イ・ラン 이랑

이랑

――でも音楽というアートフォームが好きだからやっているんですよね。何か好きになるきっかけがあったのでしょうか。
 「特になかった。友達と遊びながら、なんとなく作って。最初に作ったのが〈緑茶ください〉だったよ。わたしの歌はそんな感じだから。フザけて、きのう観たドラマのストーリーをギター弾いて歌にしたり。誰と誰が会って、何かあって関係が変化して、どっか行っちゃって~、みたいな。それを友達に聴かせると、友達も返事をギター持って歌ったり。それで笑って、天才だ~!ってなる(笑)。AMATURE AMPLIFIERの人(YAMAGATA TWEAKSTER)が、わたしの行ってた学校のアシスタントで。あの人も映画監督になりたかったから、映画科のアシスタントやってて。学校のフェスティヴァルとかでAMATURE AMPLIFIERやってるのを観て、おもしろかいから歌おうと思ってカヴァーするようになったり。1曲作ったらすぐメールで周りの友達全員に送ってた。作って、録音して、送って、答えが来るまでちょっと待って、返事が来たらおお~!ってなる(笑)」

――フリースタイル・バトルみたいだね(笑)。
 「あはは(笑)。全部遊びながらだよ。クオリティのことは全然考えなかった。だから、韓国でイ・ランの音楽の良くない話をする人は、いつもそれだよ。クオリティが良くないとか、ギターの演奏が下手とか。わたしそれ全然考えたことないの(笑)。巧く弾きたいとか、全然興味ないから」

――でも『ヨンヨンスン』の時と比べると、格段に上手になってますよね?
 「本当?残念(笑)!練習も全然してない。ライヴがあったら、その前に1回くらい。ライヴもセットリスト考えなくて。サイコロで決める。サイコロの数字でアルバムのトラックリスト見て、歌うのが難しい曲だったらまたサイコロ振って、うん、オッケーです!みたいな。だからライヴも全然しないよ」

――でも以前、2013年かな?初めてライヴを観て、良いなあと思ってすぐCD買ったんですよ。
 「ありがとー!わたしはライヴの時、曲を完璧に見せることより、MCめっちゃ考える。どのウケる話しようかなあ~って(笑)」

――ウケる話ね(笑)。
 「バカなの~」

――バカじゃないですよ(笑)。音楽やって、漫画描いて、映画もドラマ作って、大忙しじゃないですか。
 「先生もやってるよ。仕事しかすることがない」

――休日はどんなことしてるんですか?
 「お休みはほとんどないよ。3週間全然お休みがなくて、1日だけ休みとか。そういう日は自分の仕事場に行って座ってる(笑)」

――座ってる(笑)。
 「うん(笑)。仕事場は8人で一緒に使ってて、わたしと、わたしの映画の先輩と、小説家のお姉さんと、アプリ作るプログラマーの男の子もいて、デザイナーさんもいて、詩人が2人いて……」

――そんなに多彩な皆さんがいらっしゃったら、色々なことができそうですね。
 「でも全然一緒には何もしない(笑)。みんな別々に座って、たまに真ん中のテーブルでカードゲームする。みんなけっこう有名な人たちで、雑誌のインタビューとか受けるような人たちだから、みんな検索したら出てくる。でもみんなフツーにボサボサで座っている。わたしも今日は化粧したけど、普段はボサボサでスッピンで座ってるから、化粧して仕事場に行ったら、みんな“何してんの?”とか“人間になった!”とか言うよ。みんな大学とかで先生もやってるから、週に1、2回は化粧とかイヤリングとかして、ジャケットとか着て、みんな人間になるよ」

이랑

――(笑)。ランさんはどんなことを教える先生なんですか?
 「わたしは映画の作り方と曲の作り方を教えてる。小中高校生から大人の人まで全部教えてる。小学校に行ったり、大学で教えたり。教えるのが上手で人気のティーチャーだから、色んなところで先生やってくださいって言われるよ(笑)」

