MASONNA

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やっていることにはすべて理由がある

 1980年代から90年代にかけて一挙増殖し、オルタネイティヴ・ミュージックの極北として世界を震撼させたターム“ジャパノイズ”。代名詞Merzbow、“キング・オブ・ノイズ”非常階段と並び、ジャパノイズの象徴的存在として世界からのリスペクトを一身に浴びる山崎マゾ氏のソロ・プロジェクト“MASONNA”が、活動25周年。ハーシュ / パワー・エレクトロニクスの手法を用いてパンクロックの沸点のみを増幅するパフォーマンス・スタイルは現在もなお唯一無比のフレッシュネスを放ち、15周年記念作品『Shock Rock』以来実に10年ぶりの新作リリースも控える山崎氏に、25年のMASONNAヒストリーを語っていただきました。

取材・文 | 久保田千史 | 2012年12月

――25周年おめでとうございます。この時間で25年の歳月を語るのは難しいかと思いますが、現在に至るまでの道程をお聞かせください。
 「はい。まず始めた時のことからですよね。MASONNAとして録音を始めたのは1987年なんですけど、その前にバンドをやっていたんですよ。地元の友達らと田舎町でパンク・バンドを」

――どんなスタイルのバンドだったのですか?
 「その頃、自分が16、7歳くらいの時っていうのは、THE STALINがメジャー・デビューしたり、あとまあ “インディーズ”がすごく盛り上がってきてたんですね。スターリンのギターのタムがADK Recordsを始めたり。『Outsider』ってコンピとかもその頃に手に入れたんかな、ハードコア・パンクも盛り上がってきて、AAの『ハードコア不法集会』(『Hardcore Unlawful Assembly』)、メジャーからは『Great Punk Hits』とか出て予約して買ったな。DISCHARGEやDISORDER、CHAOS U.K.なんかは日本盤も出てたんで田舎のレコード屋でも買えたし、G.B.H.も来日したり。あとポジティヴ・パンクね。SEX GANG CHILDRENとか、そういうのも出てきて。リアルタイムでそこらへんを聴いていったから、もうアンダーグラウンドなもんしか買わなくなってた。初めやってたパンク・バンドは、まあスターリンとかADKから出てたバンドの影響を受けて始めたものだったんですけど」

――パートは?
 「ヴォーカルですね」

――その頃の音源は残っていたりするのでしょうか。
 「はい。MCR COMPANYから出してて」

――そうなんですか!?
 「MCR COMPANYって、当時は地元周辺のバンドしか出してなかったんですよ。FUCK GEEZを中心にね。僕がやっていたのはTHE SADISTっていうバンドだったんですけど」

――あ~、そうだったんですね。
 「あんまり公には言ってなかったんですけど(笑)。THE SADISTでライヴ・デビューしたのが1984年なんですよね。だからもうすぐ30周年ですね。編集CDを作ろうかって話も出てきて、当時のデモテープ的な物も見つけて聞いてたんだけどサウンドの変化がその頃の興味の移り変わりと分かりやすくリンクしてましたね。ハードコア的になったりサイキックなポジパンみたいな曲になったりと。解散直前に録った未発表のなんかはSEX GANG CHILDRENの影響がモロだった」

――THE SADISTでの活動はどれくらい続いたのでしょうか。
 「THE SADISTは、メンバーが皆高校生とかやったんで、卒業したら一旦終わっちゃうんですよね。まあ京都でも日本海側の方の田舎でやったんで、卒業したら地元を離れて大学に行ったり、就職したりで。同時に仲間の間でもインディーズのパンク・ブームみたいなのが落ち着いてきてしまって。今でもパンクは大好きなんですけど、その後あたりから実験的なものにどんどんと、のめり込んでいくんですよ。ノイズ、インダストリアルやジャンクなんかを聴き始めてて。最初はまあ、まだサイズが小さかった頃の『FOOL’S MATE』にね、そういう記事が載っていて。広告があったノイズ専門店みたいなところで通販してたんですね」

――その当時の“ノイズ”というと、どんな感じだったのでしょうか。
 「1980年代の海外のノイズっていうか。だから、自分が聴いてた感じで言うとNURSE WITH WOUNDとか。ETANT DONNESも好きやったな。ハーシュなものより、ストレンジな感じの方が好きだったんですよ。ヘンな編集とか、意外性のあるカットアップとか。まあNURSE WITH WOUNDが正にそうなんですけど」

