかループの回数をまとめて送る感じです」

――作曲の時点でかなりメカニカルなんですね。
 「そうですね。機械になりたい(笑)」

――機械になりたい、ですか。
 「そうそう(笑)。そう思いながらやってます。だから、本当は別に僕がギターを弾かなくても良いんですよ。もっと上手い他の誰かが、僕の代わりにやってくれたら全然オッケー」

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photo ©Yusuke Nishimitsu | 西光祐輔

――それを現在は、“他の誰か”にやらせたりマシーンに任せずに、ご自身と仲間でやられているのにはどんな意味合いが?
 「なんだろう……最初に設けたルールというか、“そう決めたから、そうです” という感じなのかな……。僕ソロではテクノとか作っていて、マシーンを使うのはけっこう自分でやってるし、やっぱり人間が弾くグルーヴのおもしろさがgoatには必要だから。機械は絶対使わない。あくまで完全にフィジカルで、今のメンバーで、ギター、ベース、サックス、ドラムを絶対に使って、かつ使う範囲をかなり限定して、作るという」

――ではその、“今のメンバー”であるべき理由は?
 「ベース(田上敦巳)は僕の高校からの友達だし、ドラム(西河徹志)、ギター、ベースは前身バンドのTALKING DEAD GOATS ’45からそのまま。そこにサックス(安藤暁彦 aka AKN / KURUUCREW)をプラスして。僕がやろうとしているサックスで考えたら、彼しかいない、という感じで。まあ歳も近くて、近いものが好きだったりするし」

――そこはわりと必然的にというか。人間的な部分も大きかったりするんですね。
 「そうですね、完全に」

――goatの“使う範囲をかなり限定”した演奏は、例えばギターであれば“ギターじゃくてもよくね?”と思わせる部分もありますよね。そこを今の楽器編成にしているのは、あえての選択なのでしょうか。
 「ギターはまあ、僕がギターを使ってたから。ベースはベースを使ってたから。“今のメンバーで” やろうって決めたから、それぞれが使ってた楽器でやる、という感じです」

――そこも必然なんですね。それぞれ卓越したプレイが可能な楽器で、制約を設けてやろうと。
 「そうですね。もしベースがチェロだったらチェロでやってたと思うし」

――さきほど“もっと上手い他の誰か”とおっしゃっていましたが、goatを始めるにあたって、自分が夢想する音を具現化する人間を新たに集めようという気持ちは無かったのでしょうか。
 「無かったですね。3人でやっていた時に土台を作って、そこに必要だったサックスを足したので“人を集める”ということ自体考えていませんでした。“4人で”というのもある種制約的なんですけど」

――そうなんですか?
 「人数を絞るほうが、やり易いんですよ。広げ過ぎると色んなことが大変になってくる。だからドラムもキック、スネア、ハイハットの3点しかないし、少ない選択肢の中からアイディアを絞って作曲しています」

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