――教えるの楽しいですか?
 「あんまり。本物の小学生の先生とか見てると、わたしの仕事じゃないって思うし。本物の先生は、子供たちに教えるのを本当にがんばってる。わたしは、教えるのが上手な自分だけで満足(笑)。わたし天才だなあ!の感じで。だから長い期間教えることができない。本物の先生は、子供たちがうるさくて、雰囲気が悪かったら、“はい!みんな!”とかやるじゃん。わたしは全然やらない。インターネットで検索させたら、わたしの名前出るじゃん?こんなに有名な人なのに、時間もったいないしぃ、全然教えたくないんでぇ、って言っちゃう。あんたたち、Twitterのフォロワー何人いるの?みたいな(笑)。」

――超エラそう(笑)。
 「そうすると、子供たちびっくりして、真面目になるよ。本当は、教えないとお金もらえないし、どうしよう、って感じだけど、余裕な感じで(笑)。次の週行ってもちゃんとなってるし、わたしが学校から帰る時はみんな窓からわー!イ・ラン先生~!ってなるよ。絶対人気だよ。子供は、ネットで検索して出てくると本当に有名人だって思うから。アイドルみたいな(笑)。検索して、“先生Wikipediaに出てますね!”とか。子供たちはそれを覚えて“イ・ラン先生は1986年生まれ、デビュー・アルバムは2012年の『ヨンヨンスン』”とか言ってくる。よく覚えたね~って褒めるよ(笑)」

――なんちゅー先生だ(笑)。収入源はその、先生の仕事がメインなんですか?
 「お金は授業があると安定するけど、だいたい不安定。あとは本を契約したり、監督の給料とかもらったりする」

――YAMAGATA TWEAKSTERではダンサーもやっていますよね。ミュージック・ビデオもRosasみたいなコンテンポラリー・ダンスを取り入れてたり。
 「うん、新しいビデオもダンスだよ。芸術大学だったから、興味があったらすぐ勉強ができる。わたし最初2、3年くらいは映画にあんまり興味がなかった。イ・チャンドン監督が好きで入っただけで。だから他のみんなとテンションのギャップがすごくて。みんな“映画っ!!!!!”みたいな感じなんだけど、わたしは“映画……”みたいな感じで、ずっと専攻じゃない勉強をやってたよ。韓国伝統舞踊とか、現代舞踊とか、お芝居とか、美術とか、アニメーションとか、全部。色んなクラスをやって、大学3年生になって映画に興味が湧いた。それまでやっていた全部を混ぜて出来るのが映画だって。映画エラいな~って。映画やったら天才になるよ、って思った。わたしが天才なことを映画で見せる!音楽だけだと、映像はないからね。だからビデオ作るの楽しい」

――じゃあ例えば、ミュージック・ビデオの拡張版みたいな感じで、アルバムの収録曲を映画にするとか、そういうことも考えたりします?
 「ああー。わたしが作るものは、エッセイとか歌の歌詞とか、映画の台本とかも全部同じことから始まるけど、最初からジャンルのチョイスはしない。それがどうなるかは最後に考えるから」

――最初に思いついたものが、どれかになっていくんですね。
 「そう。だから、わたしから見たら全部ひとつに見える。たまに、全部同じじゃん、全然おもしろくないな、って思ったりする。漫画も、歌も、エッセイも、イ・ランて全部同じじゃん、てみんな思うかな?って。全部同じなのに何で別々にやるの?って」

――色々なメディア / フォーマットで実験している感じなんでしょうか?
 「あんまり考えたことないよ。始まりは同じだけど、構成の仕方のレベルが違うかな。曲を作るの時は日記みたいな感情で、あんまり構成を考えない。映画はもっと構成のレベルが高い。材料は同じなんだけど、構成をどれくらいやるかで変わってくる。時間のかけ方も違うじゃん?歌は15分で完成できる曲もあるけど、アルバムを作るためにはがんばってミキシングとかもやったり。映画はもっと時間がかかるし。漫画は音楽と映画の中間くらいかな」

――漫画の鳥の絵、すごくかわいいですよね。
 「鳥が好きです。何で鳥が好きかは4コマ漫画に描いたけど読んだ?アヒルは水面ではめっちゃ余裕だけど、水の下ではめっちゃがんばってるじゃん。それが好きで(笑)。それ、わたし。中ではめっちゃがんばって色々考えてるけど、外は何ででわたしこんなに天才?みたいな(笑)。そんな感じ」

