イ・ラン 이랑

이랑

――そういうところに、希望を見出したりはしないんですか?
 「そうだね。友達がいなくなっても、新しくエラい人と会うと、その人とやりたいな、って気持ちが出るから。ちょっと治った。でも寂しい。監督さんたちとか仕事で会う人は、友達ではないから。みんな忙しくて仕事ばっかりしてるし、わたしもめちゃくちゃ忙しくて、余裕作って会うことがあんまりできない。仕事でまた会って、楽しめるけど、友達じゃないのはちょっと寂しいなって思う」

――本当は友達とできたらベスト?
 「うん。最近死んだ友達は14年の付き合いだったから、14年分のギャグが通じたけど、新しく会う人は今から作るじゃん?それを作る力もあんまりないし。わたしも今仕事ばっかりだから。大変だ」

――それ聞いてると辛いですね……。
 「だけど、音楽作ったら楽しいし、録音したらまた楽しいし、映画作る時も楽しんでる」

――それは、完成するのが楽しい?それとも過程が楽しい?
 「過程。だからこのアルバムが出る時も、全然楽しみじゃなかった。完成すると無感覚になる。『ヨンヨンスン』が出た時もそうだったし、映画が公開される時も全然何も感じなくて。作るプロセスは全部楽しんでたけど、みんなはそれを全然知らないじゃん。だから出来上がった気持ちより、その前のほうが全然楽しい」

――そうなんですね。僕だったら、もしこんな素敵な作品がこう、パッケージになって売られているのを見たら、嬉しくなっちゃうと思う(笑)。
 「全然。デザイナーさんと、本にすることを考えていた時のほうが全然楽しい。見るより、考える時のほうが、やったー!みたいな感じ。天才じゃん!みたいな。チェロの人とやった時にびっくりして泣いたり(笑)。“平凡な人”の歌(『神様ごっこ』収録)あるじゃん?最初にドラムを録音して、それを聴きながらギター弾いて、歌ったんだけど、ドラムの録音の後に彼氏と別れたよ。わたしは別れた彼氏のドラムを聴いて録音するから、寂しくて泣いて(笑)。歌の歌詞も、“わたしが愛する家族を探す”とか歌うから、ドラムの録音の時のことを思い出して泣いて歌って。後で聴いたら、鼻をすする音とか入ってて、ミキシングの時に社長さんがキタネ~って言って消したりした(笑)。そういうのとかめっちゃ楽しい。綺麗になってから聴いたら、良く出来たな、って思うだけ。作るの時はめっちゃ色々あるけど。〈世界中の人々が私を憎みはじめた〉の曲も、インプロヴィゼーションでやって、ワンテイクで完成になった。チェロの人は天才で、わたしも天才。韓国インディ・ミュージック・シーンの歴史的な瞬間だよ(笑)。朝2:00とか3:00くらいで。終わって煙草吸って。周りが静かなホンデの中で」

――録音された雨乃日珈琲店とは、どんなご関係なんですか?
 「雨乃日珈琲店は、清水さんていう人が夫婦でやってるコーヒー屋さんなんだけど、わたしが日本に初めて来たきっかけが清水さん。清水さんはイ・ランの歌が好きで、自分の結婚式のパーティに招待してくれたの。その時に、せっかくの良い機会だからって、友達が金沢と松本、東京でライヴ作ってくれたの。清水さんが日本に行くドアをオープンしてくれた。めっちゃ楽しかった。テンションめっちゃ上がったよ。その時は日本語全然わからなかった。『スマスマ』観たから、“オーダー!メイン料理とチョコレートのデザート!”は言えたけど。日本で友達と出会って、めっちゃ喋りたくなったから、帰ってから勉強を始めたよ。留学した友達が教えてくれて。今はすごいペラペラ。でしょ?」

――うん、すごいと思います。
 「日本語でインタビューするとか、すごくね?」

――すごくね?って(笑)。やっぱ天才ですね!
 「あはは(笑)。でもインタビューやってる時は楽しいけど、後で読んだら、ふぅ~ん、な感じ」

――(笑)。
 「何でもプロセスが楽しいんだと思う」

이랑

――でもそうかもしれない。僕も自分で書いた原稿って、後からほとんど自分で読まないし……。
 「そっかー。わたしが書くことは映画だと台本だから、めっちゃ読まないと仕事ができない。撮影監督も、美術監督もそれで仕事するから。書く時は色んな気持ちで泣いたり笑ったりするけど、スタッフのみんなに説明する時は説明会みたいになる。設計図とか、ロボット掃除機の箱の中に入ってる取扱説明書みたいな感じ」

――音楽も、言わばそういう風に作ってるわけですよね。なんだか不思議な感じです。
 「わたしは全然音楽わからない人だから。ギターのコードも全然知らないし」

――でも音楽というアートフォームが好きだからやっているんですよね。何か好きになるきっかけがあったのでしょうか。
 「特になかった。友達と遊びながら、なんとなく作って。最初に作ったのが〈緑茶ください〉だったよ。わたしの歌はそんな感じだから。フザけて、きのう観たドラマのストーリーをギター弾いて歌にしたり。誰と誰が会って、何かあって関係が変化して、どっか行っちゃって~、みたいな。それを友達に聴かせると、友達も返事をギター持って歌ったり。それで笑って、天才だ~!ってなる(笑)。AMATURE AMPLIFIERの人(YAMAGATA TWEAKSTER)が、わたしの行ってた学校のアシスタントで。あの人も映画監督になりたかったから、映画科のアシスタントやってて。学校のフェスティヴァルとかでAMATURE AMPLIFIERやってるのを観て、おもしろかいから歌おうと思ってカヴァーするようになったり。1曲作ったらすぐメールで周りの友達全員に送ってた。作って、録音して、送って、答えが来るまでちょっと待って、返事が来たらおお~!ってなる(笑)」

――フリースタイル・バトルみたいだね(笑)。
 「あはは(笑)。全部遊びながらだよ。クオリティのことは全然考えなかった。だから、韓国でイ・ランの音楽の良くない話をする人は、いつもそれだよ。クオリティが良くないとか、ギターの演奏が下手とか。わたしそれ全然考えたことないの(笑)。巧く弾きたいとか、全然興味ないから」

――でも『ヨンヨンスン』の時と比べると、格段に上手になってますよね?
 「本当?残念(笑)!練習も全然してない。ライヴがあったら、その前に1回くらい。ライヴもセットリスト考えなくて。サイコロで決める。サイコロの数字でアルバムのトラックリスト見て、歌うのが難しい曲だったらまたサイコロ振って、うん、オッケーです!みたいな。だからライヴも全然しないよ」

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