Kyoka

Kyoka

――前作に入っていた曲も、以前とは異なる趣になっていましたよね。“インダストリアル”って、やっぱり言われます?
 「言われます。でもいまだに、ジャンルのことは、よくわかっていません……」

――でも今回のEPでのダブの意匠は、“ダブです”って意識的に入れている感じがしました。
 「(笑)」

――なるほど(笑)。
 「全然知らなくて(笑)。資料に“ミニマルダブ”って書いてくださっているのを見て、“そうかダブだったのか”と思いました。垢抜けた、かっこいい、って。うっとり」

――カテゴリで受け取れる部分があるというのはKyokaさんの曲の中では珍しいな、と思ったんですけどね。単純にディレイ多めに、という感じだったんでしょうか。
 「ディレイ多めは元々好きなんです。すごく小さい頃に大きいホールでクラシックを聴いて、演奏が終わった後の残響で音楽にハマったので、その名残だと思います。その感覚が出発地点だから、どうしてもディレイが増えちゃうんですかね?ちなみに今回は、音の本体があまり出てなくて“ザー!”って空回りの空気感がディレイしているのを、たくさん使いたかったんです。それがつまりダブなのかな?でもわたし的にはコンサートホールのざわざわが最初のイメージなので、伝言ゲームみたいな仕上がりになったのかと思うと、音が一人歩きしてくれたみたいで、おもしろくて嬉しいです」

――初期のMONOLAKEみたいな感じもあるんですよね~。
 「へえ~(驚)」

――Kyokaさんのはもっと、野生の何かが混じっている感じがかっこいいですけどね。フィジカルな反応というか。
 「野生(笑)。いつも色んな人からコントローラーの使い方が速いっていわれるので、そういう系の野生でしょうか?正直、わたしもライヴ本番は運動神経でやっているので、自分でもどういじっていたのか、後でわからないんです。でもリハでだいたい、今日のサウンドシステムだとこの動きをしたらこういう音が出る、みたいな会場の特徴に目処はつけていて、本番はそのインプットでひたすら耳と目と勘を使って鳴らします。会場によって鳴り方が本当に違うので、リハはとにかく音がフラットに鳴るような環境を整えて、その中で“今日はこの動き”みたいなのもざっくり掴んで、ライヴでそれを妄信(?)してなるべく少しずつ色んなヴァリエーションで動くようにするんですよ。そうするとリハのときにもわかっていなかったようなポイントで、お客さんがキラッとなる瞬間があって……。もう一度それをやってみて、またキラッとするのを見て“何かフロアで音が変わってるんだ”ってわかる(笑)。そういうのは、制作中のスタジオだとできないんですよね。だから今回は、色々考えてライヴの音を使うのが最善だと判断しました。最初は音質の悪さとかどうかな?って悩んだりしましたけど、最終的には逆にでこぼこしたその質感を活かして仕上げるように努めました。ところどころBuchla(モジュラーシンセ)の音が加わるだけでなぜかうまくまとまることもあって、Buchlaにはずいぶん助けられました。偶然やハプニングも、大事なパワーのひとつなので、その偶然を逃がさずに掴む能力も、今後も引き続き磨いていきたいです」

Kyoka
photo ©Joji Wakita 脇田ジョージ

――ライヴ・パフォーマンスという表現形態自体が、ある種偶然の積み重ねという側面も持っていますものね。
 「もともと、狙って何かをできるような器用なタイプではないので、とりあえずやってみるという生き方をしているのがわたしだとしたら、近年着実に“やってみたらできる”確率がだんだん高くなってきているんです。例えば、15分だったり、24時間だったり、今決められた時間内で出したいと思う“パワー”的なものがあるとしたら、それがバン!と出せる頻度が以前よりも高くなっていて、“やってみたらできる”確率がだんだん上がってるんです。て同じこと2回言っちゃった」

――大事なことは2回言わないと。たくさんのライヴを経て、練度が上がってきているんでしょうね。現在の所属レーベルであるRaster-Notonは、“やってみたら”というよりも、わりとコンセプチュアルに作品作りを進める方が多いですよね。
 「はい」

――その中にあって、“自分、異色だな”って思うことありますか?
 「うふっふ(笑)。いろんな方からそう聞かれるので、自分、そんなに異色なのか……と実感しますが……。そもそも、わたしがRaster-Notonに迎え入れられた理由は“異色すぎて、それを隠そうとしてる人なのに、隠し方がわからなすぎて悩んでる超異色な人”だったんです。わたし個人としては、過去の長年のコンプレックスが現在のような楽しい毎日にわたしを運んできてくれたので、異色だったらしいけど、ラッキーだと思ってます。昔はずっと悩んでましたが。そういう立ち位置として入部したというか」

――入部。
 「そう。入部の決め手になった言葉は“パイオニア・タイプの人間は、最初は皆に不思議扱いされるものだから、めげる必要はない”でした。Raster-Noton大好きです。でも正直、Raster-Notonのアーティストは皆さん最高に素敵ですが、皆が皆、異色だと思います……。ドイツでよく“彼らはspecial peopleの集団”という表現を聞くので、つまりは異色の集団ということなのかとも思います」

――同じ部署にはどんな人がいるんですか。
 「部署(笑)!意外とGrischa(Lichtenberger)がそうだと思います。やっていることは全然違うし、とんでもなく天才ですけど、一番共通点がありそうなのはGrischaかな……。好きなノイズの種類とか、喋りがわりと感覚的とか……。誰かがGrischaと喋って、“何言ってるのかわからない”と言っていたことがあったんですけど、そのとき隣にいたわたしには、その話が身に沁みてよくわかったんですよ。言語的な部分が似ているのかもしれないです。とはいえ、彼は超天才だと思うので、似てるとか言ってしまうと厚かましいみたいで気が引けますが……」

Kyoka with Raster-Noton crew
photo ©Alberto Novelli

――“FIRST FLOOR FESTIVAL”のツアーでも相性良くて、かっこよかったですね。ツアー仲間で言うと、上野雅亮さんはいかがですか?何か共通点はあるのでしょうか。すごく個性的な美学を持った方ですよね。
 「美学。なんかちょっとわかる気がするけど、上野さんは、わたしとは別のアプローチからきちんと綺麗に作曲している感じがします。皆、個性的。皆、異端児……(笑)」

――上野さんは現代音楽フィールドの方ですもんね。
 「そうそう。それを今回のツアー中に見ていて、わたしもちゃんと作曲してみたいなって思いました(笑)」

――作曲してるじゃないですか。
 「そうなんですけど(笑)。上野さん的な、正攻法を織り交ぜた上での遊びをもった作曲、という意味です。正攻法。わたしもたまにはやってみたらいいのかな、と思って」

――譜面があるような。
 「そう。ちょっと話が違うんですけど、実は最近作っている別の音源では、音をひとつひとつ手弾きするようになったんですよ」

――へえ!
 「編集するのが人工的で嫌になってきて、クオンタイズも全然しないで手弾きすることを最近始めたんです。そうすると、譜面に起こすわけではないけど、譜面的な行動を採るっていうことに気付きました」

――それはおもしろいですね。ライヴでも弾くかもしれない?
 「同時に弾くとなると、色々荷物を持たなきゃいけなくなっちゃうから。月に着陸する人みたいになっちゃう(笑)」

――そうですね(笑)。でも所謂“演奏”にシフトしたというのは大きい変化ですね。
 「以前は全然興味なくて、編集して作り込むほうが好きだったんですけど、それだとズレるグルーヴみたいなものがなかなか作れなくて」

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