少ない選択肢からアイディアを絞って
取材・文 | 久保田千史 | 2015年2月
main photo | ©Yusuke Nishimitsu 西光祐輔
――『New Games』をリリースしてからの反響、大きかったんじゃないですか?
「反響はありましたね。そんなに広がったりしない音楽かな、と思っていたので、すごくびっくりしたというか。HEADZから出したというのも大きいとは思いますけど。やっぱり、日本で出すことになったらHEADZが一番合ってるかな、と思っていたので」
――それは以前から思っていたんですか?
「思ってましたね。でもHEADZからのリリースが決まったのは、初めてライヴをやった直後くらいだったんですよ。iPhone4台くらい使って、それぞれのパートを撮影するっていうミュージック・ビデオみたいなものを作って、“よかったら観てください”くらいの感じで言ったら“じゃあうちから出しましょう”みたいな話にすぐなって(笑)。その時点ではまだ2曲しかなかったんですけど」
――じゃあ1stはけっこう慌しかったんですね。
「慌しかったですね。リリースが決まったところから“じゃあ、がんばります!”みたいな感じですぐ作って。本当に、“がんばって作った”という感じでした(笑)」
――それに比べたら今回はじっくり作れました?
「そんなこともなくて(笑)。リリース・パーティのことを先に決めて、それに向けてちょっと作っていきますか、と思っていたんですけど、気を許してソロをやったり、ほかのことをやっちゃったりして。ぎりぎりになって一気に曲を作る感じでした。年末年始が本当、鬼のように忙しかったです。三が日は30時間くらいデモ作りだったし……」
――そもそも、先にリリース・パーティの日取りを決めるというのはどういった意図から?
「先に決めておいたほうが動く、っていう性格だから(笑)」
――制約を設けて、というか。
「そうですね」
――それって、goatの音楽性にも通じる部分があるような気がしますね(笑)。
「たしかに(笑)。ルールはありますからね。でも本当は、メンバーにもすごく言われるけど、もうちょっとゆっくり録りたいんですよ(笑)。最後のレコーディングが1月の中旬くらいだったんですけど、元旦に最後の曲を作り始めた感じで。練習する日が10日も残ってない、みたいな」
――goatは練習しないとかなり厳しそうですよね。
「だから大変でした。特にドラムが難しいから、ワー!ってなってたけど(笑)。本当ごめん!頼むからやってくれ!とか言いながら。ギターはけっこう簡単に弾けるように作ったけど(笑)。ほかのメンバーに皺寄せが行ってるっていう。そこから1日5、6時間くらい毎日練習して臨みました。大阪のCONPASS(心斎橋)でレコーディングしたんですけど、スケジュールぎりぎりだったから、オールナイトだったりでみんなぼろぼろになって」
――かわいそう……(笑)。練習やレコーディングがキツそうなのは音楽からもなんとなく想像出来るのですが、作曲はどのように進めていくのでしょう。
「全楽器のデモを僕がパソコンで作りますね」
――それをメンバーにはどうやって伝えてゆくのでしょう。譜面で?
「そうです。譜面……と言いうとちょっと大それてますね。僕が打ち込んだソフトのスクリーンショット撮って(笑)。順番とかループの回数をまとめて送る感じです」
――作曲の時点でかなりメカニカルなんですね。
「そうですね。機械になりたい(笑)」
――機械になりたい、ですか。
「そうそう(笑)。そう思いながらやってます。だから、本当は別に僕がギターを弾かなくても良いんですよ。もっと上手い他の誰かが、僕の代わりにやってくれたら全然オッケー」
――それを現在は、“他の誰か”にやらせたりマシーンに任せずに、ご自身と仲間でやられているのにはどんな意味合いが?
