近藤さくら + CARRE

近藤さくら + CARRE / photo ©Ichiko Uemoto 植本一子 | 天然スタジオ

――CARREは細部にまで拘って作品を作っていらっしゃると思うので、アリ、ナシの基準が厳しい気がするんです。お2人個々の美学をどう摺り合わせているのかな?と思って。長く続けていらっしゃるからには、何か秘訣があるんでしょうか。幼い頃から一緒にいるというのも大きいかもしれませんが。
NAG 「う~ん、細かく言ったらそりゃ違うところはたくさんありますけど……共通する部分は多いし、信頼してますんで」
MTR 「(笑)。でもまあ、“もうやってらんね”みたいにはならないわけですよ。だから、けっこうお互い妥協してるんじゃないかな。そういう意味ではそんなに拘りがないのかも(笑)。妥協しないで止めちゃう人もたくさんいるじゃないですか。“もうこいつとはできない”みたいな。そうはならないから」

――今回はさらに近藤さんとのやり取りも入っているわけですが、お互いにダメ出しするようなことはありませんでしたか?
近藤 「あんまりなかったよね?」
MTR 「なかったんじゃない?お互いに褒め合うっていう(笑)」
近藤 「今思うと気持ち悪いな(笑)」
MTR 「イイネ!イイネ!みたいな(笑)」
近藤 「自分が作ったものに対して、“良いものを渡している”っていう自信があったから、“その先はやっちゃってくれ!”って思ってました」
MTR 「本当にそう。どんな絵が来てもOKだったし。僕らは最初、渡すのすごく恐かったですけどね。逆に返ってくるものに対しては、間違いないと思ってた」
近藤 「わたしも、一番最初は見せるの緊張したよ」
MTR 「そうだよね。最初は恐いよね」

――良い関係ですね。
近藤 「そうなんですよ」

――展示はその集大成として行われたわけですが、全国流通のアルバムは“CARREのアルバム”としてのリリースですよね。今回は音楽と絵がかなり密接な関係にあると思うので、それを不満に思うことはないのかな?と思います。CDのパッケージに、自分の名前があったらなあ……とか。
近藤 「それが全然思わなくて。思ったほうが良いのかな(笑)」
MTR 「いや、これは本当に悩んだんだよ。音自体は僕らの音だし、さくちゃんの絵を全部載せられるわけでもないしね。流通盤が“近藤さくら + CARRE”として出ていても、逆によくわからないじゃないですか」
NAG 「だから、画集と流通盤は別物の感覚だよね」
MTR 「正直そう」

――サウンドトラックだと思ったら良いのかもしれないですね。
MTR 「本当そうかもしれない。映画の音楽がEnnio Morricone名義でリリースされたりするのと一緒だね」
近藤 「なるほど」
MTR 「盤の内容自体は一緒だけど、画集と流通盤では違う聴こえ方になるかもしれないですね」

CARRE 'GREY SCALE', 2015 <a href="http://mgmdelivery.tumblr.com/" target="_blank" rel="noopener"><span style="color: #ffffff;">MGMD A ORG.</span></a>
CARRE ‘GREY SCALE’, 2015 MGMD A ORG.

――そうですね。Morriconeも観たことのない映画のサウンドトラックだと印象が全然違いますもんね。
MTR 「そうそう」
近藤 「わたしが絵を描いている時は、サウンドトラックを最初にずっと聴いてる状態だったんだよ。だから、わたしは流通盤のほうがしっくりくるのかもしれない」
MTR 「なるほどね、たしかにそうだね」

――サウンドトラックから映画ができたみたいで、不思議な関係ですね。
近藤 「本当そうですよね」
MTR 「さくちゃんはさ、曲にタイトルが付いてることについてはどう思ってるの?これは僕らが最後に決めたタイトルだからさ。展示とはあまり関係ない感じもあるし。タイトル付けないことも考えたんだけど。少なくとも画集のほうには」
近藤 「タイトルが付いたことで、わたしが描きながら考えてた曲に対するイメージが巣立った感じがした。良い距離ができたというか。これどういう意味なの?ってひとつひとつ聞きたかった」

――今教えていただきましょうよ。
近藤 「“LFTM”は医療機器なんだよね?」
MTR 「そうそう。Low Frequency Therapy Machineのこと。“LFTM”の2曲は低周波治療器の音から出来た曲なんだよね。“Tin Reverb”っていうのは、リヴァーブはわかるでしょ?」
近藤 「うん」
MTR 「リヴァーブなんだけど鉄っぽい感じで、FenderのTwin Reverbっていうアンプをもじって“Tin Reverb”」
近藤 「“Tin Reverb”は鉄でできた寺のイメージだった」
MTR 「“Open”は?」
NAG 「これは元々“Operation”ていうタイトルで、それを略したの。手術中の感じっていうか」
近藤 「“Mortar Sleigh”は?」
MTR 「これは“存在しないもの”を指してるんですよ。モルタルで出来たソリなんて有り得ない。元々は丘みたいなところをソリで滑ってるイメージで作っていた曲で、最初は“Green Sleigh”っていうタイトルだったんですけど、“Grey Scale”だからミドリ色はやっぱり止めたほうが良いんじゃないかと思って。だからといって“Grey”って付けるのつまらないから“Mortar”にしたら、頭の中で“こんなもの有り得ないんじゃないか”っていう感じになって」
NAG 「“Tepid Liquid”は?」
MTR 「これは直訳すると“ぬるい水”、常温ですね。これも最初考えていたものからタイトルが変わったんだよね……。何だったか忘れちゃったけど」
近藤 「これは割り箸みたいな形の生き物の珍道中の映像がずっと浮かんでた(笑)」

――タイトルは直感的に付けているんですか?
MTR 「そうですね。歌詞がないから」
近藤 「“Vertigo”は?」
NAG 「それはそのまま。眩暈をイメージして作った曲。“Geography”は直訳すると“地理学”なんだけど、これは僕なりにゴルジェを意識して(笑)」
近藤 「ゴルジェって何?」
NAG 「山みたいな感じの音楽。僕は炭鉱を工事してるようなイメージで作ったんだけど。“Geography”の綴りもゴルジェっぽいし(笑)」

――“Siemens Und Halske”は?
MTR 「会社名ですね。今はもっと短い名前で補聴器、測定器みたいな医療機器とか、色々やってますけど。シンセサイザーも作ってました。ナチスの時代の頃は、この長い名前だったんですよね。別にナチは関係ないですけど。『花様年華』っていう映画にこの会社のでっかい壁掛け時計が出てくるんですけど、それが欲しかったっていう(笑)」
近藤 「そっか、欲しかったのか(笑)」
MTR 「その映画がすごく好きで、僕としては劇中っぽいイメージの曲なんですよ。ドイツの会社名だけど、1950年代の香港のイメージ(笑)。最後の曲の“Trompete”は聴いていただければわかるように、トランペットを吹いている曲なので、これはトランペットの……何語だったかな?ドイツ語だっけ?」
NAG 「そうです。特に意味はない(笑)」

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