Interview | ZOMBIE-CHANG | Meirin


寂しいだけが孤独じゃない

恋のバカンス E.P.』を経て2016年にリリースした1stフル・アルバム『ZOMBIE-CHANGE』で注目を浴びたメイリンによるソロ・プロジェクト“ZOMBIE-CHANG(ゾンビーチャング)”が、早くも2ndアルバム『GANG!』をリリース。古くはTHE SPACE LADY、昨今であればHYPE WILLIAMS~Dean Blunt / Inga CopelandやGRIMES、Carla dal Fornoなどを思わせるロウな質感のベッドルーム・ポップスはそのままに、昭和の2文字すら過ぎる歌謡曲のムードをふんだんに盛り込み、人懐こくノスタルジックなメロディの“歌”が前面に押し出された本作は、蓮沼執太が『メロディーズ』に伴うツアーでコラボレートを求めた事実も納得の内容。古風なジェンダー役割語をあえて用いたミステリアスかつ普遍的な歌詞も含め、老若男女を虜にするであろう傑作ソングブックとなっています。近年はモデルとしても大活躍、Sky Ferreiraみたいなかっこいいアイコンとしても邁進中のメイリンさんに、ここまでの道程と活動に込められた意図についてお話を伺いました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2017年2月


――元々ギターを演奏・作曲されていたわけですが、現在のような機材での制作に移り変わっていったのにはどんな理由があるのでしょうか。

 「ギターの弾き語りだと表現方法が限られてくるし、“感情と自分を武器に”みたいなのとは違うことがしたかったので、色んな音が使える今の機材になっていきました。“売れたい”っていう気持ちもあるから、もっと多様性のある音楽にしたくて」

――“売れたい”っていう気持ちが、あるんですか。
 「ありますよ。“アンダーグラウンドでやっていきたい感じなんでしょ?”ってよく言われるんですけど、全然そんなことはなくて。色んな人と調和できるのであれば、調和したいし、なるべく寄り添いたいと思ってるんです。自分の本質的にはあまり寄り添える人じゃないんで(笑)、せめて音だけでも」

――素敵じゃないですか。
 「あはは(笑)」

――宅録で曲を作っていると、売れている音楽、例えばチャートに入っているJ-POPみたいに、高いスタジオで作られるようなサウンドのクオリティに到達するのって、めちゃくちゃ大変じゃないですか。
 「大変だと思います」

――でも、目指しているのはそういうところなんですか。
 「そうなりたいというよりも、メインストリームの音の基準をちょっと変えていけたらな、って思います。逆に。わたしの歌はすごくポップだと自分でも思っているんですけど、音の基準まで一緒にしてしまったら意味がないと思うんですよ。例えばSuchmosのかっこよさってそういうところだと思うんです。ストリートのクールな感じがありつつ、でもメインストリームで、新しい風じゃないですか。“売れたい”っていうのは、そういうものを目指したいということですね」

――志高いですね!
 「あはは。最初はそんなこと全然考えてなかったですよ(笑)。ギターを弾いていた時も(Apple)GarageBandをいじっていたので、使っているうちに電子音のおもしろさに気付いて。そこからLogicに買い換えて、機材も増やしてハマっていった感じです」

ZOMBIE-CHANG 'GANG!', 2017 <a href="http://bayon-p.com/" target="_blank" rel="noopener"><span style="color: #ffffff;">Roman Label / Bayon Production</span></a>
ZOMBIE-CHANG ‘GANG!’, 2017 Roman Label / Bayon Production

――メインで使っている機材は、ハードのサンプラーとPC?
 「ネットで観られるライヴ映像はPCを使っている映像しか上がってないんですけど、今はPC使っていないんですよ。DJミキサーとサンプラー、シンセでやっています。やっぱりPCって、壊れたらおしまいじゃないですか。それが怖くて。音が止まって、自分がパニックになる絵面しか浮かばないんで(笑)」

――そこですか(笑)。最近アナログシンセだけで作る人がまた増えているじゃないですか。そういう潮流でもなくて。
 「全然。なるべく安全なものを使いたいと思って(笑)。急にヒュン……とか落ちたらヤバいですよ。超コワいんで。1年くらい前にTYCHOのライヴを観に行ったんですけど、あんなに大きい会場で、よく堂々とPC使えるな……と思って。落ちたら怖くないのかな?って、すごい心配になっちゃって」

