Primula

Primula, 2012

青春をこじらせて

 神奈川・横浜在住の釣人・Primulaが、30オーヴァーにして初のオリジナル・フルアルバム『Youth Center』をNeguse Groupよりリリース。APHEX TWINやμ-Ziqを思わせるシンセティックでノスタルジック、かつある種下世話なメロディ、大きめの石を池に投げ込んだかの如きファットなグルーヴ、“No Future”勢譲りの直線では走らないビートワークなどを盛り込んで、少々気恥ずかしいほど明確に90sテクノを想起させるスタイル。現在から当時に向けられた執着と憧憬が青春メモリの最深部を抉り出し、携帯もネットも存在しなかった時代を哀愁と共にフラッシュバックさせながらも、同時にそれが現在の視点でしかない事実も繊細な勇気で受け入れる特異な作品となっています。スティル撮影やMVの制作も手掛けた渡邊允規による強烈なヴィジュアル、盟友Terre Thaemlitzによるリミックスと相まって、思い出したくない過去を弄るのもまた、今生きる証のひとつなのだと雄弁に語るかのようです。集大成作品完成までの道程を、思春期おじさんに伺いました。

取材・文 | 久保田千史 | 2012年8月

――今回が初めてのアルバムですが、音楽活動はいつ頃から始められていたのですか?
 「意識し始めたのは中学校2年生の頃です。当時ダンスポップ……TM NETWORKとかあのあたりを聴いていて。avexのコンピレーションを買ってみたり。周りで聴いている人は少なくて、僕だけみたいな感じで恥ずかしかったんですけど(笑)。そういう音楽を作りたいと思って調べたら、どうやらコンピューターを使ってるらしい、ということで。父親に何度も何度もお願いしてコンピューターを買ってもらったんですけど、いざやってみると出てくる音がすごくショボくて。それで落ち込んで、しばらく何もやらない時期が続いて(笑)。高校1年生になってからまた本格的に始めました」

――高1の時に良い機材と出合ったんですか?
 「そうですね、友達が良い機材を買ったんですよ。Rei Harakamiさんがずっと使っていたという、RolandのSC-88Proっていう音源モジュールですね。高校生だからバイトができるんで、お金を貯めて自分でもサンプラーを買って、その友達とテクノのユニットを始めたんです」

Primula, 2012

――その頃はどんな感じの音を作られていたのですか?
 「その頃ちょうど90sテクノがメディア的にも盛り上がっていた時期で。Warp RecordsとかJeff Millsとか。所謂“ソニテク”時代ですね(笑)。僕はアンビエントが好きだったんですけど、相方は元々ロックをやっていたこともあってダンス寄りのものが好きだったんです。その中間をやりたかったんですけど、男子校だとアンビエントってすごく個人的なものになっちゃうから(笑)、僕もフィジカルな方に切り換えて。当時は深夜にやっていた電気グルーヴのラジオでAPHEX TWINなんかも流れてたんですよ。 名前を知ったら友達にCDを買わせて、それをディスクマンのイヤフォンを片耳ずつ使って2人で聴いて(笑)。その中で一番おっ!て思ったのがCristian Vogelだったんです」

――(笑)。TM NETWORKからソニテクに至るまでの道程も気になるんですけど。
 「そうですねえ、小室ファミリーがカラオケ時代に突入していったんで、ちょっと自分を見失い始めて(笑)。中学時代はEnyaとかも聴いてて、“電子音とアンビエント感”というのが自分的なツボになっていたんですけど、中学3年生のときに『トレインスポッティング』(ダニー・ボイル監督, 1996)が流行ったんですね。深夜の『BEAT UK』っていう番組を録画して観ていたら(笑)、突然『Born Slippy』(UNDERWORLD『Born Slippy .NUXX』1995)が現れて。今までとは全然違う荒削りな感じ、静寂と汚くてぶっといリズムの組み合わせっていうのにグッときて。そこからだんだんSony Techno方面に。そこはだいたいみんな一緒ですよね(笑)?」

Primula, 2012

――たしかに(笑)。その後相方とはずっと曲を作っていらっしゃったんですか?
 「高校3年生くらいまでですね。相方は元々やっていたロックバンドの比重が大きくなっていって。僕も、もう1度メロディやアンビエントに戻りたい気持ちがあったから、そこでちょっと流れが分かれた感じです。ただ、それでも彼と一緒に聴いていたCristian Vogel、SUBHEADとか、 “No Future”って名乗っていた変態ダンステクノはずっと好きで。Warp系も好きだったんですけど、よりダンスに拘っていたっていうか。音質に関しても、ベースドラムがすごく強かったし、やっぱりダンスが根本にあるんですね」

――その影響は今でも続いてる感じがしますね。Si Beggのリミックスも手がけていらっしゃいますし、資料にも“No Future残党”って書かれてますよね。
 「それはあの、けっこう強気に、勝手に書きました(笑)。No Futureなんて言ってる人、今いないですからね」

――Cristian Vogelですら最近の作品にはNo Futureのロゴ付いてませんからね(笑)。
 「そうですね」