goat / 日野浩志郎

goat

――goatは、人力ミニマルの“グルーヴ”について言及されることが多いと思うのですが、あまりグルーヴに付随する機能性を前提とせずに曲を作っているような印象を受けるんです。“躍れる”とか“盛り上がる”といった効果を得るためじゃないというか。
 「そうですね、“躍らせる”とかっていうことは全く前提にしていないですね。僕が作りたいと思ったものが“結果的に踊れる”というようなとはあったりしますけど、そこは狙っているわけではなかったりしますね。例えば、アルバムの最後に入っている“On Fire”っていう曲なんて、僕的には全然踊れないと思うんですけど(笑)、よく“これが一番踊れるかもしれない”って言われるし、反応を見ていてもそうなんですよ。だからよくわからないですね。躍らせるにはどうしたらいいか、というのは。でも、“何故このフレーズが必要なのか”というようなことは僕的に考えつくしてはいます。今回のアルバムに関しても、2パターンあるんですよ。“テクノ脳” で作った曲と、“バンド脳” で作った曲と(笑)。例えば“Rhythm & Sound”っていう曲はテクノ脳で、ギターのフレーズがずっと一緒でかなりシンプルでミニマルな展開。“Solid Eye”は基本的にはバンド脳で作ってるから展開がたくさんあるけど、その中でミニマル感を足したりとか。そうじゃないと普通のバンドになっちゃうし」

――ライヴ・パフォーマンスの面でも、goatは“普通のバンド”ではないですよね。所謂“普通のバンド”は、パフォーマンスでも高揚感を煽ろうとするわけじゃないですか。“熱いライヴ”みたいな。
 「まあ、そうですよね(笑)」

――goatは真逆ですよね。演奏に没入していて。だから、プレイ中はどんな気分なんだろう?と思うんです。
 「どんどん内に入ってゆくというか……お客さんのことをどれだけ気にしないで曲に集中出来るか、という部分が大きいです。それ以外はなるべく考えない。“曲を正しく演奏する”ことに徹してますね。けど、反復による高揚感はやっぱりあるんですよ。お客さんが観てるいることによって、それが高まることも実際ある。それをシャットアウトしようとは思わないですけど、開放し過ぎると演奏がおぼつかなくなってくるんですよ。技術的、精神的な問題だったりもするかもしれないけど。そこで開放を我慢するほうが、後の高揚感が大きかったりする、っていうのはありますね(笑)」

――ドMっぽい感じの(笑)。
 「そう(笑)。静かに曲が終わって、よし!みたいな感じの(笑)」

――達成感というか。
 「そういう感じはありますね、本当に。積み重ねて、積み重ねて、出来た時が一番の高揚感ていう感じ」

――聴いている側としては、その、ある種の緊張感にシンクロしてしまう感じがあります。だから、goatの高揚感はお客さんの高揚感でもあるのかもしれないです。
 「最初は僕、観ていてもおもしろくないだろうな、思っていたんですよ(笑)。自分が高揚出来るからやってるというか。じっと見てくれる人がまあ10人に1人くらいいてくれたら嬉しいな、くらいの感覚で始めたんです。本当に。1stの反響に驚いたのは、それもあったからなんですよね。自分のことを考えることによって、まあお客さんのことを考えてることにもなるという」

――リズムも直線ではなく複雑なのに、吸引力があります。すごくポリリズミックな作りなので、“トライバル”と言われることも多いのではないでしょうか。
 「そうですね」

――“ポリリズミックだからトライバル”という見られ方に、腹立てたりしませんか(笑)?
 「いえいえ、僕何言われてもムカつかないですよ。解釈が違うだけだと思うんですよ。自分が思っていることと違うように書かれてしまったら嫌だ、このライターはダメだ、みたいなことを言う人もいますけど、僕はどう書かれても良い。間違ったこと書かれてても全然良いし。別にどうでもいい(笑)。仮に間違って伝わって、結果それで聴かれるチャンスが少なくなってしまったとしても、聴いてくれた人が自分で判断してくれたらそれで良いと僕は思ってるんだけど」

――そうですね。実際はどうですか?アフリカン・ドラミングを彷彿とさせる部分があったり、レゲエ / ダブの要素を持ち合わせていたりしますよね。そういうものに影響されてはいるのでしょうか。
 「影響はやっぱりありますよ。うん、大いにありますね。『Rhythm & Sound』っていうアルバムのタイトル自体そうだし」

