Interview | Ellen Allien


BPitch Control 10th Anniversary

 ファウンダーであるEllen Allienをはじめ、Apparat、MODESELEKTOR、Ben Klock、AGF / Delay、TELEFON TEL AVIVなどの作品を送り出し、カッティングエッジでありながらリスナーを限定しない独特のカラーでフロアに留まらないファン層を獲得している独ベルリンのエレクトロニック・ミュージック・レーベルBPitch Control。同レーベルは昨年、設立10年目のアニヴァーサリーを迎えました。これを記念して、アパレル・ブランド「EAF」のデザイナーとしても活躍するAllienさんに、10年の軌跡と今後の展望についてメールでお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2010年2月
翻訳 | 佐々木 麗
main photo | ©Michael Mann


――10周年おめでとうございます!10年を振り返ってみていかがですか?

 「ありがとう!たくさんの瞬間やサウンドを思い返すと、とてもいい気分。音楽を愛しているし、才能あるミュージシャン、グラフィック・デザイナー、みんなとのつながりを愛してる。わたしはいつもサウンド、コンポジション、アートワークを探しているけれど、ここ10年で新しい形の音楽ビジネスが現れて、制作のスピードが変化してきた。その過程も面白かった。皆、常に新しい状況に合わせてモダンにならなきゃいけないでしょ。それってすごいことですよね!」

BPitch Control

――10年前、何に影響されてレーベルを始めたのでしょうか?
 「すべての音楽、パーティ、仲間、旅。今も変わらずそれがインスピレーションの源泉。レーベルを立ち上げた最初の理由は、当時のベルリンには、わたしの音楽をリリースしたいと思えるレーベルがなかったから。どこにもフィットしなかったの。友達のレーベルでさえ。だから、自分たちの望む形で音楽を世に出すために、レーベルを設立するは当然の成り行きだったんです」

――設立にあたって、お手本はありましたか?
 「当時からわたしは、MODESELEKTOR、Paul Kalkbrenner、Sascha Funkeや他の皆と一緒の未来を写した写真をたくさん持っていました。BPitchファミリーはそうやって出来上がっていったし、その写真がわたしのお手本。レーベルを始める原動力にもなりました」

――先鋭的ながらも聴き手の幅を狭めない所属アーティスト、スタイリッシュなヴィジュアルなど、当初から変わらない要素がBPitch Controlには多く見受けられますが、“BPitch Controlはこうあるべき”というコンセプトはありますか?
 「わたしたちはアーティスト・レーベルだから、成長の手助けになるようなことはするけど、リーダーであるわたしのスタイルを押し付けたりはしませんよ(笑)。世界中でベルリンの音楽をレップできるような、幅広い音楽をプロデュースするのがわたしたちの役目です」

――レーベルを運営する上で、良いこと、大変なことを教えてください。
 「音楽やクリエイティヴの過程はとても楽しいし、おもしろい。わたしみたいに、いつも世界中をツアーで回っているようなアーティストとはコミュニケーションが大変なときもあるけど。レーベル内の繋がりや、良いチームを保つために気を遣うのもすごく疲れるし、大変ですね。それぞれのポジションに見合った経験を持つプロフェッショナルで、なおかつ信用できる人を見つけなきゃいけないし」

――レーベルの存在も、リリースするアーティストもワールドワイドになりましたが、BPitch Controlからは現在でもベルリンへの愛を感じます。ローカル・レーベルの誇りのような気持ちはありますか?
 「わたしはこの街で生まれたし、何人かのBPitchアーティストもそう。家族もここに住んでる。ベルリナーであることを自慢しようって気にはならないけど、今はここに生まれたことを幸せに思っています。壁が崩壊して西と東がひとつになるのを見たし、その後に始まったテクノ・シーンの一部としてBPitch Controlは良い仕事をしていて、それをわたしたちは愛しているから」

――ベルリンはBPitch Controlが誕生する以前からエレクトロニック・ミュージックの重要都市でしたが、ここ10年でエレクトロニック・ミュージックを取り巻く状況に変化はありましたか?
 「そうですね。昔はDJが今ほどいなかったし、クラブやレコード・ショップもなかったけど、ベルリンのサウンドが注目されるようになってからはだいぶ変わったと思う。レコード・ショップが増えて、良いマスタリング・スタジオもたくさんある。今はコンスタントな変化やムーヴメントがあるからすごくスリリング。ある時期からたくさんの人々がベルリンへ引っ越してくるようになったんですよ。本を書く人、絵を描く人、毎週のようにレイヴに行く人。アクティヴになりたければなれる場所なんです。街が人を動かして、人が街を動かしているんですね。アクティヴな人がいる限り、ベルリンはこれからも元気だと思う」

Ellen Allien / photo ©<a href="https://michaelmann.berlin/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span style="color: #ffffff;">Michael Mann</span></a>
photo ©Michael Mann

――選ぶのが難しいとは思いますが、思い出深いBPitch Control作品を5つ教えてください!
 「ほんの一部なんですけど……Sascha Funke『Bravo』(2003)、MODERAT『Moderat』(2009)、Ellen Allien / Apparat『Orchestra of Bubbles』(2006)、AGF / Delay『Symptoms』(2009)、TELEFON TEL AVIV『Immolate Yourself』(2009)ですね。他にもたくさん良い作品があるんですよ」

――レーベルのこれからの展望を聞かせてください。
 「未来は音楽。ホットな作品をリリースしていきたいな」

Ellen Allien Official Site | http://www.ellenallien.de/
BPitch Control Official Site | https://www.bpitch.de/