「なんだろう……最初に設けたルールというか、“そう決めたから、そうです” という感じなのかな……。僕ソロではテクノとか作っていて、マシーンを使うのはけっこう自分でやってるし、やっぱり人間が弾くグルーヴのおもしろさがgoatには必要だから。機械は絶対使わない。あくまで完全にフィジカルで、今のメンバーで、ギター、ベース、サックス、ドラムを絶対に使って、かつ使う範囲をかなり限定して、作るという」
――ではその、“今のメンバー”であるべき理由は?
「ベース(田上敦巳)は僕の高校からの友達だし、ドラム(西河徹志)、ギター、ベースは前身バンドのTALKING DEAD GOATS ’45からそのまま。そこにサックス(安藤暁彦 aka AKN / KURUUCREW)をプラスして。僕がやろうとしているサックスで考えたら、彼しかいない、という感じで。まあ歳も近くて、近いものが好きだったりするし」
――そこはわりと必然的にというか。人間的な部分も大きかったりするんですね。
「そうですね、完全に」
――goatの“使う範囲をかなり限定”した演奏は、例えばギターであれば“ギターじゃくてもよくね?”と思わせる部分もありますよね。そこを今の楽器編成にしているのは、あえての選択なのでしょうか。
「ギターはまあ、僕がギターを使ってたから。ベースはベースを使ってたから。“今のメンバーで” やろうって決めたから、それぞれが使ってた楽器でやる、という感じです」
――そこも必然なんですね。それぞれ卓越したプレイが可能な楽器で、制約を設けてやろうと。
「そうですね。もしベースがチェロだったらチェロでやってたと思うし」
――さきほど“もっと上手い他の誰か”とおっしゃっていましたが、goatを始めるにあたって、自分が夢想する音を具現化する人間を新たに集めようという気持ちはなかったのでしょうか。
「なかったですね。3人でやっていた時に土台を作って、そこに必要だったサックスを足したので“人を集める”ということ自体考えていませんでした。“4人で”というのもある種制約的なんですけど」
――そうなんですか?
「人数を絞るほうが、やり易いんですよ。広げ過ぎると色んなことが大変になってくる。だからドラムもキック、スネア、ハイハットの3点しかないし、少ない選択肢の中からアイディアを絞って作曲しています」
――goatは、人力ミニマルの“グルーヴ”について言及されることが多いと思うのですが、あまりグルーヴに付随する機能性を前提とせずに曲を作っているような印象を受けるんです。“躍れる”とか“盛り上がる”といった効果を得るためじゃないというか。
「そうですね、“躍らせる”とかっていうことは全く前提にしていないですね。僕が作りたいと思ったものが“結果的に踊れる”というようなとはあったりしますけど、そこは狙っているわけではなかったりしますね。例えば、アルバムの最後に入っている“On Fire”っていう曲なんて、僕的には全然踊れないと思うんですけど(笑)、よく“これが一番踊れるかもしれない”って言われるし、反応を見ていてもそうなんですよ。だからよくわからないですね。躍らせるにはどうしたらいいか、というのは。でも、“何故このフレーズが必要なのか”というようなことは僕的に考えつくしてはいます。今回のアルバムに関しても、2パターンあるんですよ。“テクノ脳” で作った曲と、“バンド脳” で作った曲と(笑)。例えば“Rhythm & Sound”っていう曲はテクノ脳で、ギターのフレーズがずっと一緒でかなりシンプルでミニマルな展開。“Solid Eye”は基本的にはバンド脳で作ってるから展開がたくさんあるけど、その中でミニマル感を足したりとか。そうじゃないと普通のバンドになっちゃうし」
――ライヴ・パフォーマンスの面でも、goatは“普通のバンド”ではないですよね。所謂“普通のバンド”は、パフォーマンスでも高揚感を煽ろうとするわけじゃないですか。“熱いライヴ”みたいな。
「まあ、そうですよね(笑)」
――goatは真逆ですよね。演奏に没入していて。だから、プレイ中はどんな気分なんだろう?と思うんです。
