Interview | COFFINS


Nine Cocoons Of Dens To F 東京篇

 熾烈を極めた1990年代関西のピットより現れ、メタリックなモッシュコアの重鎮として君臨しながらも、当初からの異端ぶりを徐々に拡張しつつ減速し、クラスティなムードも薫るブルータル・エピック・ドゥームへと進化した大阪のSECOND TO NONEと、世界を股にかけた活動でHOODED MENACE、SEVEN SISTERS OF SLEEPら後進からのプロップスも厚い東京の当代オールドスクール・ドゥームデス巨人COFFINSが、両雄のアナグラム(字余り)を冠したヘヴィウェイト・スプリット作『Nine Cocoons Of Dens To F』を2月21日にリリース。出自 / スタイルは異なれど、ドゥーム / スラッジを軸に暗黒面で通低するトータル・ダークネスのマスターピースとなっています。同作について、双方に95%同内容の質問状でお話を伺いました。

 本稿“東京篇”では、ファウンダーUchino氏(g, vo / 以下 U)、同氏とはOOZEPUSでも活動するSatoshi氏(dr / 以下 S)、SUPER STRUCTURE、WEEPRAY、WOUNDEEPでのプレイでも知られるAtake氏(b, vo / 以下 A)、ヴォーカリスト・Tokita氏(以下 T)のCOFFINSフルメンバーにお答えいただいています。


取材・文 | 久保田千史 | 2018年2月


see also SECOND TO NONE | Nine Cocoons Of Dens To F 大阪篇


――まず人的な接点を教えてください!かねてより交流があったのでしょうか。

U 「SECOND TO NONEという名前はもちろん知ってましたが、バンドとしての交流はそれまでほとんどなかったんですよ。個人的にメンバーを知ってたりはしたんですが、実は対バンも数回くらいで」
T 「すごく好きなバンドで、音源はずっと聴いてましたけど、交流は本当に最近になってからのことですね」
S 「初めて知ったのは2009年のデモで、自分がCOFFINSに入って初めて対バンしたのが2012年7月のBUSHBASH(東京・小岩)でした。交流自体は全くなかったですが、アタケさんが入ってから急速に深まりましたね」
A 「COFFINS加入前にハードコアのバンドをやっていて、1度対バンしたことあるんですが、大先輩でしたので当時は挨拶させてもらう程度でした。怖かったので(笑)」

――音楽の好みに関する接点はたくさんありそうです。例えばWINTER。COFFINSはWINTERウォーシップを公言していますし、SECOND TO NONEはカヴァーもしています。でもそれぞれ影響を受けたポイントが微妙に異なる気がするので、WINTER持論を聞かせてください!
U 「そもそもCOFFINSはWINTER好きが高じて今の形で再スタートしたようなもんなので、何から話せばいいのやら(笑)」
A 「あのBPMというか、演奏はかっちりしてないんだけど奇妙なグルーヴが出過ぎてて、“これ踊れるじゃん”ていうとこからハマってしまいました。所謂メタリック・ハードコア的な解釈で聴き出した感じで」
T 「デスメタルとか聴き始めた頃に出会ったんですが、最初は全く好きじゃなかったです。ドゥームメタルとかスラッジコアとか、それこそSECOND TO NONEを経てハマっていった感じで。好きなポイントは、ドス黒いんじゃなくてカビくさい感じ、アタケさんが言うように音やリズムが揺れて出てるグルーヴ、ボーカルの声と歌い回し、などですね」
S 「COFFINSに入る前はスラッジやドゥームが好きで色々掘っていて、WINTERを初めて知ったのは『ヘヴィメタル / ハードロックCDガイド』(シンコー・ミュージック)でした。元々HELLHAMMER / CELTIC FROSTが大好きだったので、すぐに好きになりましたね。カルト的な存在でした」
U 「そうなんだよね。遅いバンドって当時も結構いたりしたんですけど、やっぱりBLACK SABBATH以降のドゥーム要素を多分に持ったバンドが多かった中で、WINTERって完全にHELLHAMMER / CELTIC FROST系統で。そのリフをあの激遅スピードでやっちゃう発想か、そこに辿り着いた経緯とか、そういう怪しい魅力が満載というか。デモからアルバムへの過程でチューニングを更に下げるというわけのわからなさだし、音源でギターも重ねてないしね。変態すぎて最高です(笑)」

