三富栄治

三富栄治

何かを作るなら、良い連鎖が起こるもの

 竹村延和主宰Childiscより3枚のアルバム『Futuredays』(2003)、『1st』(2005)、『PLANET』(2007)をリリースしてきたコンポーザー / ギタリスト・三富栄治が、約6年ぶりの新作『ひかりのたび(Dream of Light)』を心機一転Sweet Dreams Pressより9月にリリース。同作は、ソロ・ギターをメインに独り宅録で紡ぐミニマムな作風の印象が強かった過去作とは異なる風合い。EGO-WRAPPIN’、オオルタイチ、トウヤマタケオ、yumbo等との共演やtriola、石橋英子ともう死んだ人たちなどのメンバーとして知られる弦楽器奏者・波多野敦子をはじめ、Noa Noaのフルーティスト・上野 洋、NRQやyojikとwanda、Emi Meyerなどを支えるコントラバス奏者・服部将典、トクマルシューゴやスッパマイクロパンチョップのバンドで活躍する岸田佳也ら百戦錬磨のプレイヤーを演奏陣に起用し、録音は大城 真、AMEPHONEが担当。自身が出演する映画『TRAIL』(監督 波田野州平)で共演した画家・山口洋佑によるアートワークと詩人・藤本 徹によるテキストと相まって、シネマティックな感覚を伴うスモール・チェンバーな力作に仕上がっています。現在のスタイルへと至った経緯を、三富氏に伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2013年9月
main photo | ©Ryo Mitamura 三田村 亮

――今回の作品は、“ギタリスト”三富栄治の印象とはかなり違う作品になっていますよね。びっくりされる方も多いのではないでしょうか。
 「ちょっと違うことがやりたくなったんですよね」

――ソロ・ギターはやり尽くした感じ?
 「全然やり尽くしてはいないですよ。ただ、ギターのみで自分が思うような音楽を作るのには、時間がかかり過ぎると思って。あれを深めるのには、本当に向き合って、引き出しを拡げないと。それはすぐに出来ることではないから。それなら、曲はシンプルな構成でも、別の楽器を入れることで色付けして、華やかにする方が、比較的作りやすいと思ったんです」

――それは別にインスタントな気持ちというわけではないんですよね。
 「そうですね。アンサンブルはずっとやってみたいと思ってました。今までは、1本の線だけで良い曲を作るというのを、少ない色だけでやってたんですよね。線をどう綺麗に描けるか。後から見てもそれに味があるか、とかね。それがある程度出来れば、そこに何か載せてもそんなに悪くはならないだろうと。肉付けに挑戦してみたら、そこから学べることもあるだろうと思ったんですね。ソロ・ギターのアルバムは作りたいんですけど、1本の線をより複雑にするっていうのは、まだ出来ない。昔より少し耳が肥えてきたから、ギターものを聴いても、以前よりもそういうことのすごさがわかるようになってきたというか」

――具体的にはどんなものを聴いて?
 「Jim Hall、Johnny Smithとか」

ひかりのたび
三富栄治 ‘ひかりのたび’, 2013

――ジャズ・ギターがお好きなんですね。
 「そうですね。Noël Akchotéとか。あとは鈴木惣一朗さん(ワールドスタンダード)のレーベルから出ているDon Peris(THE INNOCENCE MISSION)のアルバムをよく聴いてました。クリスマス・ソングを弾いているやつなんですけど。そういうのを聴いていると、まだまだだなって。ちゃんとギターの教育を受けたわけでもないし、好きで弾いて曲を作っているだけだから、もっと研究が必要だと思うんですよ。それをやり始めちゃったら、とてもじゃないけど1年や2年じゃ出来ないから」

――前作から6年が経過していますが、アルバムを作りたいと思ったのはここ数年ということ?
 「いや、ずっと思ってましたよ。『Planet』を作り終えた時には、やり切った感があったんです。でも同時に、そこまでやって初めて、生活について考え始めて(笑)」

――生々しいすね(笑)。
 「うん(笑)。それでウェブの仕事を始めて、制作会社を2つ経てからフリーになって。フリーになったら、うまくやれれば自分の時間が作れて、アルバムも作れるかなと思ったんですけど、フリーはフリーで余裕こいてられないじゃないですか」

――むしろフリーの方が大変な部分は大変なんじゃないですか?
 「そうなんですよね。それでやっぱり2、3年あっという間に潰れて。そうこうしているうちに4年くらい経ってるわけですよ」

――それは研究してる時間ないですね……。
 「夢がない感じですみません(笑)。かっこいい話が全然なくて」

――夢だけじゃやっていけないですから(笑)。
 「そうね(笑)。そんなことをしている間にgallery SEPTIMA(東京・立川)ができて、(竹下)慶さん(aka MOON FACE BOYS / フムフム, my pal foot foot)やシバタさん(フムフム, shibata & asuna)なんかを通じて出演するようになったんです。そこで今までとは違う人たちと知り合う機会が増えたんですね。SEPTIMAオーナーの波田野(州平)くんが映画に誘ってくれたり、(松井)一平くんと知り合ってTEASIに入ったり。その中でSweet Dreamsの福田(教雄)さんがアルバムを作るならうちから出さない?と声をかけてくれて。ちょうど生活もまあ、落ち着いてはきたし(笑)、今が作れる流れなのかなって。その時に自分がやりたかったのが、これまでのギターものの延長ではなくて、アンサンブルだったんですよ」