――ライヴを観に行って、その心配する人って初めてお会いしましたけど……たしかにそうですね、しかもTYCHOは遠い外国から持ってきているわけですもんね。
 「そうそう!好きだからこそ心配なんですよ」

――そんなにですか。TYCHOもそこまで心配されたら嬉しいでしょう(笑)。ああいった、アトモスフェリックな音楽がお好きということなんでしょうか。
 「そういうわけでもないんですよ。あまり統一されてなくて。わたしの好みって。TYCHOはTYCHOで好なだけで、例えばその関連の人たちとかを薦められると、ん?わかんない……ってなっちゃいます。自分の好きな環境、好きなタイミングで聴いて、その時の感情にリンクする音楽じゃないと全然好きになれないんですよ」

――わかります。その時々の気持ちで好きな音楽って変わりますよね。ひとつ“好き”って言うと、同じような音楽ばかり好きって思われがちですけど……。面倒臭いですよね。
 「そう(笑)。違うのに~!って思っちゃう。だから人とあまり音楽の話はできないです」

――色んな音色で表現できる現在のスタイルはやっぱり、メイリンさんにぴったりなんでしょうね。でも、ギターで作曲するのとは感覚がかなり違いますよね。ざっくり言うと、ギターだとコード感中心、現在の機材であればリズム主体になってくると思うんですけど、その違いに戸惑うことはなかったのでしょうか。
 「違いはあまり感じなかったかもしれないです。わたしは“歌”が先行する人なんで、“フンフン”て独り言みたいに歌ったのをいつも録り溜めてるいるんですよ。ギターの時はそれにコードを付けて組み立ててゆく感じだったので、やり方はそんなに変わっていない気がします」

――気になるメロディが浮かぶと、録っておくんですね。
 「そうですね、どんなにクダらない歌でも(笑)」

――メイリンさんの曲作りは、所謂宅録ですよね。宅録で、女の子で、エレクトロニックだと、ことに日本では、ウィスパーに歌う人が多いじゃないですか。
 「そうですねえ」

――それって、僕の個人的な憶測なんですけど、日本の住宅事情が関係していると思うんですよ。環境への配慮っていうか。
 「ああ!たぶんそうですよね(笑)」

――でも、メイリンさんは声デカいですよね。
 「(笑)」

――録り溜めているフンフンもデカいんですか?
 「デカいです。元々声がデカいんですよ(笑)。でもたしかに、はっきりとは歌いますね。デモの頃はウィスパーで歌ったりもしていたんですけど」

――1stにもそういう曲はありますもんね。
 「はい。でも、それって逃げじゃないか?って思うようになって。自分のキャラクターとも違うし。トラックに馴染み易いじゃないですか、ウィスパーな声って。そりゃそうだろ!みたなことをやったら負けだな、と思って」

――強気ですね。
 「(笑)。日本のメインストリームでやっている人たちはみんな、はっきり歌いますよね。そういう事実を無視してやっていくのは、やっぱり、“逃げ”だと思うんですよ。もっと食って掛かっていきたくて。挑戦するのが好きだから。はっきり歌って、なおかつトラックに馴染む曲を作っていきたいです」

――それは先程おっしゃっていた志とリンクすることなんですよね。
 「そうですね。最初に“あ~、こういう感じね……”って思われて、色んな人に聴かれなくなったら、曲がかわいそうじゃないですか。そこでシャットアウトされちゃうのはすごくもったいないな、と思って」

――たしかに。“歌”において少々エクスペリメンタルだったりすると、そこで聴かなくなっちゃう人も多いですもんね。
 「そうそう。“インディーズの感じね……”とか。あと言語に関してもそうですね。これ言うと怒られちゃうかもしれないけど……ちゃんと英語を喋れる人は別にして、日本のシーンで英語の歌詞を歌うのって、わたしにはよくわからなくて。楽しいかもしれないし、いいんですけど、わたし自身は疑問に感じるから歌詞は日本語にしています。わたしは日本人だし、日本語のほうがいいな、って」

――でもメイリンさんも英語で歌う箇所がたくさんありますよね。かっこいいですよ?
 「それも拘りがあるんですよ(笑)。昔の歌って、サビだけ横文字で歌ったりするじゃないですか。“ベイビー、アイラブユー”みたいに絶対に意味がわかる英語で。そういうのは逆にかっこいいと思うんですよ。昔って、外国の曲を輸入して、日本語に書き換えたりしますよね。それこそ“Pretty Little Baby”が“可愛いベイビー”だったり、わざわざ訳して歌って、日本のシーンに届ける。あれってすごく魅力的だな、って思って。わたしもそういうニュアンスで自分の曲を作りたいんです。ただ自分的にそれがかっこいいと思うだけなんですけど……。だから歌詞カードも、英語の部分は全部カタカナで書いてます。そういう意味を込めて」

