Interview | COFFINS


結果的にドゥームデス

 AUTOPSYを筆頭とするオールドスクール・デスメタルや、GRAVEのようなスウェディッシュ・デスメタルの非ブラストを受け継ぎ、DIVINE EVEやWINTERといったドゥームデス巨匠に続く存在として、ANATOMIAと共にその筋の世界的評価を不動のものとしている東京のCOFFINS。20 Buck Spin、Bones Brigade Records、Hammerheart Records、Razorback Records、Southern Lord Recordsといった名レーベルからのリリースを続け、世界を舞台にエクストリーム・ミュージックの最先端で活動する同バンドが、SOURVEINやWARHAMMER等との数々のスプリット作、Osmose Productionsからの過去作リイシューを挟み、『Buried Death』以来実に5年ぶりとなるニュー・アルバム『The Fleshland』を老舗Relapse Recordsよりリリース。メンバー構成を一部チェンジし、CELTIC FROST的重厚スロウネスよりもスウェディッシュ・デスメタルを髣髴とさせるハードコア・パンク的要素を増量した作品に仕上げています。近年クラスト界隈やDeathwish Inc.、A389 Recordings周辺を中心としたハードコア方面からも熱い視線を浴びる“ドゥームデス”。そのCOFFINSオリジナル生成過程を、ギタリストUchino氏に伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2013年7月


――COFFINSは当初から、ドゥームデス・バンドとして結成されたのですか?

 「最初は今みたいな音じゃなかったんですよ。SWANS、GODFLESHとか、そういうジャンクみたいなことをやっていて。だんだんメンバーが入れ替わる中で、ドゥーム、スラッジなんかの要素を入れるようになって。例えばEYEHATEGODだとか、初期のCATHEDRALとかね。そういう変化があって。だから割と変化球というか、所謂ドゥームデスとは出自が結構違うんですよね」

――最初は全然DIVINE EVE的な感じではなかったんですね。
 「好きで聴いてはいたんだけど、そういう感じでやろうとは思っていなくて」

――僕がCOFFINSのことを知ったのは最初のデモCD-Rの時だったのですが、あの時点ではすでにドゥームデス化していますよね。
 「そうですね。2000年くらいにバンドが止まって、一度みんな散り散りになったんですよ。その後2003年にまた集まってから、ほぼ今と同じ音で、聴いていただいたデモを録ったんです」

――デスメタルの要素が入ってくるのには何かきっかけがあったのでしょうか。
 「個人的にスラッシュメタルやデスメタルはすごく聴いてたので、バンドが止まった時にそういうのをやってみようかな、と思っていたんですよ。それが加わって今の音になった感じですね」

――今のスタイルになってからは長いですよね。
 「そうですねえ。2003年からと考えるとちょうど10年くらいですよね」

――今や世界の……。
 「不思議ですよ。海外ではとにかくウケるんですよね(笑)」

The Fleshland
COFFINS ‘The Fleshland’ 2013

――やっぱり日本と海外では反応違いますか。

 「そうですね。2003年からのCOFFINSはWINTERをお手本に始まったんですけど、WINTER自体が海外ではカルト化されていて」

――ネ申ですよね。
 「そうそう(笑)。そういう下地が海外にはあるから、日本人がそういうのをやってるっていうことでダイハードな連中が嗅ぎつけたんでしょうね。デモがとにかく売れたんですよ。それから向こうで色々とサポートしてもらうようになって。アルバムを出してたりとか」

――WINTERもCOFFINSと同じようにガチのメタルではないドゥームデスですよね。ハードコアの下地があって。
 「そうですよね。NAUSEAとかね。そんなに詳しくはないですけど、俺もハードコアは一通り聴いていたからシンパシーを感じていたので」

――日本だとANATOMIAという巨匠がいるわけですけど、COFFINSは彼らと比べても全然ハードコアの要素が強いですよね。
 「そこが多分、さっき言った出自の違いっていうのが出ているところだと思うんですよ。ANATOMIAはTRANSGRESSORっていうデスメタルから始まって、ずっとドゥームデスをやっているんで。COFFINSはそれとはちょっと違う方面から来てるというか」

――元から持っている幅広い要素を、ドゥームデスに落とし込んでいく印象ですよね。“ドゥームデス”って持ち上げられるとビミョーな気分ですか(笑)?
 「そうですね、結果としてドゥームデスになっているくらいの感じなので(笑)。だからそんなにね、今は “ドゥームデスやろう!”みたいなイメージじゃないんですよ」

――最新アルバムは名門Relapseからのリリースですが、反応はいかがですか?
 「海外での注目度がかなり高いみたいですね。反応は色々来ているみたいで。レーベル側はその良い悪いは教えてくれないんですけど(笑)。反応だけはやたらあるということらしいんで」