――ちょっとサイケデリックな感じですよね。
 「そうですね、初期のNURSE WITH WOUNDはサイケデリック的ですよね。でも4枚目以降の独特のコラージュ感を確立させてからの方が影響を受けたんですけどね。最初の3枚は垂れ流してる感があるけど、その後は展開に予想がつかないというか、凄まじいオリジナリティで新鮮でしたね。そういうものを色々聴いていた頃にハードコアのめちゃめちゃ速いのが出てきたんだったかな」

――グラインドということですか。
 「うん、まあSxOxBとかね。彼らが出てきたのはもうちょっと前だったとは思うんですけど。その感覚でノイズをやりたいって思ったんですよ。速いの。バンドが解散した時に、メンバーで練習すんのとか面倒臭いなって思ってて(笑)。バンドのエネルギーって、メンバー1人1人の個性やエネルギーが合体してすごいパワーが出るんだけど、自分の個性だけを増幅してそのパワーを出すというのかなあ。1人やったら誰にも文句言われへんし、練習とか何もせんでいいし、意見も聞かなくていいし(笑)。スタイル的には、SxOxBとかNAPALM DEATHみたいなグラインドの速い感じを、楽器もメンバーも曲もなしでやるっていう(笑)」

――曲はあるじゃないですか(笑)。
 「再現できない曲じゃないですか(笑)。そういう、常識的なものを一切払いのける感じで」

――その思考に至るきっかけみたいなものはあったのでしょうか。
 「まあやっぱり、人と違ったことがやりたかったんですよ。自分が聴きたい音を追求するっていうのは初めからあるんで。たぶんMASONNAの前にもノイズっぽいことはやってたと思うんですよ。真似事みたいな感じで」

THE SADIST
THE SADIST

――バンドをやられていた時にですか?
 「そうそう。バンドの終わりかけの頃かな。リズムボックスが入ってグシャグシャっとしたのを、4チャンネルのMTRで録ったりしてやってたな。2本くらいカセット作ったと思うんですよ。バンドで会った人に渡したりしてた。その時はまだ、ちょっと実験的なことをやってみよう、くらいの気持ちだったんですけど」

――当時、すでにMerzbowやINCAPACITANTSなどは活動されていたと思うのですが、影響を受けたりはしましたか?
 「影響的にはそうですね。ジャンルとしてノイズっていうことにはすごく拘ってたんですけど……。例えばSONIC YOUTHがノイズやって言われてたりしたじゃないですか。あれはバンドやからノイズじゃないっていうか。そういう拘りはあるんですけど、もっとパンクだっていう」

――所謂“ジャパノイズ”の中でも山崎さんは少し毛色が違う感じがするのは、そういう部分なんでしょうか。一絡げに呼ばれがちですけど……。
 「まあそれは構わないんですけど(笑)。どうなんですかねえ」

――MerzbowやSOLMANIAなどはコンセプチュアルな感じがするんですけど、ライヴにも表れているようにMASONNAはもっと直情的というか。
 「ああ……。でも、初めライヴはやってなかったんですよ。最初の4年くらいは。例えばMB(Maurizio Bianchi)って、当時はライヴを絶対やらなくて、録音だけやっていう話だったんですよね。レコーディング・ユニットっていうか。そういう感じで、まあ田舎に住んでたし、ライヴをやるつもりはなかったんですよ。1st LP『Masonna vs Bananamara』(1989)や2ndアルバム(CD)の『Shinsen Na Clitoris』(1990)なんかライヴをやってなかった頃に出してますね。ちなみにこの2作はTHE SADISTのギターだった手島(美智雄)くんが始めたレーベルのVanilla Recordsから出してもらったんです」

――そうだったんですね。
 「はい。それで1991、2年だったと思うんですけど、MONDE BRUITSの岩崎(昇平)さんから突然“企画やってるんですけど、出てもらえませんか”って電話がかかてっきたんですよ。ライヴなんか1回もやったことないのに。彼は大阪にMerzbowやINCAPACITANTSを呼んだりして、(大阪・難波)BEARSとかで“NOISE FOREST”っていうノイズのライヴ企画をやっていたんですね。東西のネットワークを結ぶ感じで。どこで電話番号調べたのかな、って思ったら、僕がカセットを卸してたレコード屋の店員に電話番号を聞いたらしくて。何の面識もないのに(笑)」

――バンドをやっていた頃に顔は知っていた、みたいなこともなく?
 「なしなし。ないです。いきなりだったんで、いやいや、みたいな感じだったんですよ。でもSOLMANIAも出るっていう話やって、一緒やったらやってもいいかなって思ったんですよ。デュオで。その頃ちょうど、全然別のところでSOLMANIAの大野(雅彦)さんと知り合うきっかけがあったから。結局そうこうしてるうちに話が決まって、SOLMANIA + MASONNAみたいな感じでやったのが最初のライヴ」

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