Boris with Merzbow

Boris with Merzbow, 2016

必然性から生まれる一期一会

 1990年代よりコラボレーションを続け、2002年の『Megatone』(Inoxia Records)を皮切りに『Sun Baked Snow Cave』(Hydra Head Records / Double H Noise Industries, 2005)、『04092001』(Inoxia Records, 2005)、『Rock Dream』(Diwphalanx Records / Daymare Recordings, 2007)、『Walrus / Groon』(Hydra Head Records / Double H Noise Industries, 2007)、『Klatter』(Daymare Recordings, 2011)といった合作を送り出してきたBorisとMerzbowが、再びのコラボレート・アルバム『現象 -Gensho-』を米名門Relapse Recordsよりリリース。同作は、ドラムレス編成で新たに録音した過去楽曲を収めるBorisディスクと、書き下ろし新曲を収録するMerzbowディスクをユーザーが同時再生することで、再生環境や時間軸も併せ、その都度全く異なる“現象”を生じさせるというコンセプチュアルな作品。かつてborisとしては2ディスク同時再生作品『Dronevil』(Misanthropic Agenda, 2005)をリリースしているものの、本作ではMerzbowとの好相性と整合性をコンセプトが強調し、それぞれが培ってきた感覚との相乗効果を生む大作となっています。日本盤には音源が収められている昨年11月のライヴ“現象 Gensho”の模様からも強度が伝わるこの作品に込められた意図について、Atsuo氏(Boris)にお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2016年3月
main photo | ©Miki Matsushima 松島 幹

――『Archive 1』『Archive 2』~『NOISE』に続いて、今回もUS盤ヴァイナル3種とCD、日本盤CDとあって、デザインワークたいへんそうですね。
 「たいへんでした。自分で“日本盤は別ジャケにしましょうよ”って言っちゃったんです。ライヴ盤を追加したから、少し違う感じにしたくなっちゃった」

――BorisとMerzbowはこれまでに幾度となくコラボレート作をリリースしているので、おなじみのイメージがあったのですが、今回はいつも以上に力作になっているように思います。
 「そうですね。秋田(昌美)さんと一緒にやるようになってから、ここまで大掛かりなものは今までなかったと思います。『Rock Dream』も日本盤と海外盤を出したけど、今回は同時再生っていうコンセプトがあるから、ちょっとややこしい(笑)。音源ができるまではすごくスムーズだったんですけどね。レーベルとの話が始まると、これは可能、これは不可能、っていうのがやっぱり出てくるじゃないですか。パッケージングとかね。条件の隙間を縫ってデザインしていくのはなかなかたいへんでしたね。単純に、cmとinchが違うだけでもストレスなんで」

――レコーディング後の作業がしんどかったんですね。
 「はい。僕らのレコーディング自体は2014年の春には終わっていました。元々は、DOMMUNEでのライヴをドラムレスのショウにしよう、っていうアイディアが生まれて。でも4時間の配信時間を全部自分たちで構成することはできないので、秋田さんにゲストで入っていただいて、合体でも数曲やったんです。その日のライヴがすごく良い感じだったから、3日後にはとりあえずレコーディングをしていたんですね。その音源を最終的にどうリリースするかは決めていなかったんですけど、アイディアを練っていく段階で、Boris単体でドラムレスの音源を出すより、Merzbowとのコラボレーションとして出したほうがおもしろいんじゃないかと思って。さらに、2者をステレオ上でミックスしてしまうのではなくて、それぞれ別のディスクをリスナーが同時再生することによって目の前で“現象”が起こるような作品にしたら、さらにおもしろいんじゃない?っていう風にコンセプトが固まっていきました。2014年の10月くらいには僕らの音源はミックスまで終わっていたので、それを秋田さんにお渡しして、12月くらいにはMerzbowサイドの音も上がっていたんですよ」

――その時点からでも1年強。
 「長いでしょ(笑)?まあ、勝手なことばかり夢見てるんで。こちらのアイディアにディストリビューターが難色を示すこともある。レーベルもあの規模になると、ディストリビューターと一緒に製作をしている感じが強いんでね。アーティストやレーベルの一存では話が進まない部分も出てきます」

――そうなんですね。善し悪しを図りかねる部分もありますけど……。でもレコーディングはこれまでと同様に良い流れで進んだわけですね。具体的には、ドラムレスのBoris音源に秋田さんが音を付ける、という進行だったのでしょうか。
 「それが、そうでもないんですよ。秋田さんは秋田さんで、牛をテーマに録音を進めていた作品があって。それが合流してきたようなイメージですね。だから、それぞれの作品、それぞれのアーティストのディスクとしても成立するし、同時再生しても別の新しい現象が起こる。そういう仕組みになっていますね」

――同時再生というコンセプトにあたって、タイミングなどは打ち合わせしなかったのでしょうか。
 「全然。僕らは秋田さんにできたものをお渡ししただけですね」

――本当にそれだけなんですか。
 「はい。そもそも、“せーの”で同時に再生しなければならないという性質のものでもないんで。当初からドラムレスにしている時点で、グリッドが薄まるじゃないですか。もちろん、コードの移り変わりだとか、ヴォーカルのタイミングといったものはあるんですけど、ドラムがないことによって曲が進行するタイミング、“1拍”という縦の線が面になって、他の音との糊しろが幅広くなってゆく。今回買っていただいた人が再生するにあたっても、タイミングはその時々で違っていて良いと思いますし、音量感のバランスも毎回好きなようにしていただければいいし、もっと言えばヴァイナルなら別の面と組み合わせてみてもらってもいいし」

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