――今回は編成も変わっていますよね。どのような意図があって編成を変えたのでしょうか。
 「技術的な面が一番大きいですね。今ヴォーカルをやっているRyoはドラムでCOFFINSに入ったんですけど、元々ほかのバンドのヴォーカリストだったんですよ。ドラムでちょっと技術的に行き詰まってきたみたいだったので、Satoshiを新しく専任のドラマーとして入れて、Ryoにはヴォーカルをやってもらうことになったんです。ちょうど俺も声が出なくなってきてたんで」

――そうですか??
 「歳でね(笑)」

――そんなあ(笑)。
 「(笑)。でも本当に、昔ほどロウ・グロウルみたいな声が出なくなっていて。ヴォーカルが欲しいなって考えていたんですよ。そうやって技術力の底上げを図ったんです。今回がそのメンバーで録る最初のアルバムなんですけど、今の編成になって2年くらい経ってたから、わりとまとまった感じで録音できたんじゃないかなって思ってます」

――Ryoさんのヴォーカルはストロングな感じですよね。
 「初期デスメタルみたいな感じをイメージしてやってもらいました」

――音も、以前のように低音が前面に出ている感じではなくなっていますが、それもオールドスクールなデスメタルを意識して?
 「そうですね。COFFINSのアルバムの中ではかなり意識してやった方だと思います。多少お金と時間をいただいたんで(笑)、そのあたりは時間をかけて作りましたね。スウェディッシュ・デスメタルとか、そういう音を意識して」

――ドゥーム寄りよりもデスメタル寄りで。
 「そうです。ノリを出す感じというか」

――そのあたりでファンの意見は分かれそうですね(笑)。
 「ですね、好き嫌いは多分あると思います。初期のCOFFINSが好きな方はアレかもしれないですね。まあでも、どんなバンドだって、初期が好きな人って新しいアルバムはだいたい批判するものだから。それは仕方ないかなっていう感じですけど。海外が特にそうですね。そのへんシビアなんですよ。昔のほうが良かったってよく言われますね(笑)」

――でも反応があるっていうのは面白いですね。
 「そうですね。何にも反応が無いよりは、あったほうが良いですけどね」

――ツアーは海外が多いですよね。
 「でもまあ年1回、多くて2回、2週間くらい行ければベストかな、というくらいで。年に1ヶ月や2ヶ月も海外に行っているバンドもいますからね。それに比べたら全然少ないですよ。良いお話があれば行きます、っていう感じですね」

――普段お仕事もされていると思うのですが、海外ツアーの時はどうされているのでしょうか。
 「仕事前倒しでなんとか時間を捻出して、という感じですね。みんな割と融通が効く仕事ではあるので、なんとかしてます」

――色んな国を訪れてみて、どの国の反応が一番面白かったですか?
 「やっぱりアメリカはお客さんが基本すごく陽気で面白いですね(笑)。でも、COFFINS云々というよりも“日本から何か来たぞ~” みたいな感じで遊びに来る連中が多いと思うんですよ。それを観ながらみんなでワイワイ飲んで、そういう空間を楽しむっていうか」

――珍獣的な(笑)?
 「そうですね、多分そういうノリだと思いますけど。初期のすごく遅い曲をやっても、ダイヴしたり、椅子投げたりするし(笑)。暴れたいだけじゃん……みたいな気はするんだけど(笑)。それでもまあ、盛り上がるんで。それはそれでやっていて楽しいですけど」

――海外では様々な会場でプレイされていると思うのですが、最大でどれくらいのキャパを相手に演奏されたことがあるのですか?
 「どれくらいですかねえ……。でかいフェス、例えば“Maryland Deathfest”だったり、ポルトガルの“SWR Barroselas Metalfest”みたいな会場だと数千人規模ではあると思うんで、結構な人数の前ではやってますね。その人たちがまあ、COFFINS目当てかどうかは別にして(笑)。そういう機会は結構多いですね」

――フェス出演だと、様々なバンドと共演しますよね。何と共演したのに一番感動しましたか?
 「いや~、2010年に“Maryland”に出たんですけど、その時AUTOPSYが再結成してからの初ライヴだったんですよ。それを体感できたのが個人的には一番感動しましたね。最高でした。これまでやってきた中で最高だったんじゃないですかね(笑)。EYEHATEGODとかENTOMBEDみたいな有名どころも結構出てたので、そのへんもステージ袖で観ましたけど」

――ENTOMBEDのパフォーマンスは今どういう感じなんですか?
 「先祖返りっていうか、初期に戻る感じの音で。もう全然ロッキンな感じじゃないですよ。ライヴもちょっとハードコア的な感じでやっていて。2011年にやったEUツアーの時にも小さめのハコで一緒にやったことがあるんですけど、やっぱり昔に戻ってるなって思いました。これから行くEUツアーでもまた一緒にやることになってるんですよ」

――近年、ENTOMBEDをはじめとするスウェディッシュ・デスメタルや、AUTOPSYみたいなオールドスクール・デスメタルは、ハードコア界隈での再評価がすごく高まっていますよね。
 「なんかそうみたいですね。取っ付き易いんじゃないですかね」

