Kyoka

Kyoka

――わざわざそんなことするなんて、聞いたことないですよ……(笑)。それでどうしてFrankさんと闘いになったんですか?
 「モノマネを録音している最中なのに、Frankが質問をしてくるんですよ。“セクハラについてどう思う?”みたいな。それでイラっときて“Fuck!”って言ったら、その部分を曲に使うっていうことになって。わたしは“外して!”って言ったんですけど、“プロデューサーの意見として、これはあったほうがいい”って退けられて。だから、11曲目はプロデューサーとの闘いに負けた曲なんですよ……。日常の声なんか入れなくていいじゃん……と思ってたんですけど」

――なるほど(笑)。でも“プロデューサーの意見”は正解だったかもしれませんね。名プロデューサー(笑)。
 「名プロデューサー(笑)。でもFrankは本当に、会話も含めてわたしを成長させてくれるようなことを無意識に言ってくれる人でなんですよ。ある意味ちょっと出来上がっちゃってる、哲学者みたいな人。今回のアルバムで色んな要素を抵抗なく混ぜることが出来たのも、彼に日常会話の中で言われたことがきっかけになっていて。『iSH』の時、1曲目と2曲目が“テクノだ”っていう認識のもとに評価が集中したんですよ。わたし自身はそれがテクノだって気付かずに作っていたんですけど。それを受けてFrankがある日“テクノの曲が評価高いからといって続けてテクノ作ろうとせずに、今まで通りゴツゴツした曲を作っていけばいいよ”って言ってくれたんですよ。その言葉が肩の荷を降ろしてくれた感じがあって。それでわたしの縛りが取れて、自由度が増したことがアルバムに反映されていると思います。良い友達を持ったな、って思いました」

――今回はRobert Lippokさん(TO ROCOCO ROT)も共同プロデューサーとして名を連ねていますよね。
 「そうなんです。Robertも名プロデューサーなんですよ!Robert はFrankと対照的にすごく人間的な人で。わたしの不器用な部分が“美しい”と思ってくれているみたいで、そこを引っ張ってくれる感じでした。でもやっぱりやり手なんですよ。わたしが完パケした音源を聴いて“ベースだけ入れ替えたら?”って言われたことがあって。“えっ?ベースだけ?他はいいの?”って聞いたら、“構成も全部そのままでベースだけ”って言うんですよ。“なんだろ?”と思いながら家に帰って、ベースだけ入れ替えたら、すごいパッキリした良い曲になって。ふわりと宿題を出すことによって人を動かして、わたしが知らない良いところに連れて行ってくれるんですよ」

――そういう2人がプロデューサーというのも今回、良かったんでしょうね。
 「そう。お父さん、お母さんみたいな(笑)。彼らによる影の操作はかなり大きいと思います」

――今回ジャケットで顔出ししているのにはどんな意図があるのでしょうか。初めてのフル・アルバムだということを意識してのプロデュース?
 「そんなこともないんですよ。まあ、人間歳を取るんで……出せるうちに出しときゃいいんじゃない?っていう(笑)。ダメですか?最初で最後かもしれないし(笑)。こんなにタイミングが良いことなかなかないから」

――いやいや(笑)、かっこいいです。
 「よかった、ありがとうございます」

IS (Is Superpowered)
Kyoka ‘iSH’, 2014 Raster-Noton / cover photo ©Sylvia Steinhäuser

――最初見た時はアーティスト写真だと思っていたので、ジャケットだと知ってびっくりしましたけどね。Kyokaさんの作品としては初めてですけど、Raster-Notonのリリースとしても珍しいんじゃないですか?Atom™さんの『HD』もありましたけど。
 「『HD』のジャケットは過激でしたよね(笑)」

――あれに匹敵するインパクトですよ。
 「あれに並ぶ衝撃だと聞くとめちゃめちゃ嬉しいですね(笑)」

――冒頭に収録されているノイズもかっこよかったです。ホットタッチですよね?
 「そうです。原理的には。あれはライヴでも使ってるピエゾマイクですね。直に触るとブ~ンとハウるんですけど、いつもテーブルに張ってベースを足すのに使っているんですよ。音源だけをかけても床揺れ的な要素が入っていないので、リハの時にあれで床揺れの音を作って、本番まで保存して使います。わたし自身もお客さんとして聴いた時に、床が揺れると“キタ!”ってなるので、そう思いたい時に乱用しますね。ヒドい時はずっと使ってるし(笑)。現場によってハウり方が違うから、そこは毎回違うんですけど。意外と高音のザーっていう音になる時もあるんですよね」

