黒電話666

黒電話666

――アーメンでの実動に至らなかったのは?
黒電話 「MIDIで躓きました。出来がダサくて。ノイズだったらもっと巧くいくと思って」
西山 「ダイレクトな反応性を求めてノイズになったわけですね。でも逆にフィードバックのノイズには、コントロールし切れない部分がありますよね?」
黒電話 「そこは最初すごく難しかったですね」
西山 「アーメンが好きな自分と、ノイズが好きな自分、その折り合いはどうつけてるんですか?激しさという面ではどちらも激しい音楽だけれど、その音楽を実現するアプローチは異なりますよね。今回の作品もそうですけど、黒電話はより構築する方向、緻密な方向に向かっている印象があるんですが、それを実現するには、もしかしたらMIDIのほうがもっと緻密に実現できるかもしれない。でも不安定なフィードバックという回路の中でやるということをあえて選んでいるわけですよね?」
黒電話 「ハーシュノイズをやる上では、若干の揺らぎみたいなものがないと暴力性みたいなものが表現できないんです。もちろんプログラミングで作られた音楽も激しいんですけど、僕はある程度の揺らぎが必要」
西山 「それはライヴとして?録音物として?」
黒電話 「基本的に全部ライヴを前提にして考えてしまうんです。だから作品を作るのが逆に難しい。これまで殆どはあえて一発録りなんですけど、普通制作ってオーバーダブしたり、後から修正もするじゃないですか。その発想になかなかうまくシフトできていないんです。ライヴでいかに表現するのか / できるのかばかりに頭がいってしまって」
那倉 「そこはでも、やっぱりアイデンティティじゃない?ジャパノイズIDだと思うんですよね。ジャパノイズにPro Toolsのイメージは持たないでしょ、普通(笑)」
平野 「でも、黒電話が一発録り / ライヴに拘るのは、“気合い一発”とか“体ひとつあればいい”みたいな魂の話以前に、“演奏の技量で差別化したい”っていうプライドなんだよね」
黒電話 「そうですね。ライヴってその瞬間にしか生まれないものだし、良い演奏をしたい。音源が好きなアーティストのライヴを観て、“音源と全然違ってショボい!”って思ったことがあったんです。音源とライヴに大差があるっていうのはけっこうショックでした」
那倉 「さまぁ~ずの大竹(一樹)が何かJ-Popのコンサートに行って、“サビの感じが違ってムカつく”って言ってるのと一緒でしょ?“一番いいところで煽りとか入れんじゃねー!”とか“俺はCDのままの一番いいところを大きい音で聴きたいんだ!”みたいな。自宅学習して現場に行くっていう意味は、ノイズだろうがなんだろうが、一緒だもんね。いわゆる再現性を求めるということは、100%現場で体験する現象というより、ノイズのヒット曲があるような感覚を前提としてるわけだよね。もっと言うと“商品”というか」
西山 「ある意味日本のノイズはギターアンプ / ペースアンプの文化。それはそれでライヴの現場では良くて、ダイレクトに伝わる演奏としての側面を最大化するわけだけど、音源として細かい音を考えた時にはまた別のアプローチが必要になってくる。もちろん日本のノイズでも、PAINJERKやASTRO、GOVERNMENT ALPHAのような人たちがいるけれど」
黒電話 「たしかに五味(浩平 / PAINJERK)さんが指標になっているところはあります。吉田(恭淑 / GOVERNMENT ALPHA)さんもいわゆる御大世代とはかなり違いがありますよね。様々な影響で近年は、ライヴと録音物に乖離があってもいいかもと考えるようになってきたんです。『Accumulation』は自分が今できる範囲で、ライヴと差が出ない程度の“録音物”を作るというチャレンジの一環です」

Accumulation
黒電話666 ‘Accumulation’, 2016

――そういった意識は、Jay Randall(AGORAPHOBIC NOSEBLEED)のレーベル(Grindcore Karaoke / Annex 1 | Pro-Noise)からリリースされたフリーDL作品『GUIDANCE × GUIDANCE』の頃にも感じられました。
黒電話 「ライヴと録音物を切り離そうかと意識し始めた頃ですね」
西山 「もっと異業種で言うと、Red Bull(EMAF)のコンピがありましたよね」
黒電話 「完全に俺だけ浮いてるやつ」
西山 「あれを1枚通して聴くと、やっぱりものすごく他と差が出てるわけじゃないですか。ノイズの方法論だと」
黒電話 「あれはあえてそうしました」

――『Accumulation』こそ、EMAFのコンピレーションに入っていたら本当はちょうどよかったような内容ですよね。
黒電話 「そうですね」
那倉 「うん。『Accumulation』は黒電話の今のトータルっていう感じがあると思います」

――黒電話さんがライン直でやっているのは、やっぱりフロアミュージックと繋がる部分なんでしょうか。
黒電話 「全然意識してなかったですね。スピーカーがあればあるだけうるさいでしょ?っていう意図でベースアンプとギターアンプはサブで使うんですけど、細かい音を出すにはやっぱりラインじゃないとダメですね。落合soupでやり始めてから、低音を出すことに注視し始めました」
那倉 「黒電話は上(高音域)よりも下(低音域)だしね。五味さんの話をすると、五味さんてENEMA-SYRINGEみたいなグラインドコアとかとも一緒にやってるのに、上が鳴る、下が鳴らないの話でライヴハウスに出るか出ないか決めちゃう。そういうのって実際あるよね。大事なことだよ」
西山 「アウトプットにそれだけ責任を持っているってことですよね。例えば池田亮司さんみたいに、自分の思い描くアウトプットができなければ絶対ライヴをやらないっていう人もいて、それは自分の音の責任を引き受ける、ということでもある。逆にアウトプットはPAさんに任せて、ひたすら“演奏だけやります”という方法論ももちろんあるけど」
那倉 「それで言うと黒電話とENDONはけっこう似てるよ。“どっちも”でしょ?やんや言うし、お任せもする(笑)」
西山 「おいしいところを取りたい(笑)」
那倉 「そうそう。だからPAの人と会話する機会が増えるよね。自然と」
黒電話 「うん、PAさんとの交流は大事ですね。それで左右されるし」
那倉 「丸投げするわけでもないし、こっちのドグマがあるわけでもなくて、想像で“どうすかねえ?”みたいな。“なんとかなりませんかねえ……”とか言って。そういうタイプだよね(笑)」
西山 「実際、ハコの音はそのハコのPAの人が一番よくわかってるし、自分の音は自分が一番よくわかってるわけだから、それが正しいんじゃないですか?ノイズでありがちなのは、PA側との相談自体はあっても、もっと“闘い”の様相を呈してくるということ。“デカい音を出すためには勝ち取らなくてはいけない”みたいな意志と現実的なシステムのキャパとのせめぎあいになったりもしますからね。オーディオの信号としてノイズの鳴らし方をどう模索できるか、というのは重要なポイントだと思います。特に録音物は」
那倉 「だから、体の良いことを言っちゃえば、そこは“新しいノイズの鳴らし方を模索する姿”だと言っても過言じゃないと思うね。PAの人に相談するっていうのは。居直ってないんだよ」

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