――その感じ、先程の韓国の話にも置き換えられそうですよね。外から見るとめっちゃ元気だけど、水面下は地獄っていう。
 「ヘル朝鮮。“ヘル朝鮮のシンガー・ソングライター”ってちゃんと書いておいてくださいよ。わたし今、女性の漫画家と2人で『ヘル朝鮮ガイドブック』っていう本を書いてる最中だよ。色んなところを旅行して、そこがなぜヘルかを説明する本。わたしとのその子のキャラがいるんだけど、2人とも韓国でがんばって生きても大変だから自殺して、地獄で出会うよ。神様に“何でそんなに美しい国で自殺してきたの?”って言われて、“いえいえ、全然ヘルでして、わたしたちが証明します!”ってまたヘル朝鮮に戻って、証明するために行ったり来たりする漫画だよ」

――ヤバそうですね。
 「ヤバい。最近はそのために1ヶ月に1回旅行しに行ってる。行って、見て、ああー、ここがヘルだって調べる。韓国は外国人だけ入れるカジノがたくさんあるんだけど、江原ランドっていうカジノだけは韓国人も入ることができる。そこでみんなめちゃくちゃになるよ。江原ランドの周りは自殺した人が残した車ばっかり。めちゃめちゃ自殺が多いよ。行ってみたら、映画で知ってるような綺麗なカジノの風景じゃなくて、みんなボロボロの服で、臭くて、おじさんおばさんばっかり。みんな無表情でお金めっちゃ出して、なくして、自殺する」

――それはヘルだ……。
 「うん。めちゃくちゃヘル。江原ランドの名前は、江原道っていう地域だから付いてるんだけど、道民は1ヶ月に1回しか行けないの。江原道民が行けたら、江原道全部が崩壊するから。だけど江原道民は住所とかをウソついて行くから、江原道民ばっかりいる。けっこうソウルから遠いから、結局江原道民ばっかりカジノ行って、江原道は終わった。『千と千尋の神隠し』に出てくる都市みたいな。お店も全部閉まってて、暗くて、誰もいなくて。カジノの中に入ると、その日は4,000人以上いたよ。夜中に。外は真っ暗で何もないんだけど。みんな無表情で、静かで、マシンの音だけ。めっちゃヘルです。そんなところに行って、ヘル朝鮮の説明するよ。ヘル朝鮮ツアー」

――そうなんですね……。隣の国なのに、知らないことたくさんあるなあ、って思います。
 「たぶん日本もそうでしょう?」

――うん、ヘル日本たくさんありますね。
 「わたしたぶん、日本で生まれたらヘル日本の本作ると思う。超楽しい~!はちょっとウソじゃないかな?と思って。本当のヘルのことを、ちゃんと話して、それから楽しい気持ちになれるんじゃないのかな。元々みんな人生辛いし、大変だから」

――マイナスからだから、伸び代はたくさんあるということでもありますよね。
 「そうそう。ちゃんと話したら、めっちゃウケるじゃん。結局カジノでも、わたしめっちゃ楽しんでた。めっちゃイイおじさんと出会ったり。めっちゃ臭いんだけど、わたしみたいなカジノ処女のこと守ってくれるし、めっちゃ優しかったよ。でもカジノ依存。だから結論としては、システムがヘルなんだって思ったり。人は悪魔じゃない。人はみんな可哀相で、結局は国とか、政治とか、教育とか、システムがヘルで、人が死にそうになる。ヘルなところに行っても、みんな優しい」

――そこは哀しいと言えば哀しいし、希望と言えば希望ですよね。
 「そうだよ。そういう話は、友達にしか言えないじゃん?でも作品とか作ったら、もっとたくさんの人に見せることができるから。みんなが読んで、聴いて、泣いたかどうか聞いたら、楽しい。安心する。“サインしてくださ~い”って言われたら、“自殺しないで”って書くよ」

이랑 bandcamp | https://langlee.bandcamp.com/
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