DJ Highschool

DJ Highschool, 2015

――今はどんな機材で制作されているのですか?
 「Native InstrumentsのMASCHINEと、シンセで鍵盤弾いたり。あとBOSSのSP-505も使ってます」

――MASCHINEはちょっと値が張りますけど、今もバカみたいに高い機材を使っているわけではないんですね。
 「そうですね(笑)。身近なもので、っていう感覚ですね」

――でもたぶん、トリルウェイヴとかもHighschoolさんがカセットMTRで作っていたのと感覚は一緒なんですよね。素材やメディアがネットになっただけで。
 「そうなんですよね。だから、SpaceGhostPurrpとかが出てきた時は正直、全然新しいとは思わなかったんですよ。やっとこういうものが認められる時代になったんだな、みたいな(笑)。AnticonとかCOMPANY FLOWのリヴァイヴァルと言える部分もあるけど、今の人たちは見せ方、聴かせ方が圧倒的に上手いですよね。かっこいい」

――今名前が挙がったような人たちは、ヒップホップのフィールドに留まらない支持を獲得していますよね。Highschoolさんのトラックも、ヒップホップとして使われていることが多いにせよ、所謂“ヒップホップ・マナーのトラック”を作ろうとはしていない印象を受けます。
 「ヒップホップを作っているという意識はありますけど、“黒いもの”を意識して作るということはないです。黒人になりたいと思っているわけではないんで。それよりも自分が、この東京で生活しているリズムのほうが大事ですね。90年代のサンプリング・ヒップホップも一通りは聴いてきましたけど、そこまで影響は受けてないし、もうちょっと変わったことをやっている人のほうが好きだったんで」

――サンプリングに関して言えば、やっぱりインターネット以降の感触がありますよね。個人的にはNapolianに近いものを感じました。
 「サンプリングって、その人が今まで聴いてきたものの表れだと思うんですよ。黒人がソウルをサンプリングするのは、生活の中にソウルがあって、あの曲をここで使ったらおもしろいんじゃないか?っていう感覚だと思うんです。僕もソウルは好きで聴きますけど、それよりも自分が通ってきたもの、身近にあるものをサンプリングするほうが好きですね。そういうマインドがヒップホップなんじゃないかな、って僕は考えていて」

――そうですね。そういう意味では非常にヒップホップです。それが“ザ・ヒップホップ”みたいなものとは別種の質感を伴っているというのはおもしろいですよね。アルバム中最もストレートなヒップホップの「Go Dumb feat. CENJU & ILL-TEE(MidNightMeal Records / MEDULLA, ROCKCRIMAZ)」が異色に響いてしまうという。
 「たしかに僕の中でも“Go Dumb”が一番ストレートなヒップホップですね。そういう“黒い”ヒップホップで良いものはもちろんたくさんあるんですよ。でも、それは僕がやらなくても誰かが絶対にもっとかっこいい形で具現化してくれるんで。MASS-HOLE(MidNightMeal Records / MEDULLA)だったり、ISSUGI(MONJU)だったり。そういう中に1人こういう奴がいてもいいんじゃないかな?っていうところですね。同じことをやっても、やっぱり勝てないんで。勝負という面で考えれば」

――BBHの時は“サイケデリック・ヒップホップ”と称されていましたが、単独作ではサイケデリックはサイケデリックでも、どちらかと言えばドリームポップ寄りのサイケデリアという印象を受けました。そのあたりのバランスは意図的に作っているのでしょうか。
 「BROADCASTとか、そういうのが好きなんですよ。所謂サイケデリック・ロックのサイケではなくて、90年代インディロックのサイケ感というか。YO LA TENGOもかなり好きです。そういうのはだいたい、嫁の影響なんですけど(笑)。あとはMERCYくんに教えてもらったり。ハードコア・バンドの間でシューゲイザーみたいなのがリヴァイヴァルしてるって」

――NOTHINGとかですか?
 「そうですね。WHIRRとか。ちょっと夢見心地な音楽がやっぱり良いですね。Martin Rev(SUICIDE)みたいな音楽も好きです。音色的に、電子音が好きなんですよね」

――「Return Of The Sunset」では8bit音源が使われていますが、あれは何かのゲームの音源ですか?
 「それがまさにMartin Revの曲を切り刻んで使っているやつです。何かエフェクトはかけたと思うんですけど、ゲームっぽく聴こえますよね」

――潰れたデジタル音源のリッピングノイズを使っているのも印象的でした。
 「ああ~、それはTac-Rocですね。あいつはそういう音で作ってるんです。活動っていう活動はほとんどしていない奴なんですけど、たまにポストにトラック集が入ってるですよ(笑)。ただただ作っているのが好きな奴で」

――フィーチャーされているラッパーの皆さんはどのように選定していったのでしょうか。
 「1stなんで、身近にいる人たちというのを意識して選びました。あとは若い人も入れてみたかったから、MERCYくんに紹介してもらった20代前半のJuceとCookie Crunchにもお願いして。彼らはレコーディングとかラップがやりたいっていう意欲がすごくて、刺激的でしたね。ブースから全然出てこないんですよ(笑)。僕らの世代は1回やってみてダメだったら休憩しよう、みたいな感じになるんですけど、JuceとCookie Crunchはちゃんとできていても、さらに少し上を目指すというか。かといって熱い感じというわけでもなくて、当然のことのようにストイックなんですよね。その分スキルも高くて。すごいですよ」

――そうやって下の世代と繋がっていけるのは良いですね。
 「音楽をやっていると、そういうことがあるからおもしろいんですよ」

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