Q: And dope? A: And dope.
取材・文 | 久保田千史 | 2011年11月
翻訳 | 国田ジンジャー
main photo | ©Teppei Kishida 岸田哲平
――ニュー・アルバム、素晴らしい仕上がりですね!前作よりも、例の植物の含有量が多めな気がしたのですが。
「(笑)。そうだね、正解。全くその通り。なんでそう思ったの?スローなパートが増えたから?」
――いえ、サウンド・メイキングから受けた印象です。
「そうか。今回はノイズの要素が増えてるからなのかな。“やってみたらどうだろう?”じゃなくて“やろう!”がBRUTAL TRUTHのモットーで、何でもトライするから音楽的にもどんどんクレイジーになっていくんだよ」
――BRUTAL TRUTHとあの植物は密接な関係にありますよね。
「うん。俺たちの音楽は違う世界からやってきたものなんじゃないかな、たぶん。人間とも動物とも違う感じだし。だから俺はエイリアン・グラインドコアって呼んでるんだ。他の惑星のグラインドコアだね。まあ、まとめると、超吸ってるってことになるかな」
――超吸ってるバンドって、所謂ストーナー・ロックのカテゴリーだけ見ても、スローな楽曲を演奏するバンドが多いですよね。BRUTAL TRUTHはハイスピードです。主観時間が遅くなるから速い曲をプレイしようとするとめちゃめちゃ速くなる、というロジックは理解できるのですが、そういう風に演奏するのって生理的に難しくないですか?
「それはあれだろ、吸って、ビール飲みながらテレビ観てると、ビール持ってるのを忘れちゃうようなタイプの奴のことだろ。俺は持ってかれ過ぎるタイプじゃないから、グラインドコアをやると決めたらグラインドコアがちゃんとできるんだ。肉体的制約は全くないね」
――ハイスピードなものを摂取してハイスピードなプレイをする……例えばCAPITALIST CASUALTIESとか……そのほうが無理がないような気がしちゃうんですけど……。
「そんなことないよ。ブラストしまくってるブラックメタルの連中とか、かなり吸ってる奴多いよ。ミスティックな雰囲気はハイなところから出てくるんじゃないかな」
――なるほど……。これまで、どの作品の制作時が一番吸っていましたか?
「Billy Andersonと一緒に作った『Sounds of the Animal Kingdom』じゃないかなあ。あのときはモーレツに吸ってたよ。今聴くと、吸い過ぎてたせいでプロダクションがテキトーになっちゃってる気がするけどね。パンチがないっていうか。Billyが悪いわけじゃないよ、もちろん。そりゃバンドの責任だけど。Billyと一緒に楽しみ過ぎちゃったんだな」
――僕はあのプロダクションも好きですよ。スモーキーで。
「そっかそっか。そうだな、スピーカーから煙が出てるような感じだもんな(笑)。うん、それも悪くはないんだけど、もっと直球のミックスのほうが良かったかなあって、今は思ってるんだよね。スモーキーな音が好きだったら、俺が最近始めたNOKTURNAL HELLSTORMってバンドを聴いて欲しいな。ファストで超ブルータルなブラックメタルなんだけど、かなりブッとんでてドリーミーなんだよね。絶対気に入ると思うよ」
――ブラックメタルは、テープでワンマイク録音なんていう作品がざらにあるじゃないですか。そういうサウンドってドープに通じると思うんです。Lilkerさんは昔からブラックメタルに造詣が深いので、その感覚がBRUTAL TRUTHにも反映されているのかな、と考えたりするのですが。
「いや、BRUTAL TRUTHにはなるべくブラックメタル風味を混ぜないように気をつけてるんだ。でもまあ、気をつけるっていうか、BRUTAL TRUTHの曲作りに関しては、もはや他の音楽からの影響云々っていうのはなくて、至ってナチュラルに進むんだよね。アイディアは音楽よりも日常から、例えば車の運転とかさ、そういうところから自然に湧いてくるわけ。その時々の感覚を覚えていればBRUTAL TRUTHで使うし、忘れちゃったら、まあ忘れちゃったでいいや、って感じ」
――そういうときってやっぱり一服してることが多いんですか?