――BOLT THROWER観を教えてください。COFFINSは今回、「Impuritious Minds」でWINTER感 + 半減速ボルトスロウィングを極めていますよね。
U 「BOLT THROWERはデスメタルの完成形のひとつだと思います。真似をしようとしても、あの音にしかならない。一回そんなような曲を書いてスタジオで皆で合わせたんだけど、もうそれ以外の何者でもなかったのでやめました。別のインタビューでもちょっと話したんですけど、実はこの2曲はそもそもスプリット用ではなく次のアルバム用に書いた曲なんです。ニューアルバムはちょっとUK的な要素やステンチ・デスメタルなドゥーミィな雰囲気を盛り込むという意図があったりするので、その辺が特に“Impuritious Minds”には色濃く出てるのかなと思います」
A 「あのバンドはほんと不思議で、話すと長くなるので割愛しますけど、メタリックなハードコア・バンドにも影響与えてるし、BOLT THROWERはBOLT THROWERなんですよね。イギリスなんです。イギリス」
T 「そういう所謂メタリック・ハードコアとステンチな方面、両方に繋がるのも面白いですよね。ちなみに僕はアルバムだと『War Master』が一番好きです」
U 「NAUSEA発信のWINTERもそうですけど、BOLT THROWERも下地にクラスト / ハードコアがあって、最終的に音があのデスメタリックな形へ深化していってるのが面白いし、雰囲気あってすごくいいな、って思います。ちなみにオレは『...For Victory』が好き(笑)」
A 「ぶっちぎりで『The IVth Crusade』ですね!」
S 「自分も『The IVth Crusade』が好きです(笑)!」

Nine Cocoons Of Dens To F
COFFINS / SECOND TO NONE ‘Nine Cocoons Of Dens To F’ 2018

――大まかに、COFFINSはHELLHAMMER、SECOND TO NONEはCELTIC FROSTという感じで捉えているのですが、いかがでしょう。
T 「ラフなHELLHAMMERと構築された荘厳のCELTIC FROST、という見方でいけばそうなると思います。CELTIC FROSTは凄くモッシーですし」
A 「COFFINSの出発点まさにそこなので、そのまんまですね。SECOND TO NONEの方はわかりませんが、CELTIC FROSTではなくNYHCやメタリック・ハードコアなのではないかと」

――大まかに、COFFINSはPROPHECY OF DOOM、SECOND TO NONEはAXEGRINDERという感じで捉えているのですが、いかがでしょう。
T 「前の質問と同じで、ラフと荘厳の対比で言えばそうかもしれないです。実際のところウチはPROPHECY OF DOOM感はそんなにないと思いますけど(笑)」
U 「デスメタリック感って意味ではAXEGRINDERよりPROPHECY OF DOOMのほうが確かに高いかもね。そう捉えると確かに言い得て妙かもしれないですね」

――あまり関係ないかもしれないけれど、CROWBARはアリですか?ナシですか?
U 「2ndは今でも聴いたりします。たま~に(笑)。 昔にスラッジ・バンドをやってた当時、EYEHATEGOD以下そっち系バンドにアンテナ張って、CROWBARもチェックしてたのが懐かしいです。まさか4年前の“Maryland Deathfest”で対バンすることになるとは思ってなかったですが(笑)」
T 「正直思い入れはないですが、ライヴがかっこよかったのでアリです(笑)」
A 「個人的に1stと2ndはよく聴いてました。好きですよ」

――興味深いと感じているのは、ざっくりメタルとして認知されているCOFFINSよりも、ざっくりハードコア・パンクとして認知されているSECOND TO NONEのほうが多分にエピックなメロディを含んでいるということです。PARADISE LOSTとSOLSTICE(UK)だったら、どちらのほうがSECOND TO NONEの肌感覚に近いと思われますか?
A 「PARADISE LOSTだと思います断然」
U 「オールドスクール・ゴシックメタル感はすごく感じるしね」

――”ざっくりメタル”、”ざっくりハードコア・パンク”という言葉を使わせていただきましたが、実際、初期SWANSのイメージでスタートしながらもPUNGENT STENCHをカヴァーしちゃうまでにデスメタル化したCOFFINS、DARKSIDE NYC影響下の異端モッシュコアからエクスペリメンタルなスラッジング・ドゥームに進化したSECOND TO NONE、どちらも各カテゴリ内ではかなり特殊な存在です。活動にあたって、メタルだ、ハードコアだ、という意識は持ち合わせているのでしょうか。
T 「サウンド的にはデスメタルの枠内でやってる意識はありますね」
S 「ウチはハードコアが根底にあるデスメタルだと思ってます。それこそ初期PUNGENT STENCHもデスメタルですが、リフやリズムは間違いなくハードコア要素が強いですし。AUTOPSYなんかも。基本、メタル、ハードコア両方を持ち合わせていると思います」
A 「COFFINSはやはり“Tokyo Old School Death Metal”ですね。Trueです」

――以前T. G. Warrior師にお話を伺った際、「私たちは全然オリジナルではない。オリジナルはTony Iommiだ」とおっしゃっていたのが印象的だったのですが、明らかにオリジナルです。COFFINSとSECOND TO NONEも、引き合いに出せる音楽は多々あれど、圧倒的にオリジナルだと感じます。ご自身のバンドのオリジナリティについて思うことを聞かせてください。
U 「あくまで個人的な考えですが……オリジナルってのはそもそもパクりの積み重ねです。色んな要素の引き出しをごちゃ混ぜに積み重ねて形成されていく中で、第三者の観点から結果的にそう言われていくものなんじゃないかと思ってます。そういう意味で、たまたまウチはその重なり方が上手くいってるだけなのかなと。あとはパクリの元ネタを知らない若い世代には新しく聴こえたりして、そこでオリジナリティを感じる音として捉えられてるのかもしれないです。でも実際、たぶん聴く人が聴けばウチの構成要素は超絶わかりやすいと思いますけどね(笑)」

