三富栄治

三富栄治

――今回、メロディも入り込み易い、シンプルな種類のものが多いですが、それもそういう部分を意識して?
 「そうそう。わざと難解にするのとか、全く興味がなくて。わかり易く、気持ち良いとか、綺麗だね、とか。そう思ってもらえたらいいな、っていう。それだけですね。シリアスに考え過ぎると、八方塞りになっちゃう。音楽はこうじゃないとダメだ!とかさ。そんなの、自分で決めてやってもしんどくなるだけだと思うし。まあ、歳を取ったっていうのもあるのかも。やっぱり30越えてくると、色々どうでもよくなってくるじゃないですか(笑)。そのまま見せちゃえ、みたいな。それって、自分自身に対しても、人にも優しくなれることだと思うんですよ。そういうことが自然に思えるようになってきたのかな」

――ノスタルジックな風合いは変わらないですよね。
 「たぶんシンプルな音楽だからそうなるんですよね。シンプルな、本当に昔からあるようなメロディでもう十分なんですよ。今のところはそんな感じです。そういうところにしか、自分の得意なところがないとも思うし。曲のムードみたいなものの中に入っていって、そこで聴こえてきたものを音楽にしているみたいな感じなんで、それが出来れば自分の曲としてはもうオッケーだから、特に変わったことはしたくないんですよ」

――曲のムード?
 「情景というか。その情景の中で起こっているドラマなんかがあって、その世界の中の音楽を作るみたいな感じかな」

――その情景は実体験に基づくもの?
 「じゃないですね。想像。誰かのことを考えたりしてることが多いですね」

――きっかけは現実としてあるんですね。
 「うん。そこから想像の世界に行くんですよね。今回のアルバムの曲に関しては、今まで一緒に音楽をやったり、自分が生きてきた中で関わった人のことを考えたかも。そういう人たちのことを考えていると、情景が浮かんできて」

――三富さんの曲が持つノスタルジアって、垂れ流しとか切り売りみたいなものとは違って、もっと根深いものを感じるんですよ。それはそういうところから出てきているのかもしれないですね。
 「何でだろう(笑)。僕がその情景を、執拗に見てるからかもしれないです。だから、さらっとしていないのかも(笑)」

――情景から生まれてくるものだけに、今回のアルバムもサウンドトラックを思わせる仕上がりになっていますよね。映像なき映画というか。
 「そうですね。所謂サントラは映画ありきのもので、音楽だけでは物語が成立しないと思うんですけど、僕はアルバムとして物語性を持つものを作りたいなっていうのがずっとあって。アルバム単位で楽しむというか。ある程度の尺がないとカタルシスがないんですよね」

――起承転結という部分で。
 「そうそう。昔よく聴いていたFENNESZの『Endless Summer』とか、TORTOISEの1st、2ndとかね、やっぱりトータルで世界を作るみたいなことをやってたいと思うし。最後の曲これかよ!みたいなのところで妙にかっこいいと思ったり、そういうのが好きなんですよね。あと昔から写真集を見るのが好きで。あれも並べてストーリーを作るものだと捉えているんですけど、それを音楽でやるっていう」

――今回のアルバムでは演奏者の皆さんと、ナラティヴの共有はどのようにされたのですか?
 「今回は時間の関係もあって、共有していないんです。楽しんでやってもらいたかったから、あまり頭でっかちになるよりかは、素直にアプローチしてもらって、活き活きしてるところを僕が使ったほうが良いな、と思って。それをどう意味付けしてくかは僕がやればいいかな、というところで」

――パーソナルな物語を形にしていくという点では、アンサンブルではなく、独りでの演奏の方が表現し易いんじゃないですか?
 「そうですね、独りで黙々と曲を作ったりするのが好きなのは変わらないんですよ。でも、客観的には見られないっていうのもあるじゃないですか。だから、逆に演奏しないっていう選択肢も考えて。大袈裟かもしれないですけど(笑)。Ennio Morriconeみたいなスタイルに興味がありますね。あの人はピアノが弾けるけど、スコア書いてみんなに演奏してもらって、自分では演奏しないじゃないですか。あそこまで大きいことは出来ないですけど、それのミニ版ができたらいいなって。今回のアルバム、自分でギター弾かなくてもいいかな、って結構本気で思ってたんですよね」

――本当に!?
 「うん。曲が良くなるんだったら、別の誰かに弾いてもらった方が良いから。上手い人はもっとたくさんいるじゃないですか」

――いやいや!でも実際ギターに拘りはあるでしょう?
 「ずっとギター1本でやってきたから、“ギタリスト”っていう印象を持たれているとは思うし、“三富さんのギターが好きだ”って言ってくれる人もいて。それはすごく嬉しいことで、これからも続けますけど、曲作りの上で扱い易いからギターを使っているだけで、それじゃないとダメっていうのは全然ないんですよね。音を比べてこっちのアンプの方が良いとか、このギターの方が良いとか、そういう意味での拘りはあるんですけど、それは音楽が良くなればいいっていうだけのことなんですよ。そもそも、さっき言った情景、イメージから受け取ったものを形にしたいだけだから、僕がギターを弾かなくてもそれが再現出来ていればオッケーなんですよ」

――曲が自分から離れたところに存在しているということ?
 「そうですね。僕がたまたま媒体になっているだけで」

――イタコ的な?
 「ん~、まあ、そういう感じ(笑)。だから “三富”っていうんじゃなくて、“音楽”がもっと広がってくっていう風にしたかったんですよね。俺はこういう人間だからこういう曲を作ってみた、ドヤ!みたいなのはちょっともう、疲れちゃうし。さっき言ってくれた“根深いもの”みたいに、自分でも意図しないところで、放っておいても浮かび上がってくるものが結局オリジナリティだと思うから。このアルバムを通して聴いてみたときに、光が旅をしているような情景が浮かんだからこのタイトルにしたんですけど、“ひかり”って、“火を借りる”っていう語源もあるらしいんです。それに後になって気付いて。元々どこかにある火を借りてきて“ひかり”になるっていう話に感心しまして。僕が曲作りにおいてやっている、イメージから曲を受け取るっていうのも、“音を借りる”っていう感覚に近いんですよね。借りたものを形にして返したいっていうか」

――“自分が意図していない”ことと繋がる部分ですよね。
 「うん。例えば、“蝶”っていう曲は『TRAIL』の撮影で行った鳥取の自然の中で作った曲が原曲なんですね。虫がすごくたくさん、24時間ずっと鳴いているような感じで、その生命力に感動して作ったんですよ。虫っていいな、って思って(笑)。あいつらって、何だかわからないものに突き動かされて鳴いてるわけじゃないですか。たぶん自分も同じなんですよ。そういう何かがキャッチできるんだったら、それを形にして返したいんです。大きな流れ、連鎖の中で自分がもらってきたものがたくさんあるから、何かを作って出すんだったら、そこからまた良い連鎖が起こるものにしたいんですよね」

三富栄治 official site | http://www.eijimitomi.com/
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