――それはいつ頃から使ってるんですか?
 「2011年にFrankとツアーをやった時からですね、そういえば」

――以前お話を伺った時に、Mika Vainio(PAN SONIC)のホットタッチに“対抗意識が燃える”っておっしゃっていたので、その影響なのかな?と思っていたんですけど、それより以前からやっていらっしゃったんですね。
 「ホットタッチとピエゾのハウリングが同じっていう認識がなかったんですよ。『iSH』のリリースの時に『サウンド&レコーディング・マガジン』の取材で牛尾(憲輔)くん(agraph)に教えられました。“知らなかったの??”くらいのノリで(笑)。演奏として実際のホットタッチをやってみたことはないんですよ。だから取り扱いがどう違うのかはわかってないです。色んな音出せるのかな?ピエゾは、普通に手の水分量で音が変わるんですよ。湿ってる時はすごく音がデカくなる。手の汗とか。音がすごく小さくて、どうしようとか思った時は、ドリンクの氷めがけてちょっと手を突っ込んでみたり(笑)」

――(笑)。例の小さなシンセサイザーも引き続き使ってるんですか?
 「はい。ただ、去年の2月に“恵比寿映像祭”の関連イベントとしてgift_labさん(東京・恵比寿 *3)でやった展示(*4)に使っていて。展示が終わった翌日すぐベルリンに行ったり何だりで去年はずっと忙しい感じでいたので、ようやく撤収したんばかりなんですよ。1年かけて(笑)。1年も放置しちゃったから壊れたかな?と思ってサウンドチェックしたら大丈夫だったので、DOMMUNE(*5)に出た時に使ってみました。やっぱり、すごいイイですね!」
*3 2015年に清澄白河へと移転。
*4 2014年3月11日の“onpa))))) Presents LIVE”。山根星子 aka Tukico(TANGERINE DREAM)、Junichi Akagawa、sub-tle.(オカモトサトシ + オノウチカズユキ)、及川潤耶と共演。
*5 Hisae Mizutaniとのアート・プロジェクト“penquo”での展示。伝導性の繊維(後述の“もしゃもしゃ”)とLED、シンセサイザーを組み合わせ、繊維の触れ方によって光と音がささやかな変化を見せるインスタレーション作品“quo_port HEAD”。

quo_port HEAD
penquo ‘quo_port HEAD’, 2013 / photo ©Ryo Mitamura 三田村 亮

――では、アルバムでは使っていないんですか?
 「展示の前に録音していたものをサンプリングして使った曲があります。12曲目ですね。例のおじさんのラップ入りの曲に入っているパルスウェイヴは、MAX / MSPのパッチです。“恵比寿映像祭”中、“パルスウェイヴが大好きで……”っていうのが口癖になっていて、色んな人に言いふらしてたんですよ(笑)。そうしたらある人がオシレータのパッチをくれて。それを使っています。パルスウェイヴのパッチもらえるなんて、最高ですよね(笑)」

――口癖にしていた甲斐がありましたね(笑)。展示自体もおもしろかったです。もしゃもしゃするやつ。
 「ありがとうございます!DOMMUNEではさすがにもしゃもしゃは使わない気だったんですけど、最終的に音の緩急を付けるために、もしゃもしゃも持って行ったんです。あれを使う時は他の電気に触れないように守らないといけないから、ライヴ中恐る恐るもしゃもしゃしてたら、終わってから宇川(直宏)さんに、“あれ、タワシ?”って言われた(笑)。“掃除してる人みたいだから、せめて色だけでも見た目変えたら?”って言われて」

――たしかに、ちょっと金ダワシに似てはいますよね(笑)。
 「そうですね。展示で使った時は釣り糸みたいなものを混ぜてたから、下から光を当てるとすごく綺麗なんですよ。でも光が当たってないとけっこう金ダワシ(笑)。しかも宇川さん、後であれに似てる金ダワシのリンク送ってくれて。楽天ショッピングの(笑)。だから、全面的に形を変えようかな、と思ってます(笑)」

――じゃあ、今後もっと活躍するかもしれないですね。
 「はい。もしゃもしゃはもっとおしゃれを目指します(笑)!」

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