Kyoka

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――今回の作品は、その前哨戦という感じですね。もっと不確定要素を活かしてゆくという。決まったことをぴったりやらない。
 「うんうん。そうですね。今回は、決まったことをぴったりやらない素材を使って、ぴったりとやった感じ。次のは完全にぴったりやってないです」

――へえー!それはたのしみです。即興に近い感覚というか。昨年参加された“MultipleTap”のツアーには、即興フィールドの方もたくさん出演されていましたよね。そのときのフィット感はいかがでしたか?
 「普段のヨーロッパ等との動きとはまた全然違う感じがおもしろかったです。MultipleTapは、イベント全体にビットクラッシャーがかかった感じでしたね。会場が丸ごと爆発してた、みたいな」

――ENDONとか、普段とは少し違う皆さんと回られたわけですけど、ああいったノイズ / 即興寄りのラインナップのときと、Raster-Noton的なイベントのときでは、何が一番違います?
 「客層は確実に違うと思います。出演者やお客さんの反応はどちらもいい感じです。わたしも客層によっては少しはやり方が変わってきますね。Raster-Notonのときは、わたし自身の探索から見つけた“良いと確信したもの”を紹介していくことでお客さんを説得する雰囲気があるんですけど、MultipleTapのときは“出してみた音”を軸に、自分がそれを瞬時にどう料理するかを見せてるかな。完成度に関しては賭けみたいなところもあるけど、MultipleTapのお客さんは即興性をすごくたのしんでいるから、わたし自身彼らの前でライヴをすることは、ひとつの勉強の機会です。ほかのところでも出せる新しい手段が増えたのも確かですね。あと、MultipleTapは理性を持っていたら飲まれる気もするので、バランスに気を配ってます(笑)」

――音量の部分とかで?
 「音量もそうだし、色々。エフェクトの使い方とか。とりあえず“オーバー・ザ・トップ上等”みたいな」

――アカデミックな方面と隣接した立ち位置にいながらビート・ミュージックを制作していて、かつノイズの現場にも登場する、みたいな動き方っておもしろいですよね。MultipleTapのツアーメイトで言うとYousuke Fuyamaさんもそうだと思います。ツアー中、印象に残った方などいらっしゃいましたか?
 「連日皆さんのライヴを見ていて、どなたもすごいハイライトの瞬間を持っていらっしゃったので、ここでは伝えきれません……」

Kyoka
photo ©Joji Wakita 脇田ジョージ

――MultipleTapには大城 真さんみたいにインスタレーション作品を多く手がける方も参加されていましたが、Kyokaさんはインスタレーションの新作、制作していないのでしょうか。
 「昨年の7月、8月に新潟の山ノ家で展示したやつがあります。これまでに韓国とスウェーデンでも展示しました。説明を省いていきなり結果だけ言いますが、びっくりするくらい波紋が出るんですよ。やっているうちに、模様がチェックになったり、ストライプになったり、意外とバラエティが出せることもわかってきて。照明の具合でも変わるし」

――普段作っていらっしゃる音楽ともリンクしているのでしょうか。
 「はい、まさにそうです。わたしの曲って、うっかりするとキックがなかったりするんです。低音が動いていること自体がリズムだと思っていたんですよ。だから、昔から海とかを見ていると、波が細かい音のネタだとすると、その下に大きく流れる潮流的なものにリズムを感じていて。今回のインスタレーションだと、両方が同時に目で見られるんですよ。あれを通じて簡単に、わたしが今までやっていた曲作りを一目で見られるようになりました」

――Fuyamaさんみたいに視覚化に注力されている方もいらっしゃいますし、Raster-Notonにもコンセプチュアルにそういうことをされる方が多いですよね。Kyokaさんも、自分の作っている音楽を視覚化したいみたいな願望が元々あったのでしょうか。
 「全然なかったです。視覚化ですごいことをやっている方はたくさんいらっしゃるし、それをわたしががんばるのは違うと思うので。山ノ家での展示も最初は全く違うものを考えていたんですけど、滞在制作中に偶然これができたので、視覚化するというコンセプトとは離れた視点からの完成だったんです。山ノ家の後藤(寿和)さんと池田(史子)さんも“良い”って言ってくださったので、独り善がりじゃないと思って展示しました。まぁ、偶然で生きてますよね(笑)」

Kyoka
photo ©Joji Wakita 脇田ジョージ

――展示にしろ、音楽にしろ、完成のきっかけはもしかしたら偶然なのかもしれないですけど、そこまでにめちゃめちゃ努力はされてるんですよね。今回のEPを聴いても、それを強く感じました。
 「はい。空回りはめちゃめちゃしてきました。Frankに言わせると、ちゃんと機材のマニュアルを読んでいれば、空回りしなくて済むらしいんですけど(笑)。例えわたしが空回りしないようにマニュアルを読んだとしても、その行為自体がすでに空回りだったりするので、つまりわたしの努力は空回りの経験から得たことに支えられているわけです。確実に。だから……いいんです。これで」

――タイトル『SH』も偶然生まれたもの?
 「onpa)))))から出していたやつは『ufunfunfufu』『2ufunfunfufu』『3ufunfunfufu』で一区切りだったんですよ。“3”てシリーズ的に区切り易いじゃないですか。Raster-Notonから出すようになってからは、最初が『iSH』で次は『IS』にしたんです。それを踏まえて“次は『I』だろう”ってみんなが思っていたのを知ってたし、“I”を“あい”って読まれちゃったらエゴイスティックっぽくて気恥ずかしい気がしたので、試行錯誤した結果、“しゅ”くらいニュートラルな音感がいいと思って。最初は曲名の頭も“sh”で揃えるっていう、どうでもいいことをやろうとしていて、“s”と“h”で好きな単語を集めてみたんですけど、“h”に好きな言葉が意外と見あたらなくて困りました。5曲目の“Soliloquy”までしかタイトルが付けられなかったんですよ。でもマスタリングのLupoさん(Andreas Lubich)が“Soliloquyの対義語はSomniloquyって言うみたいだよ”って教えてくれて。夢遊病っていう意味らしいんですけど、ちょうど6曲目はフラフラした感じの曲だったから、そのまま採用しました。また偶然(笑)」

――(笑)。『iSH』『IS』『SH』でまたトリロジーが完結したということなのでしょうか。
 「そうですよね……。でもまだ“IH”っていう可能性もなくはないし、4部作もいけそうですね。タイトルにかこつけてリリースの枚数を増やそうっていう。まだ終わってないから!って(笑)」

Kyoka official site | http://www.ufunfunfufu.com/
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