「どんどん内に入ってゆくというか……お客さんのことをどれだけ気にしないで曲に集中出来るか、という部分が大きいです。それ以外はなるべく考えない。“曲を正しく演奏する”ことに徹してますね。けど、反復による高揚感はやっぱりあるんですよ。お客さんが観てるいることによって、それが高まることも実際ある。それをシャットアウトしようとは思わないですけど、開放し過ぎると演奏がおぼつかなくなってくるんですよ。技術的、精神的な問題だったりもするかもしれないけど。そこで開放を我慢するほうが、後の高揚感が大きかったりする、っていうのはありますね(笑)」
――ドMっぽい感じの(笑)。
「そう(笑)。静かに曲が終わって、よし!みたいな感じの(笑)」
――達成感というか。
「そういう感じはありますね、本当に。積み重ねて、積み重ねて、出来た時が一番の高揚感ていう感じ」
――聴いている側としては、その、ある種の緊張感にシンクロしてしまう感じがあります。だから、goatの高揚感はお客さんの高揚感でもあるのかもしれないです。
「最初は僕、観ていてもおもしろくないだろうな、思っていたんですよ(笑)。自分が高揚出来るからやってるというか。じっと見てくれる人がまあ10人に1人くらいいてくれたら嬉しいな、くらいの感覚で始めたんです。本当に。1stの反響に驚いたのは、それもあったからなんですよね。自分のことを考えることによって、まあお客さんのことを考えてることにもなるという」
――リズムも直線ではなく複雑なのに、吸引力があります。すごくポリリズミックな作りなので、“トライバル”と言われることも多いのではないでしょうか。
「そうですね」
――“ポリリズミックだからトライバル”という見られ方に、腹立てたりしませんか(笑)?
「いえいえ、僕何言われてもムカつかないですよ。解釈が違うだけだと思うんですよ。自分が思っていることと違うように書かれてしまったら嫌だ、このライターはダメだ、みたいなことを言う人もいますけど、僕はどう書かれても良い。間違ったこと書かれてても全然良いし。別にどうでもいい(笑)。仮に間違って伝わって、結果それで聴かれるチャンスが少なくなってしまったとしても、聴いてくれた人が自分で判断してくれたらそれで良いと僕は思ってるんだけど」
――そうですね。実際はどうですか?アフリカン・ドラミングを彷彿とさせる部分があったり、レゲエ / ダブの要素を持ち合わせていたりしますよね。そういうものに影響されてはいるのでしょうか。
「影響はやっぱりありますよ。うん、大いにありますね。『Rhythm & Sound』っていうアルバムのタイトル自体そうだし」
――本当にBasic Channelからなんですか(笑)。
「そう(笑)。まあMoritz(Von Oswald)からの影響はすごくあるんですけど、自分がアウトプットした時にMoritzになるかと言うと、そうでもないというか。でも、僕的には“Moritzっぽくやってみよう!”みたいなのは全然あるんですよ」
――そういうのあるんですね。
「ありますあります。めちゃくちゃありますよ(笑)。アルバムの中にも、僕的に“完全にMoritz!”っていう曲があるんですよ。“Ghosts”がそうなんですけど」
――そうですよね、飛ばしも効果的で。
「そうそう。でも“Rhythm & Sound”ってまさに僕らのことだな、と思って。今回のアルバムはタイトルを決めてから作り始めたんですよね。“On Fire”は昔からやってるから違うけど」
――何かを決めてからやる、っていうのが多いんですね(笑)。
「多いです(笑)。けっこう。ソロも一緒で、“これだ!”っていうコンセプトを決めてから作ったほうがすぐ出来る。“ロウハウスっぽく”とか。そういうぼんやりしたコンセプトでもいいし。でも、決め過ぎると外れ難くなっておもしろくないから、がちがちにコンセプチュアル!みたいな感じでは全然ないですけど」
――日野さんはgoatを含め、スタイルが全く違うプロジェクトを多く展開されていますよね。でも、どれも一貫性を強く感じるんです。
