テンテンコ

テンテンコ

どんどん面倒臭い人間になっている

 EYƎ(BOREDOMS)やIllicit Tsuboi、JINTANA、七尾旅人、のっぽのグーニー、Logic System(松武秀樹)らを迎えて制作されたミニ・アルバム『工業製品』のリリースをはじめ、自主企画ライヴ・イベント“ブタゴリラ”“ひとのいとなみ”の運営、自主制作CD-Rのマンスリー・リリース、TV出演など、精力的な活動を展開中のテンテンコが、2015年のソロ・デビュー・シングル「Good bye, Good girl.」と、『工業製品』からの先行シングル「放課後シンパシー」のカップリングとして発表した堀ちえみ「Wa・ショイ!」のカヴァーを各サイドに収録する7inchヴァイナル「Wa・ショイ! / Good bye, Good girl.」を4月22日の“RECORD STORE DAY”に合わせてリリース。テクノ歌謡、トイポップからノイズ / インダストリアルまで幅広い音楽性を内包した活動を続けるテンテンコの、原点と現在が交差する内容となっています。本稿では、「Good bye, Good girl.」からの約2年間を、ご本人に振り返っていただきました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2017年4月

――今回のリリースにあたって改めて「Good bye, Good girl.」を聴きなおしたんですけど、なんだか色んな気持ちになりますね。リリース当時の空気感も蘇ってきて……。
 「そういうのありますよね。わたしも普段、音楽聴くと、聴いてた当時のことを思い出したりします」

――2年の間に色々変わりました。Especiaだって解散しちゃったし……。
 「それ、本当そう。みんなかなり状況が変わってて。けっこう変わりますよね、2年で。全然違う」

――テンコさん自身は、どんなことが一番変わりましたか?
 「日々変わっていくし、けっこう何もかもが違うと思う。一番違うのは、何だろう……“Good bye, Good girl.”を出した頃は、前にやっていたアイドルの感じがまだあったけど、今は自分が“こうやっていきたい”っていうのが出来上がってきたのがデカいかな。思い返すとけっこう感慨深い」

――Twitterのプロフィールから“ex-BiS”の表記がなくなったのっていつ頃だったんですか?
 「いつだっけ……。あ、節目節目で出させていただいてるDOMMUNEで“テンテンコ五時間”をやった時ですね。“もうBiSって付けなくていいんじゃない?”っていうコメントがけっこう目に入って。正にBiSとは関係なく呼んでいただいた場でもあったし、色んな人が見てくれてるのが分かって、たしかに……と思って取りました」

――2年で今みたいな状態を確立出来るのって、早くないですか?
 「どうなんですかね?やるしかない!みたいに思って、出来ないのにやってたから、スピード感はあったかもしれないです。“これが出来るようになってから見せよう”とかじゃなかったんで。それってやっぱり、追い込まれる」

――追い込まれますね(笑)。
 「そう。来週ライヴだわ!みたいな状況がこの2年間、ずっとあって」

――でも、好きなことを突き詰めている感じですよね。それでちゃんと支持を得ているのはやっぱりすごいですよ。
 「頑固なだけっていうのもあるんですけど(笑)」

――ライヴを観ていても、どんどんかっこよくなっていますよね。毎月のCD-Rシリーズもおもしろいし。
 「CD-Rはけっこうデカいかもしれないですね。毎月出すのはけっこうキツいんですけど(笑)、自分のためだと思って続けてて」

――追い込むために。
 「そうですね。形にしなきゃいけない!っていうのが毎月あるから。自分が好きな音楽や人について考えるきっかけにもなっているんですよ。“こういう人いいな”って探したり、“こういう音楽もやってみたいな”って思ったり。CD-Rはそういう時間になってます」

――でもテンコさん、元々色んな音楽お好きですよね。
 「かなり偏ってますけどね(笑)。わたしが好きなものは、めちゃくちゃ分かり易いんですよ。電子音で、ちょっとローファイ?だったり、ちょっと悪い音が入ってたり。電子音で“ミョンミョン”してる感じ?“ポンポ~ン”とか入ってたり。テクノ歌謡とか、昭和のアニソンみたいなのが好き」

――じゃあ堀ちえみさんの「Wa・ショイ!」も自然な感じで。
 「そうです。すごく好きな曲だったんで。でも実はわたし、最初に好きになった時はムーンライダーズの方が作った曲(作詞 鈴木博文 / 作曲 白井良明)だって知らなかったんです。変わった曲だけど、すっごく可愛くて、良いな!と思ってて。カヴァー曲を歌う機会があったらこれだな!ってずっと考えてたんですよ。堀ちえみさんの人物にも興味があります。たぶん酸いも甘いも知っていて、すごく強い女性だと思うんですよね。そういう強さに憧れがあるし、わたしに足りない、広い心も持ってそう」

――僕から見たら、テンコさんも心広いと思いますよ。
 「いやあ~、一方では広いかもしれないけど、一方ではめっちゃ狭いと思いますよ(笑)」

Wa・ショイ!
テンテンコ ‘Wa・ショイ!’ 2017

――あはは(笑)。「Wa・ショイ!」は、さっきおっしゃっていたテンコさんの好みに正に合致する楽曲です。当時のエレクトロニックなポップスって、機材も、その使用法も過渡期だったからか、独特のエラー感がありますよね。そういう感じがやっぱり好きなんでしょうか。
 「そうですね。どんなことでも、“何かを始める瞬間”がすごくおもしろくて。例えばシンセサイザーが出てきた時だって、その新しい感じでみんなわくわくして作ったんだと思うんですよ。当時の音楽からは、そういうのがすごく伝わってくるんですよ。試行錯誤があって、言っちゃえば洗練されていないのかもしれないですけど、それが好きで。楽しんで作ってるのが分かる」

――テンコさんのCD-Rシリーズにも、その雰囲気がありますよね。当時の感覚、実験の楽しみを、身をもって体験したいという願望にも思えます。
 「うんうん、そうですね。BiSが終わってゼロからのスタートだったこともあって、常に何か新しいものを触っている感覚がいまだにあるし、ずっと続けられたらいいな、と思ってるんですよ。この先何10年も。観る側としても、そういう人が好きで。50代とかになっても、何か新しいことをやっているような」

――Phewさんとかね。
 「そうそう、Phewさんは正にそうですよね。最近ライヴを観た中ではStefan Schneiderさんとか。めちゃくちゃキャリア長いのに、常に新しいことをやってる感じ。周りにもそういう人が多くて、憧れますね」

――たしかに、この2年間でテンコさんが共演してきた皆さんは、常に新しいことをやっていますよね。日野さん(日野浩志郎 aka YPY / goat)にしろ、Kyokaさんにしろ、秋田さん(秋田昌美 / Merzbow)にしろ。
 「そうなんですよ。他にも一緒にやってみたい人たくさんいるし。でもそういう出会いは自然の流れに任せてて。いつか会えればいいな、みたいな感じなんですよ。だから、めっちゃ良くないんですけど、挨拶が苦手(笑)。でも、会うきっかけみたいなのを大事にしたくて。これまでに会った人はみんな、会えればなあ……と思ってたら自然に会ってた、みたいな人たちだから」

1 2 3