Adrian Sherwood

Adrian Sherwood

――レゲエ / ダブと接した仕事の傍ら、エンジニアとしてSKINNY PUPPYやMINISTRY、KMFDM、NINE INCH NAILSをはじめとするエレクトロニック・ボディ・ミュージックや、DEPECHE MODEなどのミックスも手がけていらっしゃいますよね。そういったアーティストたちとレゲエってすぐに結びつかない気がするのですが、どういった経緯で手がけることになったのですか?
 「MINISTRYのAlain JourgensenやDEPECHE MODEのプロデュースをしていたDaniel Millerは、僕のところまで来て“一緒にやりたい”と言ってくれたから、引き受けることにしたんだ。レゲエだけに留まらないで、どんどんチャレンジしていきたい気持ちもあったから、おもしろそうだと思って」

――音楽的には?好きでしたか?
 「うん、好きだよ。でも家でじっくり聴くほど好きかって聞かれたらノーだな。こういう場では正直に言わないとダメでしょ(笑)?」

――(笑)。僕はSherwoodさんが手がけたEBMの作品が大好きです。特にMINISTRYの『Twitch』は、イカれたテープ・ワークや変態的なパニングなど、On-U印のミキシングがエクストリームに現出した作品だと思うんです。ああいうミキシングはどうやって編み出していったのでしょうか。
 「それはMark Stewartと一緒に作っていった。エクストリームにミックスする術は彼から学んだんだよ」

――でも本当は、もっとルーツ・レゲエ寄りのサウンドがお好きなんですよね?
 「そんなことないよ。ジャズやブルーズ、マイナーコードでダークなものは大抵好きだよ。レゲエ / ダブでも、特にメランコリックで哀しげなのが好きだね。ムーディで歌詞も素晴らしいとなお良い。今一番良い例を挙げるとLittle Axe(Skip McDonald)の『If You Want Loyalty Buy A Dog』みたいなね」

――あのアルバム最高でした。
 「でしょ!? ルーツ・レゲエ + ブルースって感じでマイナーコード満載で最高に美しいんだ。ブルースが好きな人はブルースじゃないって言うかもしれないし、ルーツ・レゲエが好きな人はブルース過ぎるって言うかもしれないけど、僕にとっては完璧なバランス。レゲエだけ、ブルースだけ、っていうのはあまり好きじゃなくてね。そこにチャレンジが入っていないと新しいものが生まれないと思うし」

――レーベルを始めた頃も、ダブはフューチャー・ミュージックを作り出すためツールのひとつだったのではないでしょうか。
 「始めた頃はそんな事全然考えてなかったよ(笑)。でも作品を作っていくうちに、新しいものを作るほうが楽しいってだんだん思うようになっていったんだ。今も自分の新しいソロ・アルバム(『Survival & Resistance』)を作っているところなんだけど、それも音に色んなスパイスが入っていて、ただダブなだけじゃないんだ。今までで一番自分らしい作品だと思う」

――様々な要素を吸収して進化を続けるのはOn-Uの大きな特徴でもありますよね。NEW AGE STEPPERSの最新作『Love Forever』もモダンで、それを象徴していると思います。
 「『Love Forever』聴いてくれたの?」

――もちろん。素晴らしかったです。
 「よかった!ありがとう」

Adrian Sherwood / Ali Up
©Kishi Yamamoto

――レゲエの進化のひとつに、ダブステップが挙げられますよね。ダブステップ以降、レゲエに対する注目度が再び高まっているように思うのですが、いかがですか?
 「そうだといいなって思うよ。ダブステップは最高の進化型のひとつだからね。でも、ひとつ問題なのは、その裏側でジャマイカのレゲエが死に絶えつつあるっていうこと。新しいSly & Robbie、若いプレイヤーが全く出てこないんだ。ダブステップは素晴らしいけど、同時に本物のレゲエが消えてゆく傾向にあるから、僕はその火を消さないってことを目標にしているよ」

――On-Uとして、具体的に行っている策などはあるのですか?
 「そうだね、古いスタイルの作品でも新鮮に聴こえるようにいつも心がけてるよ。本物のレゲエにもちゃんと目が向くようにね。それから若い人たちと作業しながら、ひとつひとつ質の高いものを作ってゆくこと。才能ある若者はたくさんいるから、そこに僕たちの持っている知識をミックスするのは大切なことだと思うんだ」

――今、ジャマイカの若いアーティストでお気に入りはいますか?
 「ほとんどいない。TURBULENCEとかは好きだけど。今のジャマイカはヒップホップ・フレイヴァが入り過ぎてしまっているし、CDプレイヤーも持っていないようなデジタル世代が音楽そのものを大切にしていないんだよね。ジャマイカには今、国の中にレコード・ショップが2軒くらいしかないし。素晴らしいミュージシャンはたくさんいるんだけど、その才能が活かせる方向に向かっていないように見えるんだ。悲しいことだよ」

――では、現在良質なレゲエを産出する国というと?
 「イングランド。日本にも良いレゲエのミュージシャンがいることは知ってるでしょ?ドイツにもGENTLEMANみたいに優れたアーティストがいる。イタリアやフランス、ポーランドにもね。今では世界中にコミュニティがある。そうなったのはBob Marleyの普遍的な良い歌詞のお陰だろうね。ジャマイカではどんどん衰退しているけれど、世界的に見たら、もしかすると今が一番レゲエが愛されている時代なのかもしれないな、とも思うよ」

――難しいですね。
 「そうだね。でも、メントの時代から、スカ、ロックステディ、レゲエ、ダンスホール、ダブ、今のダブステップに至るまで、それぞれブームが続くってことはないわけじゃない?そうやってパーツが換わっても、全く変化しない部分がある音楽っていうのはやっぱりすごいよ」

――レゲエの変革と共に歩んで30年間、レーベルを続けていて良かったことは?
 「う~ん、何かひとつ思い出みたいな形で“良かった”と思うことはないかな。30年間、良かったことは常にたくさんあって、それが全部繋がっている感じ。例えば“あのレコードが好き”って言ってもらえたり、パーティでみんなが楽しそうにしているのを見られたり。そういうこと全部。オカンに“ちゃんとした仕事に就け”って呆れられながら続けてきた甲斐があるってもんだよ(笑)。オカンはDEPECHE MODEのレコードが売れた時ですらそんな感じだったんだ(笑)。僕自身は特に金持ちになったわけじゃないけどさ、みんなが敬意を払ってくれているのも、楽しんでくれているのも、いつも感じてるから。やっていて良かったのはそういうことだよ」

On-U Sound | http://on-usound.com/