「やりたいことをただやっているだけなので、僕自身は一貫性がなくても良いと思ってるんですよ。でも結果的に、変なところでストイックだけど外したい、ふざけたい、みたいな性格が全部出ちゃってるのかも(笑)。そういう一貫性は出てるのかもしれないです。逆に、僕が全部作ってるから、bonanzasとgoatをどう住み分けるか、みたいなことは考えますけど」
――birdFriendのラインナップも様々ですよね。あれはどういう感じでセレクトしているのでしょうか。
「人によるんですけど、今のところ一番多いのは僕自身がファンの人に声をかける感じですね。今まで作品を作ったことがなくても、この人の作品を聴いてみたい、って思う人。あとはカセットレーベルならではの実験的なものかな。例えば、元々バンドをやってる人がソロで違う表現を試みようという時に、ちょっとたじろぐことがあるじゃないですか。僕はそういう人が多いと思っていて。だから、とりあえず作品を出してみたら何か変わるかもしれないよ、という意味で声をかけるとか。でも、今年からはちょっとやり方を変えるつもりです。もっとリリースが海外寄りになってくると思います。2014年は僕の好きな人たちの作品をほぼ毎月1本出してきたんですが、元々テクノ / ハウスレーベルとしてやっていこうと思っていたけど日本にはテクノのプロデューサーが少ないので、テクノ / ハウスは僕のリリースで補ってきました。今、海外のテクノ・アーティストで2、3組決まってるから、今年は半分くらい海外のものになると思う。これまでは、どういうことになっていくかな?っていうのをちょっと様子見ていたところもあったんですよ。広がり方とか。ある程度土台が出来たので、次のステップに行こうかな、という段階ですね」
――色々長期スパンで考えていらっしゃるんですね。
「そうですね。本当は一気にやりたいけど、ゆっくりやらないと出来なかったりするんですよ。特にレーベルに関してはお金的な問題もすごくあるし。それに、頻繁過ぎると逆に広がらない。海外のカセットレーベルって、一気に4、5タイトル同時にリリースするじゃないですか。それは少なくとも今自分の環境ではマイナスかな、とは思っていて」
――忍耐力ですね。
「いやっ、単純にお金がないから(笑)。やっぱりそこはデカいですよ。自分の性格的に、一気にやり切ってしまうと後に続かないというのもあるし。やっぱり長く続けるということが一番重要。特にこのカセットレーベルに関しては。とにかく数をリリースして、おもしろくなるのはたぶん後からかな、って思ってるので。だから、カセットは売り切りですけど、曲はBandcampで聴けるようにしてるんですよ。後追いの人でも優しく入れるように」
――そこまで考えていらっしゃるんですね。 “関西最重要人物”というコピーは伊達じゃないですね(笑)。
「いやいや、あの、僕もそれはちょっと……って思ってたんですけど(笑)!先輩たちに“おっ、最重要人物の日野くんだ”とかイジられるし……。別にいいすけど……(笑)」
――でも、現在関西で、日野さんみたいに先を見据えて活動されてる方ってほかにいらっしゃるのでしょうか。
「わからないですけど……そうですね、ぱっとは浮かばないですね。大阪の良さっていうのは、良い意味で後先考えない瞬発力だと思うんですよ。あふりらんぽにせよ、巨人ゆえにデカイにせよ、オシリペンペンズにせよ、そういう良さがあるから。だから、僕がたぶん大阪っぽくないんですよ。考え方的に。ある意味、悪く言えば打算的というか。そういう大阪っぽい人たちと自分を比べて、自分てどうなんだろう……って悩んだ時もありました(笑)。今でもそれは思うし。あと関西の同世代から下で、共感出来る人は本当に少ない。ある意味ラッキーではあるんですけど。この前、大友(良英)さんの“Asian Meeting Festival”に呼ばれて、“来年もまた是非”と言われてすごく嬉しかったし、正直すごく出たいけど、こういうのはもしかしたら違う人に譲ったほうが良いのかもしれないな、っていう気持ちもあって。もっと面白い人もいるよ、みたいな。そうすると先輩たちになっちゃいますけど。年下のおもしろい人ってなかなかいないから」
――関西から外に目を向けるといかがですか?