――本当にBasic Channelからなんですか(笑)。
 「そう(笑)。まあMoritz(Von Oswald)からの影響はすごくあるんですけど、自分がアウトプットした時にMoritzになるかと言うと、そうでもないというか。でも、僕的には“Moritzっぽくやってみよう!”みたいなのは全然あるんですよ」

――そういうのあるんですね。
 「ありますあります。めちゃくちゃありますよ(笑)。アルバムの中にも、僕的に“完全にMoritz!”っていう曲があるんですよ。“Ghosts”がそうなんですけど」

――そうですよね、飛ばしも効果的で。
 「そうそう。でも“Rhythm & Sound”ってまさに僕らのことだな、と思って。今回のアルバムはタイトルを決めてから作り始めたんですよね。“On Fire”は昔からやってるから違うけど」

――何かを決めてからやる、っていうのが多いんですね(笑)。
 「多いです(笑)。けっこう。ソロも一緒で、“これだ!”っていうコンセプトを決めてから作ったほうがすぐ出来る。“ロウハウスっぽく”とか。そういうぼんやりしたコンセプトでもいいし。でも、決め過ぎると外れ難くなっておもしろくないから、がちがちにコンセプチュアル!みたいな感じでは全然ないですけど」

――日野さんはgoatを含め、スタイルが全く違うプロジェクトを多く展開されていますよね。でも、どれも一貫性を強く感じるんです。
 「やりたいことをただやっているだけなので、僕自身は一貫性が無くても良いと思ってるんですよ。でも結果的に、変なところでストイックだけど外したい、ふざけたい、みたいな性格が全部出ちゃってるのかも(笑)。そういう一貫性は出てるのかもしれないです。逆に、僕が全部作ってるから、bonanzasとgoatをどう住み分けるか、みたいなことは考えますけど」

――birdFriendのラインナップも様々ですよね。あれはどういう感じでセレクトしているのでしょうか。
 「人によるんですけど、今のところ一番多いのは僕自身がファンの人に声をかける感じですね。今まで作品を作ったことが無くても、この人の作品を聴いてみたい、って思う人。あとはカセットレーベルならではの実験的なものかな。例えば、元々バンドをやってる人がソロで違う表現を試みようという時に、ちょっとたじろぐことがあるじゃないですか。僕はそういう人が多いと思っていて。だから、とりあえず作品を出してみたら何か変わるかもしれないよ、という意味で声をかけるとか。でも、今年からはちょっとやり方を変えるつもりです。もっとリリースが海外寄りになってくると思います。2014年は僕の好きな人たちの作品をほぼ毎月1本出してきたんですが、元々テクノ / ハウスレーベルとしてやっていこうと思っていたけど日本にはテクノのプロデューサーが少ないので、テクノ / ハウスは僕のリリースで補ってきました。今、海外のテクノ・アーティストで2、3組決まってるから、今年は半分くらい海外のものになると思う。これまでは、どういうことになっていくかな?っていうのをちょっと様子見ていたところもあったんですよ。広がり方とか。ある程度土台が出来たので、次のステップに行こうかな、という段階ですね」

――色々長期スパンで考えていらっしゃるんですね。
 「そうですね。本当は一気にやりたいけど、ゆっくりやらないと出来なかったりするんですよ。特にレーベルに関してはお金的な問題もすごくあるし。それに、頻繁過ぎると逆に広がらない。海外のカセットレーベルって、一気に4、5タイトル同時にリリースするじゃないですか。それは少なくとも今自分の環境ではマイナスかな、とは思っていて」

――忍耐力ですね。
 「いやっ、単純にお金がないから(笑)。やっぱりそこはデカいですよ。自分の性格的に、一気にやり切ってしまうと後に続かないというのもあるし。やっぱり長く続けるということが一番重要。特にこのカセットレーベルに関しては。とにかく数をリリースして、おもしろくなるのはたぶん後からかな、って思ってるので。だから、カセットは売り切りですけど、曲はBandcampで聴けるようにしてるんですよ。後追いの人でも優しく入れるように」

――そこまで考えていらっしゃるんですね。 “関西最重要人物”というコピーは伊達じゃないですね(笑)。
 「いやいや、あの、僕もそれはちょっと……って思ってたんですけど(笑)!先輩たちに“おっ、最重要人物の日野くんだ”とかイジられるし……。別にいいすけど……(笑)」

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