DJ Rashad

DJ Rashad

みんなに愛情を返したい

 デトロイトとは一味異なる進化を続けてきたUSシカゴ産ゲットー・テックをベーシックに誕生したダンス / ベース・ミュージック・カテゴリ、ジューク / フットワーク。Mike Paradinas(µ-Ziq)主宰Planet Muによるコンピレーション『Bangs & Works』(2010)のリリースと前後して認知度を高めた同カテゴリは、今や世界中でプレイされるに至り、MACHINEDRUM『Room(s)』が象徴するようにシーン外へも盛んに吸い上げられています。ダブステップ過渡期と同様、オリジナルの意義が再びクローズアップされるべきフェイズへと突入する中、黎明期より活動する重鎮・DJ Rashadが、Kode9率いる英Hyperdubからフル・アルバム『Double Cup』をリリース。ジューク / フットワークの真髄を崩すことなく、より開かれた音楽性を実現させた内容です。昨年10月に初来日を果たしたTRAXMANに続き、2014年1月にはHyperdubの10周年記念ショウケース“Hyperdub 10”での来日が決定している“Mr. Teklife”に、ジューク / フットワークとの関わりやアルバムについてお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2013年10月
通訳 (thanks!) | 青木絵美

――ジュークとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。
 「“ジューク”は、そう呼ばれる以前は“ゲットー・ハウス”という音楽で、俺は1999年頃にゲットー・ハウスのDJをしていたんだ。DJ Gant ManとDJ Ponchoが“Juke It”というトラックをリリースしたのがきっかけでフットワーク / ゲットー・ハウスがジュークと呼ばれるようになったんだけど、俺たちは当時ちょうどそのシーンにいたんだよね」

――あなたにとってのジューク / フットワークの魅力を教えてください。
 「ジュークの魅力は、どんな曲でもビートを160にしてエディットすれば、その音で遊べるという点。フットワークの魅力は、自由に自分を表現出来ること。ベースがハードでエネルギッシュであれば、それ以外のルールは無いから。どちらもBPMは160なんだけど、昔はジュークとフットワークは少し違う種類の音楽のことを指していて、ラジオ・フレンドリー、DJフレンドリーなコマーシャル寄りのものをジュークって言っていたんだ。そうじゃない、頭おかしいヘヴィなベースが入ってるのがトラックス(フットワーク)。今では“フットワーク”と言えば音楽のこともダンスのことも指してるけど」

――あなた自身もフットワークを踊ることがある?
 「最近はもう踊らない(笑)。踊るのは10年くらいまえに止めちゃったよ」

――現場以外ではどんな音楽を聴くことが多いですか?
 「ラップ、ヒップホップ、ソウル、トラップだったら何でも聴くね」

――ジュークの魅力のひとつに、ポリリズミックなトラックメイクが生む効果が挙げられると思います。それはガチで狙って作っているのでしょうか。それとも作っているうちに発生してくるもの?
 「狙ってそういうリズムを作っている時もあるし、自然に出来上がるときも多いな。場合によるね。その場のヴァイブスとか、その状況でやろうとしていることによるけど」

――ヴォイス・サンプルの使い方には拘りがありますか?
 「サンプルソースを選んだら、一番キャッチーなところを切り取って、細かく刻む。それを組み合わせて、自分に語りかけているようなサウンドに作り変えるんだ。俺のメソッドとしてはそういう感じ」

DJ Rashad

――今回はHyperdubからのリリースですが、Kode9からのオファーはどのような内容だったのでしょうか。
 「すごくプロフェッショナルで、簡潔にまとめられていたよ。他のプロフェッショナルなレコード会社と変わらない内容だと思う。俺たちのやりたいように自由に表現させてくれるしね。名前は出さないけど、“こういうサウンドにしたい”というような基準を持ちかけてくるレーベルも存在するんだよ。何曲かレーベルに提出すると“この曲はもう少しこうした方が良くなる”とか言ってきたりさ。全てのレーベルがそうだっていうわけじゃないけど、俺たちは過去にそれでレーベルと揉めたことがあったから。そういう点でもKode9のレーベルはすごく良いと思う」

――彼の音楽についてはどう考えていますか?
 「最高だよ(笑)。特にフットワークに関して彼は天才。それに尽きる」