「そうですね……北海道はおもしろいかな。北海道と九州。でも本当にピンポイントですけどね。たぶんその人たちも孤立してると思うし。だから、“ここのシーンがおもしろい”っていうのはあまりないかな。僕としては」
――カセットテープ・レーベルで言えば、東京のSLUDGE-TAPESをはじめ、コンスタントにリリースを続けているレーベルが国内にいくつかありますよね。そういう人たちにシンパシーを覚えるようなところはありませんか?
「うーん……シンパシーは正直あまり感じないです。日本では“出しまくる”っていうやり方の人はあまりいないと思うし。海外ではそういう人ばかりだと思うんですけど。でも今の自分の趣味的に、SLUDGE-TAPESは好きです。少し道は違えども、miclodietはやっぱり常に気にはなってるし、良い影響を受けてますね」
――SLUDGE-TAPESはヴィジュアル面でも近い雰囲気があるかもしれないですね。
「そうですよね、うんうん」
――インターネット感というか。
「僕のデザイン、インターネット感あるのかな(笑)。最近ちょっと、違う感じに変えていきたいな、と思ってるんですけどね。最新作のJerry Paperは違う感じを出してる!って僕は思ってるけど(笑)」
――デザイン、どれもかっこいいですよ。ファニーな感覚もあって。
「ありがとうございます……。そういう感覚は、もしかしたらインターネット的かもしれないです。ちょっとパロってる感じというか。ウケ狙いですけどね(笑)。インターネット的というよりは関西的かもしれない。僕島根生まれなんで、関西じゃないんですけどね(笑)」
――birdFriendはOPQさんみたいな方もリリースされていますよね。そういうベテランの方をTrilogy Tapesっぽく出したらどうなるかな?という実験のような感覚もあるように思えたのですが。
「そういうのも有りだと思っていますし、実際少し考えてもいます。レーベルとしての方向性もあるので、慎重になっていますが。でもあくまで、ミュージシャンが作るものをレーベルのカラーに合わせることは絶対しないです。本当は全部僕がデザインしたいって思ってるし、マスタリングは(西川)文章さんにお願いしたいと思ってるけど、もしアーティストが違う風にしたいと言えば、そっちを全然優先させる。どうしてもここのデザインだけは……っていう部分はありますけど(笑)。縦に置いた時のバックは白にしたいとか、ロゴはここには入れたい、とか。そういうことを強制してそうなレーベルはありますけど、レーベルカラーを押し出し過ぎたら短命に終わるんじゃないかな、と僕は思ってるので」
――そこでも。先のことを考えていらっしゃるんですね。
「いやいや(笑)、僕は人のことばかり気にしてるだけ(笑)。僕だって、リリースする時にガチガチの“こういうアートワークが決まりだから”みたいなこと言われたら、ちょっとな~、って思っちゃうし。僕のカラーもあるから!みたいな。まあ綺麗ですけどね、統一されてたほうが。並べた時とかに」
――アートワークといえば、『Rhythm & Sound』のカヴァーアートは五木田智央さんの描き下ろしなんですよね。これはどういった経緯で実現したのでしょう。
「話せば長くなるんですよね……(笑)。僕たちは2013年の元旦からgoatって名乗り始めたんですけど、その前の2012年に、清澄白河(タカ・イシイギャラリー)で五木田さんの展示(Variety Show)があって観に行ったんですよ。五木田さんの絵はずっと前から好きではあったんですけど、その展示で観たものが今までの五木田さんのイメージじゃなくて、すごく感銘を受けたんです。ミニマルなデザインだし、挑戦してるし。パソコンで作っているように見えて、近くで観たら手描きだし。そこからgoatが始まっている気がするんですよね。プログラミングで作ってるっぽいけど人力、みたいな。その後NYでZSのライヴを観て、ミニマル感で五木田さんとZSが繋がった感じがしたのも大きかったですね」