――真面目ですね。
 「恥ずかしー(笑)!」

――そもそも英語自体は、メイリンさんにとって馴染みのない言語?喋れない?
 「全っ然喋れないです。英語の曲もたくさん聴くんですけど、急に英語を投げられても、なんのこっちゃ?っていう感じですね(笑)。興味はあるから、もちろん日本語訳を調べたりはするんですけど。だから英語の曲は、サウンドトラックとかで映画のシーンと一緒に好きになることが多いです。“そういう感情なんだな”って、わかり易いから」

――逆に、ご自身の音楽を映像的に捉えているところもあるのでしょうか。
 「あっ!そうですね。作っている時はそんなことないですけど、曲が完成すると“こういうPVを撮りたい”っていう映像が絶対に頭の中にあるんですよ。けっこう細かく。それが再現できるかどうかは別なんですけど……。今回“I Can’t Get To Sleep”のPVを撮ったんですけど、それも曲ができあがった後に脚本ていうか、絵コンテを全部描いて。それが実際に採用されたかどうかは内緒なんですけど……(笑)」

――これまでのPVは全部、何と言うか……ヘンな感じですよね。
 「……そうですね。でも想像通りにできてます。シュールな感じが好きなんですよ。曲はアホみたいなテンションだから、そのまま元気にやってもなあ……って思って。真顔のイメージ。アホなことを真顔で真剣にやるからこそのヘンな空気感というか。映画とかでも、そういうのが好きなんですよね。世界観ですね(笑)」

――ギャップを作りたいということ?
 「そうです。曲に関しても、例えば“KOURAKUEN”は歌謡曲っていうか、昔の流行歌みたいな曲じゃないですか。でも電子音で作る。そうやって間逆のものを合体させるのが好きで。それはすべてに一貫しているかもしれないです」

――派手なカラーのヴィジュアルで真顔、っていうギャップもありますよね。でも「KOURAKUEN」からはビビッドな印象を全く受けなかったです。モノクロの感じ。
 「えっ!何でそう思うんですか?」

――何でだろう。そういう風にしか聴こえないんです。
 「そうなんですよ!“KOURAKUEN”は白黒のイメージで作っていて。白黒の絵で、妻も子供もいる中年のサラリーマンが、独り昔の不倫相手に手紙を書いているんですよ」

――ん?なんすか?サラリーマン?ふりん……
 「そうです。その不倫相手が本気だったかどうかわからないし、書いた手紙も出すかどうかはわからないんですけど」

――(笑)。“待ち合わせは品川駅、東京駅で乗り換えるの”とか、けっこう生々しい描写があるから、実体験を基にしているのかと思ってました。
 「完全に妄想です(笑)」

――おもしろいですね……。でもすごくムーディで良い曲ですよね。「KOURAKUEN」もそうですし、『GANG!』は全体的に、歌謡曲の気分がキーワードになっているように思います。
 「そうかもしれないですね。“Goodbye My Love And Turn Around”を作った時に、歌謡曲とか昔のアイドルの曲と電子音を融合させたらおもしろいんじゃないかな?と思ってから、ドハマりして。それが今回の作品には影響しているかもしれないです」

――昔の曲を調べて研究したりするんですか?
 「う~ん、それなりに……(笑)。でもやっぱり、お母さんが聴いていた音楽の影響が強いです」

――「かわいいベイビー」も、すごく昭和の感じ。Connie Francisのこの曲は本当にたくさんの人が歌ってきたわけですが、メイリンさん的にこの人!という具体的なイメージはあるのでしょうか。
 「中尾ミエさんです!むしろ中尾ミエさんからしか知らないです。英語ヴァージョンもあるんだ……って最初は思ったいたくらいで」

――そういうこともあってか、メイリンさんの音楽はノスタルジックなムードも一貫していると感じます。
 「嬉しい~!わたしノスタルジーな気分がすごく好きで。夕方の河川敷とか、小学校の時の帰り道とか、そういう……あれ何なんですかね?? 帰り道にお惣菜屋さんに寄って、じゃがいもだけ食べて帰る……みたいな。そういう気持ちを大事にしているのかもしれないです。でも意識的にそうしているわけではないですね」

