Interview | TOKiMONSTA


音楽と身体の繋がり

 ドーペストな面々が名を連ねるFlying Lotus主宰レーベル“Brainfeeder”に所属するTOKiMONSTAことJennifer Leeが、昨年のフル・アルバム『Midnight Menu』を確実に更新する内容の傑作EP『Creature Dreams』をリリース。ドリーミーかつ凛とした空気を纏う独特の楽曲群について、10月に開催されるイベント“Brainfeeder2”にてMartyn、Teebs、Thundercat、Austin Peraltaらとの再来日を控える“토끼 + monster = ウサギ怪獣”にお話を伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2011年8月
通訳 | BEATINK


――『Midnight Menu』も素晴らしかったですが、本作でまた飛躍的にかっこよくなりましたね!音のバランスが繊細になって、奥行きのある作品に仕上がっていると思います。本作を制作するにあたってサウンド面で特に気を遣った点は?

 「『Creature Dreams』では、一貫したサウンドを目指しました。収録曲のすべてが1枚の作品としてまとまったEPにしたかったから。あたたかいサウンドで、モダンなスタイルの中にヴィンテージな美学を持った作品にしたかったんです」

――グルーヴも更に極上になっています。グルーヴを出す上で大切なことは?
 「音楽と“動き”の繋がりってすごく強いと思うんですよ。体の動きとかね。特定のリズムを持った音楽には体が反応する。こういうリズムを作り出すには、体の動きと自然に調和するビートを作る必要があると思っています」

――「Stigmatizing Sex」や「Bright Shadows」などはポリリズムがすごいことになっていますよね。サンプリングはチャンス・オペレーション?それとも後から考えて配置しているのですか?
 「それは場合によります。決まったパターンよりおもしろい音楽になるという意味では、ランダムなサウンドは好きですね。ビートはそもそもパターンと関係が深いものだから、ランダムな要素を使って、反復しすぎるのを防ぐこともできると思います」

――初めて聴いたときは(AKAI)MPCを使っていらっしゃるんだと思っていたのですが、(Roland)SP-404をお使いなんですよね。SP-404のどんなところが気に入っているのですか?DJをやるときにも使っていて使い慣れてるとか?
 「SPはサウンドのクオリティとコンプレッションが好きなんです。エフェクトもおもしろいのが揃ってる。今はライヴでは使わなくなったけど、SamiyamやTeebs、Ras Gといった友人たちは使ってますね。SP-404は主にPCと一緒に使います。完全なアナログのセットアップより、PCを使うほうがずっと少ない手間でより多くのことを実現できるんですよ」

――(AKAI)APC40を使われている写真も拝見したことがあるのですが、ライヴのときはPCをメインにしているのでしょうか。
 「APC40は主にライヴで使いますね。プロダクションだけじゃなく、ライヴでもPCを使っています」

――日本製の機材はイケてる?
 「AKAIもKORGもRolandも大好き!全部持ってる。AKAIのドラムマシンとMIDIコントローラー、KORGはヴィンテージ・シンセサイザー、VST、エフェクト機材、MIDIコントローラー、Rolandはシンセサイザーとエフェクト機材、ドラムキットが素晴らしいです」

――ビートを作るということに関して、影響を受けた、または好きなトラックメイカーは?00年代の、J Dilla以降のヒップホップやエレクトロニック・ミュージックはもちろん、90年代のテイストも感じられるのですが……。例えばDJ Premier(GANG STARR)、DJ KRUSHとか。
 「DJ PremierもDJ KRUSHもすごく大きな影響を与えてくれました。90年代中期のヒップホップ / トリップホップもすごく好き。DJ ShadowとかDJ Camとかね」

――本作では生楽器が多く使用されていますよね。シーケンスされていない音がたくさんあるように感じたのですが、ご自身で演奏されている楽器はありますか?
 「今作に限って言えば、すべての楽器は私自身が演奏していますよ」

――Gavin Turekさんの歌唱がドリーミーで最高です。彼女がどんな方なのか、教えていただけますか?
 「素晴らしいヴォーカリスト。MySpaceを通して知り合って以来、ずっと一緒に音楽を作っています。もっといろいろ作品を作っていけたらと思っているんです」

――あなたの作品はどれもメロウなメロディが印象的ですよね。DJでもメロウな曲をかけることが多い気がするんですけど、基本メロウというか、ロマンチックなものがお好きなんですか?ステージネームも可愛らしいですし。
 「それが、ライヴではメロウな音楽をあまり演奏しないんですよ。始まりは少しメロウかもしれないけど、自分のトラックもよりハイエナジーな感覚でプレイします。自分のセットを通して、オーディエンスのみんなには新しい感覚でおもいっきり楽しんでもらいたいって思ってるから」

――サイケデリックというか、異世界を覗いてやましい気持ちになってしまったような雰囲気が独特です。世界観ありきで曲を組み立てていくのでしょうか。それとも曲を作るとそうなっちゃってる?
 「アイディアからスタートすることはあまりないんです。自然の流れにまかせてしまうことほとんどですね。今回収録されている楽曲は、“夜の雰囲気”にとても影響されています」

――Brainfeederの面々はベースが極太な方が多いですけど、あなたの音楽はドープ過ぎず、芯はしっかりしていながら繊細です。“女性的”という言い方は好きじゃないんですけど……。ここには拘りがあるのでしょうか?
 「トラックによっては太いベースを使うのが好きだけど、自分の音楽はベースが強いだけじゃなくて、音楽的にバランスがいいものにしたいんですよ。曲によっては、必ずしもヘヴィなベースなんていらないって思っています」

――アジアン / コリアンの女の子であることが曲を作る上で影響することはありますか?
 「そうですね、そう思う。私のサウンドに反映されているエスニックな影響は、アジア人だからこそ得られるものだと思う」

――ファッションもいつも素敵な印象があります。昨年“Low End Theory Japan”で来日されましたが、日本の女の子のファッションはLAと比較してどんなところが違いますか?
 「ファッション大好き。LAより日本の方がファッションに対して意欲的だと思いますね。正直日本のスタイルの方がLAより好き」

――今年は“SonarSound Tokyo”でのパフォーマンスを楽しみにしていたのでキャンセルは残念でしたが、10月にBrainfeederの仲間と一緒に来日されるんですよね。待っているみなさんにメッセージがいただけると嬉しいです。
 「日本のリスナーのみんな、ありがとう!10月にみんなと会うのが待ちきれないです」

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