近藤さくら + CARRE

近藤さくら + CARRE / photo ©Ichiko Uemoto 植本一子 | 天然スタジオ

“やらなきゃいい”ってわけじゃない

 THROBBING GRISTLEやSPKなどのオールドスクールなインダストリアル・ミュージックを想起させるサウンドで注目を浴び、ノイズ・インダストリアルの現場はもとより永田一直、やけのはら、ECDからZENOCIDE、ENDON、AUTO-MODまで幅広い共演歴を持ちながらも、独自の美学に裏打ちされたスタンスを貫いてきたNAGとMATERIALによるデュオCARREが、『Grig And Cold Mouse』以来5年ぶりのニュー・アルバム『GREY SCALE』を6月にリリース。同作は、鉛筆やアクリルガッシュを用いたダイナミックな無彩色作品で知られ、衣料品メーカー“MAN”の一員としても活躍するほか、近年では白波多カミンのグッズ・衣装デザインも手がける画家・近藤さくらとのエキシビションに向けて制作されたもの。両者は“絵”と“音”を3年に亘ってやりとりし、4月24日から5月1日にかけて東京・恵比寿 KATAにて展示“GREY SCALE”を開催。4月25日にはレセプション・イベントとして、6時間不休のライヴ・ドローイング + 演奏“6 Hours of SAKURA KONDO × CARRE”を敢行しました。アルバム『GREY SCALE』は、アクリルのプレートに覆われた装丁で会期中に販売された画集 + CDの流通エディション。その完成に至るまでの過程について、両者にお話を伺いました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2015年5月
main photo | ©Ichiko Uemoto 植本一子 | 天然スタジオ

――『GREY SCALE』の構想は、いつ頃スタートしたのでしょう。
MTR 「3年くらい前ですね。さくちゃん(近藤)から話をもらって」
近藤 「当時は自分の絵に飽きてしまっていた時期で、突破口が欲しくて、CARREにミックスCDを作ってもらうことを思いついたんですよ。めちゃくちゃ漠然と、今まで聴いたことがない音源が欲しいなあ、って。展示をやるときに一緒に売ったりするのも良いな、と思って声をかけたら、“新曲が出来た”って言われてびっくりして(笑)」

――CARREのやっている音楽を知った上でオファーしたんですか?
近藤 「そうですね」
MTR 「でも僕らはDJをやっていないので、“DJミックスはできません”って断ったんですよ」
近藤 「そうなんだよね、そもそもDJやってないんだよね、失礼な話だ(笑)。それでも、ちょうど個展を控えていたから“とにかくわたしの絵を観に来てください”ってお願いして」
MTR 「それでCULTIVATE(東京・小伝馬町)にさくちゃんの展示“うず”を観に行って、できないDJミックスを作るよりも新しい曲を作ったほうがいいな、と思ったんだよ。ていうか曲を作らないとダメでしょ、っていうくらいの存在感だったから。やる気になって。それでNAGくんにも“すごいからすぐに観に行ったほうがいい”って話して観に行ってもらったんですよ」

――近藤さんの絵ありきで曲を作り始めたんですね。
MTR 「そうですね。CULTIVATEで観た絵のイメージから、こういうのが合うかな?っていう感じで何曲か作って、少し溜まってきたところでさくちゃんに渡して。そこからさくちゃんは“GREY SCALE”の絵を描き始めたんだよね。そういう意味では“うず”から繋がってるといえば繋がってる」

――近藤さんはそもそも、CARREのことをどういった経緯で知ったのでしょうか。
近藤 「友達の植本一子から2人の事は聞かされていて、“CARRE”っていう名前は以前から知っていたんですよ。聴いたことはなかったんですけど。初めて聴いたのは、たぶん2011年くらい。たまたまオルグ(東京・南池袋ミュージック・オルグ / 2014年閉店)にライヴを観に行ったら出ていて」
MTR 「その時ってさ、元々何を観に行くつもりだったの?」
近藤 「忘れちゃったけど(笑)。とにかく“CARREすごい!”と思って。ライブが終わって外に出たら2人が車に機材を積んでいて、全然面識ないのに“すっごい良かったです!”って言って、満足して帰った」
NAG 「あはは(笑)」

――近藤さんは元々どんな音楽がお好きなんですか?
近藤 「生活に欠かせないもののひとつではあるけど、何かひとつの音楽が好きっていう感じはありませんね。気分とか天気とか季節で聴きたい音楽は変わります。知らない音楽を聴くことはとても好きです。強いて言うと歌が入ってるものよりも、音が秀でてる音楽が好き。ライヴも友達が企画したり出演したりしているものを中心に行ったりします。学生の頃に“RAW LIFE”とかには遊びに行ったりしてました。その時に出てたんだよね?」
MTR 「出てたよ」
近藤 「その時は何を聴いてたんだろうなあ……」

――オルグというサイズの場所で出会ったのが良かったのかもしれないですね。
近藤 「そうかもしれない。会場が狭くて、しかも一番前で観てたから距離が近かった。ミヤジ(宮崎岳史 / オーガナイザー / 東京・渋谷 7th FLOOR)は昔からの友達で、おもしろいライヴがあるとよく誘ってくれるんですよ」
MTR 「さくちゃんはミヤジがTEE PARTYでやってるレーベル(CADE)のロゴを描いたりしてるもんね」
近藤 「描いてる描いてる」
MTR 「僕もCADEから出品してるから、お互いけっこう近いところにはいたんだよね」

――CARREの音楽と出会って、ご自身の作風と通じるものを感じたのでしょうか。
近藤 「共通点というより、“こういう風に絵が描きたい”って思ったんですよ。ライヴに行って感動すると、そういう絵が描きたくなるんです」

近藤さくら + CARRE exhibition "GREY SCALE" @<a href="http://kata-gallery.net/" target="_blank" rel="noopener"><span style="color: #ffffff;">KATA</span></a>
近藤さくら + CARRE exhibition “GREY SCALE”, 2015 @KATA

――CARREとしては、特定の何かに対して曲を作るという方法を、それまでに試したことはあったのでしょうか。
MTR 「依頼されて即興で『メトロポリス』に音を付けたことはありましたけど、しっかりとしたやり取りを経て何かを作り終えるというのは、やったことがなかったですね」

――『GREY SCALE』は、これまでのCARRE作品と比べると、音が一歩後ろに下がった作風になっていると感じました。
MTR 「そうだと思います。作った中からそういう曲を選んだので。だから、“これはこのアルバムには入らないな”と思ってボツにしたアウトテイクも多いんですよ」

――その選曲は絵を引き立てるという意味で?
NAG 「そうですね」
MTR 「もう少し“音楽”っぽいものは今回ほぼ全部ボツにしました」

――“音”としての部分を重視して。
MTR 「そういうことですね」

――それは近藤さんの要望に応えてのことだったのでしょうか。
MTR 「いえ、こちらで勝手にそう思って。NAGくんとの話し合いの中で決めたことですけど」

1 2 3 4 5