――うん、“思い出だけに生きてる”みたいな感じは全然ないです(笑)。
 「そうそう(笑)。でもノスタルジックな感情は大好きなので、そこは曲に出てるのかな、って思います」

――今回のアルバムでは、中国風の音階を多用していますよね。あれもメイリンさん的なノスタルジーなのかな?と思ったのですが。
 「ああ~。自然に出てきちゃうんですよね。わたし、おじいちゃんが中国人なんですけど、そのことは全く関係なく、なぜか中国のものにすごく惹かれるんですよ。例えば、欧米の可愛らしいお子さんの部屋とかに、急に中国のステッカーとか貼ってあると、なんかグッときちゃうんですよ……。その感じで好きですね」

――そうなんですか。ノスタルジックなイメージと、はっきりとした歌唱も相まって、もはや欧陽菲菲みたいに思えたりもします(笑)。
 「欧陽菲菲さん大好き~!すごいパンチ強いし、歌詞もヤバいじゃないですか。すごいと思う。欧陽菲菲さんとか、山本リンダさんみたいになりたいですね」

――やっぱりデカい声で歌う人が好きなんですね(笑)。
 「あはは(笑)。わたしがメインストリームになれるんだとしたら、ああいう感じがいい。だから、Taylor Swiftさんもすごくかっこいいと思うんですよ」

――かっこいいですよね。でも、メイリンさんからも近いかっこよさを感じますよ。
 「ちょ、恥ずかしー(笑)!」

――でも、1stの頃は所謂ヒップホップ周辺での活動が多かったですよね。その中にあって“山本リンダになる”というのは、なかなか勇気が必要ですよね?
 「そうですか?でもたしかに、以前のレーベルはヒップホップをやっている人しかいなかったので、ヒップホップに寄ろうかな?とも思ったんですよ(笑)」

――そうですよね、ラッピンなヴォーカルの曲もありますもんね。かっこいいです。
 「ありがとうございます(笑)。そういう風に褒められると、やっぱり褒められたいんで(笑)、ラップやっちゃおうかな!みたいな気になっちゃって。でも中途半端にそんなことしちゃダメだ!ってすごく思ったんですよ。わたしが本当にやりたいことはそれじゃないし、ラップやってる人に申し訳ないじゃないですか」

――我が道を行く感じですね。
 「けっこうブレ易いんですけどね(笑)。でも結局戻ってくるし、そのブレが良いことでもあると思うんですよ。色んな挑戦ができるから」

――たしかに。そうですね。
 「だから、なるべくブレないように、でもブレたり(笑)、したいです」

――これ!ってひとつ決めて、それだけやるのって難しいですよね。
 「難しいです。そういう、極めてる人って本当にすごいと思います」

――逆にメイリンさんは、こんなことを言ったら失礼かもしれないですけど、音楽一筋!っていう感じではないのかな?って思っていました。それだけやりたいわけじゃない、というか。
 「あはは(笑)。そうですね。すごく色んなことやりたいです。最近はモデルさんのお仕事をいただたくことが多くなったんで、身体にめっちゃ気を遣ったりし始めて……食べるの大好きだから(笑)。大変だけど、がんばるの楽しい!みたいな感じで逆に燃えてきました」

――でもお話を聞いてると、すべてに全力投球している感じですよね。
 「そうですね。色んなこと全部やりたい。全部がんばりたいっていう気持ちはあります。ていうか、自信とかないし、ちっちゃいハートなんで、がんばることしかできないんですよ。本当は入稿作業とかも全部まるまるやりたいんですけど、全然できないし……。さすがにそこまでやると、色々おろそかになっちゃうかな?って甘やかしてるところはあるんですけど」

――そんなことはないですよ(笑)。いすたえこさん(NNNNY)デザインの今回のアートワークも、メイリンさんの“やりたいこと”が反映されているんですか?
 「はい。ジャケットは、絶対に空抜けでピンクがバッてある感じじゃないと嫌だったんですよ。字体は絶対ゴシック、とか。すごい決まっちゃってたから、いすさんに申し訳なくて……」

――空抜けにカラーのイメージは、何かから着想を得たものなのでしょうか。
 「なんだろう……。背景は絶対に無地がよかったんですよ。でも、ただの壁でもなあ……スタジオとかもありきたりじゃないですか。だから自然に頼るか!と思って。やっぱり太陽の力ってすごいから。写真を撮ってくれた嶌村吉祥丸さんは同い歳なんですけど、直前に撮影でお会いした時に絶対この人だ!と感じてお願いしました」