――COFFINSに対しては、そのあたりからの反応ってありますか?
 「特に海外なんですけど、好きだって言ってくれるクラスト連中は多いですね」

――STORMCROWはスプリットも出されていますよね。
 「そうですね、STORMCROWも大好きだって言ってくれていて、ツアーも一緒に回ったし。まあ元々、あのへんの連中はBOLT THROWERからの流れなんで、デスメタルかどうかっていうことに特に拘りが無いんですよね」

――元CURTAIN RAIL / TRIKORONAのKoreedaさんが加入してからのCOFFINSは、純粋にハードコア度が高くなっていますよね。
 「そうですね、あいつはパワー・ヴァイオレンスもやってるし、ハードコア、クラストの人間なんで。そちら方面からの魅力みたいなものを担っている感じはします。特にライヴではそれが如実に出ますね。動きとかね。動き専任というか。ヴィジュアル担当ですね(笑)」

――Koreedaさんはルックスも素敵ですものね。女性ファンも多いんじゃないでしょうか。
 「多い多い。特に海外では大人気ですよ、あいつは。普通に羨ましいですけどね、正直(笑)」

――(笑)。ガチのパンクスの方が在籍するデスメタル・スタイルのバンドってなかなかいないと思うのですが。
 「そうですね。編成からしてANATOMIAみたいなバンドとはやっぱり違うのかな、っていうのはありますね」

――昔のデスメタルがハードコアパンクの影響を内包しているのに近いですよね。COFFINSはそういう感覚をアップデートしているように感じます。
 「うん。スラッシュメタルもそうだけど、Dビートを使ったり、演奏も荒かったりね。まずCELTIC FROSTからしてそうじゃないですか。まあWINTER自体がCELTIC FROSTからの流れなんで、そういうラインは踏襲してる感じがありますね」

――HOODED MENACEのようなバンドともスプリットを出されていますが、若い面々でシンパシーを感じるようなバンドはいますか?
 「そうですねえ……HOODED MENACEとは去年のツアーで2回一緒に回ったんですけど、その時のライヴに出てたSOLOTHUSっていうドゥームデスが良かったですね。俺の周りはみんな好きです。そいつらはまだ20代前半くらいで若いのに、まあHOODED MENACEの影響下ではあるんだけど、すごく渋いドゥームデスをやっていて。この間アルバムも出たみたいですよ。まあ日本でウケるかどうかはわからないですけどね(笑)」

COFFINS

――COFFINS、ひいてはドゥームデスの魅力を日本で伝えるのって難しそうですね……。
 「いやあ、難しいですよ(笑)。やっている本人が一番そう思ってるから(笑)。もう、基本的には日本のマーケットに向けてやっていないんで。スタートが海外からだったし、それは仕方ないかな、っていう感じはします」

――そんな中、NOOTHGRUSHを招いてツアーを開催するんですよね。
 「そうです。無謀にもというか(笑)。なぜ今?というのもありつつ(笑)」

――彼らはDOT[.]絡みでのお付き合いなのですか?それともSouthern Lord関係?
 「いや、彼らとの付き合いはここ4年のことですね。2009年のUSツアーの時に初めてメンバーと会いました。その後、去年のEUツアーで出たフェスに、ALDEBARANていうバンドのツアーで一緒にヨーロッパに来ていた彼らも出演していて。彼らがCOFFINSを知っていてくれて、一緒にやれたらいいですねっていう話をしていたんですよ。ドラマーのChiyoさんが日本の方だからツアーを組み易いというのもあって、じゃあ日本でやりましょう、ということになったんです」

――楽しみですね。
 「楽しみです。人が来るのかどうかは分からないですけどね(笑)。日本のバンドのサポートに頼るしかないです。バンド主導だとなかなか大変ですけど。でも、そうでもしないとNOOTHGRUSHなんて日本では観られないんで。昔よりはスラッジが浸透してきている気がするから、多少はみんなに興味を持ってもらえるんじゃないかな」

――一時期すごかったドゥームのブームが、今度はスラッジで戻ってきている感じがありますよね。
 「そうですね。日本の若い連中でも、スラッジをやってるバンド結構多いから」

――Uchinoさんの新しいプロジェクト“OOZEPUS”(ARMENIA~ALBIORIX REQUIEM / MOTHRA~LINEKRAFTメンバー在籍)も、そういう流れがちょっとあったりするんでしょうか。
 「昔やれなかったSWANSみたいなやつをもう一度やろうかな、ということで始めたんですけど、遊び要素が大きいんで。真剣にやると面倒臭くなってきちゃうから(笑)。とりあえずCOFFINSをちゃんとやらないと。でも、海外の連中はやっぱり食いつきが早くて、もうレコードディールが決まってるんですよ。一番最初にデモを買ってくれた奴がやっているレーベルなんですけど。そういうのはありがたいなあって思いますけどね」

――そのリリースも楽しみですね!COFFINSとしての今後の予定は?
 「Southern Lordから、ツアー用にNOOTHGRUSHとのスプリットが出ます。地味にやってる感じですけど、興味があったら観に来てくれると嬉しいです」

COFFINS Official Site | http://www.coffins.jp/