「う~ん、曲作りのために一服するのと、普段の生活で一服するのと、ちょっと違うからなんとも言えないかな……。俺は今ロチェスター(ニューヨーク州)に住んでるから、レコーディングする時はフィラデルフィア(ペンシルヴェニア州)に住んでるRich(Hoak)なんかは、わざわざそのためだけに飛行機で飛んできてくれるわけ。だから曲作りのときはしこたまキメて、没頭する。普段は、毎日の仕事の疲れから解放されてリラックスするために吸うんだな」
――お仕事は何をされているんでしょう。
「超フツーの仕事だよ。パーティ・グッズのお店で働いてるんだ。シーズンだとめちゃめちゃ忙しいけど、それ以外はわりと自由が利くからツアーにも出られる。ハロウィンが過ぎたからこうして日本にも来られたんだ。暇な時期は妻や猫と遊べる時間がたくさん取れてイイよ」
――あの植物の効果を発見したのは、いつ頃だったんですか?
「14歳のときだったと思う。姉貴に教えてもらったんだよね(笑)。音楽のために吸うようになったのはNUCLEAR ASSAULTを始めてからだけど。アメリカだとあまりイリーガルっていう感覚がなくて、結構みんなフツーにやってるもんなんだ。カリフォルニアだと、頭痛薬と同じように合法的手段で簡単に買えたりするよ。(お土産に筆者が持参したお菓子を指して)こんな感じで」
――そうなんですか……。でも、DEAがヘリコプターを使って畑から根こそぎ押収する摘発の様子を、報道で観たことがありますよ?
「俺が思うに、アメリカは壮絶に馬鹿なんだよ。今各自治体は財政的にすごくキツい状況でしょ?特にカリフォルニアなんかそうだよね。リーガライズした上で課税すれば自治体の収益になるのに、製薬会社、煙草 / アルコール産業からの圧力や癒着で踏み切れずにいるんだ。摘発は、国民に悪いものだと印象付けて、そういった業界にアピールする意味があるんだよ。イリーガルのままだからこそ、裏の取引にまつわるトラブルが発生するのにさ」
――日本では現在、一般的に、あらゆる薬物と一絡げにして完全なる“悪”として認識されています。そういう状況についてはどう思われますか?
「日本でイリーガルなのはよくわかっているし、日本にいれば俺はそのルールを尊重するよ。こうして話してはいるけど、決してみんなにお勧めしているわけではないからね。でもBRUTAL TRUTHの音楽の一部であるのは間違いないから、理解してくれたら嬉しいけど。実は俺、最近ちょっと量を減らそうかなと思ってるんだ。物忘れが酷くなるからね(笑)。お酒と同じように嗜む程度にしようかなって。お金もかかるから妻も減らしてほしいと思ってるんじゃないかな(笑)」
――奥様はお吸いにならないんですか?
「出合った頃はよく一緒に吸ってたけど、結婚してからは夜お酒を飲みながらちょっと吸うくらい」
――Lilkerさんがあまり吸わなくなってしまうと思うと、ちょっと寂しい気がします……。
「まあ、今も家ではいいネタが待ってることだし、しばらくは吸い続けるだろうね、実際は(笑)」
――(笑)。これまで聴いてきた中で、アレがあるとより良く聴こえるな~、という音楽があったら教えてください。
「MONSTER MAGNETのアルバムとかイイと思うよ。あとPINK FLOYD。彼らの作品は最初からそういう風に作られてるようなもんだからさ。アレがあったほうが良く理解できると思う。でも、しつこく言っておくけど、日本のみんなにはお勧めしてるわけじゃないからね」
――最近出会った作品では?
「IMMOLATIONの『Majesty And Decay』。俺が一番好きなデスメタル・バンドなんだけど(取材時もMr. LilkerはIMMOLATIONのTシャツを着用。もちろん袖カットオフ)、ダークで、鬱っぽいところがイイんだよね。それからNAZXULの『Iconoclast』。オーストラリアの友達がやってるブラックメタル・バンドなんだ。これは聴かないとわからないと思うんだけど、とにかく違う世界に連れて行ってくれる。俺、あんまり音楽聴かないから、こういう質問は難しいよ……」
――では、Lilkerさんの一番好きなリラックス・タイムの過ごし方を教えてください!
「仕事がない日に、ネットしたり、2時間くらい昼寝したり、猫と遊んだり。そういうときに一服するのが最高だよね」