――インスピレーションですね。
 「けっこうそうですね」

――ミックスを担当したJIGGさんとの作業はいかがでしたか?「KOURAKUEN」は写真集に付いていたCD-Rのヴァージョンと比べると、洗練された仕上がりになってますよね。CD-Rの、ヴォーカルか左右にパンしている感じも好きでしたけど。
 「あれ良いですよね(笑)!わたしもCD-Rのヴァージョンは気に入っていて。だから、JIGGさんにミックスをお願いすることになった時、好きじゃない感じになっちゃったらどうしよう……っていう気持ちも実はあったんです。でもJIGGさんはわたしが考えていることを全部わかってくれて、ばっちりに仕上げてくださったので、すごく嬉しかったです」

――その“好き”とか“好きじゃない”っていうのは具体的に、どういうポイントのことだったでしょうか。
 「ザラっとした、ロウファイな感じとか。最初は、ロウファイな感じにするのも“逃げ”なんじゃないかと思って、全部クリアな感じにすることも考えたんですよ。でも、それはそれで何か違うな……って思って」

――ロウなサウンドメイキングも、“やりたいこと”の一部だった、ということですよね。
 「そうですね」

ZOMBIE-CHANG / photo c<a href="https://clinamina.in/" target="_blank" rel="noopener"><span style="color: #ffffff;">Chifumi Kubota 久保田千史</span></a>

――その感触から、そもそもライヴを前提に曲を作っていないのかな?と思っていたのですが、実際はいかがでしょう。
 「そうなんですよね……。ライヴでやることはあまり考えずに作っているかもしれないです。だから、最初はライヴをやらずに音源だけ出すっていう活動の仕方も考えていたんですよ」

――ブラックメタルみたいでかっこいいじゃないですか。でも山本リンダになるためには、ライヴもがんばらないといけないぞ!みたいな?
 「そうですね(笑)。なんかとんでもない衣装とか着て、ワイヤーで吊られたりとかしたいですからね」

――唐突ですけど、メイリンさんのインスタ良いですよね。モデルさんのインスタって基本、スカした感じが多いじゃないですか。でもメイリンさんの写真はほとんどめっちゃ笑っていて、素敵です。それがすごく好きなんですけど、その笑顔の中に、何と言うか……孤独を感じる時があるんです。音楽も孤独な雰囲気だし……。独りブラックメタルみたいな(笑)。
 「ウソ~!! でも実際そうなんですよ……独りでブラブラしていることが多くて。独りで街を歩いて、聴こえてくる流行りの音楽を研究したり。雑踏の中だと、ほとんどビートしか聴こえなかったりするじゃないですか。だから、今こういうビートがあるんだな~って思ったり。孤独と言えばそうなのかもしれないですけど、寂しいだけが孤独じゃないと思うんですよ。充実した孤独もあるじゃないですか。それがすごく好きなんですよ。そもそも人と約束するのが苦手で……。前もってご飯を食べに行く約束をしても、その時になったら別に食べたくないかもしれないじゃないですか。絶対約束した時と同じ気持ちにじゃないと思うんですよ」

――わかる~(笑)。じゃあ、ライヴ行ったりするのもどちらかというと苦手じゃないですか?前売チケットとか買わないでしょ?僕けっこう、ライヴに行く途中で帰っちゃったりすることもあるから、当日券派なんですけど……(笑)。
 「わかる~!わたしも前売買わないです(笑)」

――ライヴをやる側としても大変じゃないですか?一緒にライヴをやる人を考えたりとか……。
 「そうなんですよ!だからわたし、自分の企画とか一切やったことがなくて。打ち上げのこととかも考え出すと、面倒臭くなっちゃうんですよ……。お店決めたり、何人いるのかな?とか(笑)。だから、ライヴに誘っていただいた時も、楽屋で頭から上着かぶってたりします」

――感じ悪いすね(笑)。
 「感じ悪いですよね……(苦)」

――メイリンさん今お話しただけでもすごく優しいし、すぐ打ち解けられそうなのに。
 「最近はだんだん、打ち解けられるようになってきました。友達の大切さが、ようやくわかるようになってきて」

――じゃあレコ発はどなたか誘って開催するんですか?
 「たぶん独りでやります(笑)。食事ができる会場で、食べながら楽に観ていただいて、終わったら、おなかもいっぱいだし、帰ろう帰ろう!みたいになる感じにしたいです。サッとやってパッと食べて、サクっと帰るみたいな(笑)」

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