――ここ10年で現れたバンドの印象について聞かせてください。例えばXIBALBAやPRIMITIVE MANなんてどうでしょう。
A 「両バンドとも好きです。PRIMITIVE MANに関しては来日ツアーで対バンしましたし、個人的に彼らからマーチを通販で買ったりしてたので、会えてうれしかったです。ここら辺のバンド、特にオールドスクール・デスメタルの取り入れ方が露骨なものが最近増えてきて、面白いなと思います」
T 「純然たるデスメタルとは違うけど、“なんだ、デスメタル好きなんじゃん”感は確かに両バンド共に感じますね。近年のハードコア・バンドに波及してるオールドスクールデス復興からの影響は90年代のデスコア / 極悪HCとも違ったデスメタル解釈で興味深いです。けっこう前かもですが、STORMCROWとかのボルトスロウィング勢は個人的にツボでした」
S 「ツアーで対バンしましたが、ここ10年だとHOODED MENACEとUNDERGANG、あとENTRAPMENTもハードコア要素があってカッコ良かったです。最近はBLOOD INCANTATIONがお気に入り。海外は常に現行のデスメタル・バンドが出て来るので凄いな、と思いますね。“はるまげ堂”とかで日本の流通も多いですし、聴いてる人も沢山いると思いますが、なかなか日本からこの手のバンドが出て来ないのが“現実”だなぁと思います」
U 「正直オレ自身は最近のエクストリーム系バンドに疎かったりするんですが、XIBALBAやPRIMITIVE MANとかは聴いたり観たりしてて、ジャンルレスということ自体も音に取り込んでるな、というあたりに“現行の音”ってのを実感します。本人たちが意識してるかどうかはわからないですが」

――国内に近しい感覚のバンドはいますか?なんとなく、関西ならEAT、関東ならREVÖLTって感じがしますが……。
A 「似てるかといえば違うと思いますね。僕らに近いと言えばANATOMIAじゃないかな」
S 「自分もANATOMIAだと思います。REVÖLTも昔から大好きですけど(笑)」
U 「初期ANATOMIAからはデスメタル面で多大な影響を受けてるからね。常に意識してるのは後期GRUDGEかな」
T 「ANATOMIAとはドゥームデスとしてのスタート地点が似てますよね。互いに現在の方向性が全然違うのも面白いです。EAT、REVÖLTとも、サウンドは似てないけどデスメタル x ドゥーム x ハードコアという感覚は共通して持ってるのでは?と思います」

COFFINS
photo ©Natsumi Okano

――今回のスプリット作にあたって、曲作りにお互いのバンドのスタイルは意識されましたか?
A 「SECOND TO NONEは絶対凄いもの作ってくると確信してましたし、少しドキドキしてました。だからといって意識して寄せてしまったら、スプリットをリリースする意味がないので、いつものCOFFINSです」
T 「いつも通りですが、“1曲は速い曲を入れようか”って話をした記憶はあります」
U 「Dビートな曲はウチの代名詞でもあるしね。COFFINS感を出すにはやっぱ入れとかないと、っていう使命感です(笑)」

――曲は別々でも、パッケージはひとつです。ヴィジュアル・イメージの擦り合わせなどはしたのでしょうか。COFFINSはゴアリーなイメージ、SECOND TO NONEはリリジャスなイメージが確立されていると思うので。
A 「最初、僕がTaku氏と飲みながら“こういうイメージで”なんて話しはしてたんですが、それを072氏(DISTURD)が完璧に仕上げてくれました」
T 「ジャケット最高です!スプリットだし、ゾンビがいなくても全然問題ないです(笑)」
U 「完全に丸投げ!でも投げて大正解。この辺のまとめ方はさすがですよ」

――本作が完成して、手応えはありましたか?個人的に、全部乗せ感のあるスプリットなので、第2弾以降も期待したいところです!
U 「手応えはきっとコレからでしょう。第2弾は……あるのかな?こんな奇跡は2度となさそうですが(笑)……何かあればいいなと思います」
S 「最初に話を貰った時はプレッシャーありましたが、本当にやって良かったなと思いました」
T 「リリースにこぎつけてとりあえずホッとしてます。これからの動きも自分自身楽しみです」
A 「レコーディングが終わった時は“いいじゃんこれ”ってニヤニヤしましたし、現時点(2月初旬)でリリース直前なので、なんとも言えませんが気に入ってくれるはずです。両バンドの今を凝縮して詰め込んであるので。このスプリットに関することは、“リリースしてちょっとツアーして終わり”じゃなくて、もっともっと色々拡げていこうと思ってるので、今後も注目していて欲しいです」

COFFINS / SECOND TO NONE 'Nine Cocoons Of Dens To F' Release Party in Tokyo

COFFINS Official Site | http://www.coffins.jp/