――そこまでgoat始動に直結した存在だったんですね。じゃあ今回のカヴァーアートは嬉しいですね。
「本当に嬉しいですよ。いつかジャケットお願い出来たらなあ……とは思っていて、ダメ元でお願いしてみようかな、っていう考えはあったんですよ。でも千葉(DIC川村記念美術館)でやっていた展示(THE GREAT CIRCUS)を観に行った時に、圧倒され過ぎてしまって、お願いするのはやっぱりやめようかな、って(笑)。これはすごい、すご過ぎる!みたいな。1時間くらいしか時間がなかったんですけど、それでも圧倒的で。あと5時間くらい観ていたい感じだったんだけど。そこから考え直して再びダメ元で相談してみるか……ってお願いしてみたのが始まりなんです。喋ったこともなければ会ったこともなかったんですけど」
――でも全然、取って付けた感ないですよね。内容にもぴったりだし。
「あっ!本当ですか?そうだと嬉しいんですけど。内容聴いて描いてくださったんですよ」
――それはなおさら嬉しいですね。
「そう、だから今回本当夢のようですよ。夢が叶った!って本当に僕は思いましたもん(笑)。最後の曲を録る直前に描いていただけることが決まったんですけど、よっしゃ!がんばろう!っていう気持ちになりましたからね。僕の夢が詰まってます(笑)」
――こんなにばっちりなアルバムが出来上がったばかりですが、goatは今後どんな展開を考えているのでしょう。
「海外でやりたいっていう欲望はすごく強いですね、goatは。他にも色々ありますね。どうやって期待を裏切ろうか、っていうことはずっと考えてます。本当は今回のアルバムも、前作とは全然違うものになる予定だったんですよ。“goat終わったな”って思わせたかったというか」
――(笑)。
「次は、お客さんを全部入れ替えるくらいのつもりでいます。別に、嫌われてもいいから(笑)。“あの頃のほうが良かったよね”とか言われても何も思わないし。例えば、OGRE YOU ASSHOLEは以前と全然違うことを今やろうとしているじゃないですか。それはすごく良く理解出来るし、好きだなって思う。畑は違えど。彼らはお客さんにも優しい曲がり方だったと思うけど、僕はそういう風にはしないかもしれない」
――変わったとしても、嫌われることはないような気がしますけど(笑)。
「いや~、わからないですよ。先に行くには、何か捨てちゃったほうが良い場合もあると思うんですよ。山本精一さんしかり、EYEさんしかり。自分のものに執着がないというか。それを観てきた影響は大きいと思います。Goatに関しても、“捨てる”案はもちろんある。僕の自分勝手ですけど(笑)」
――そういう姿勢もすごくナチュラルですね。
「まあ、飾るものないですからね(笑)。飾ってたらアルバムにこういうタイトルの付け方しないと思うし」
――たしかに(笑)。僕は正直、goatはもっと、アカデミックとまでは言わないまでも、論理的な堅さを持っているかと思っていたんです。でも、なんというか、すごくハートフルだなあと思って(笑)。
「まあ、そうですね。それがもしかしたら大阪感なのかもしれないけど(笑)」
――レーベルも含めて、おしゃれなかっこよさもあるし、無敵ですね。
「いやいや、ヘコむこともいっぱいありますし……いや、そうでもないかもな。楽しんでやってるから。音楽をディスられても何とも思わないし、それで軌道修正しようとも思わないし。唯一思うのは……金がないことかな!それだけ(笑)」
Hino Projects Official Site | http://www.hino-projects.com/
birdFriend Bandcamp | https://birdfriend.bandcamp.com/