市川紗椰

市川紗椰 / photo ©Chifumi Kubota 久保田千史

きっとみんな、“好き” はあるはず

 鉄道を筆頭に、ガンプラから相撲、ハンバーグ、装甲騎兵ボトムズまで、所謂ファッションの世界とはイメージの異なる趣味に没入することで知られ、その本気ぶりと飾りのない人柄から、各メディアで引く手数多のモデル・市川紗椰。60~70年代のオールド・ロックをはじめとする様々なスタイルの音楽にも造詣の深い趣味人が、写真集「夜が明けたら」(イーネット・フロンティア刊)の刊行と同時に小西康陽プロデュースの同名シングルでいよいよCDデビュー。腕利きミュージシャンを従えて歌唱する浅川マキ楽曲の魅力もさることながら、収録曲全11曲中の10曲が自身で録り溜めた列車の走行音、写真集とリンクしたフォトカードでのカヴァー・アートなど、音楽に留まらない遊び心が詰まったパッケージとなっています。すべての趣味の0キロポストとなっているという音楽との蜜月について、お話を伺いました。

取材・文・撮影 | 久保田千史 | 2015年4月
メイク・スタイリング (thanks!) | 八角 恭 (nude.)

――今回がCDデビューということですけど、歌を歌われるのは初めて?
 「完全に初めてです。カラオケは大好きですけど(笑)。学生の頃にミュージカルをやったりはしましたけど、仕事としては初めてですね。人前で歌うようなことは」

――このプロジェクトは、そもそもどんな風にスタートしたのでしょう。
 「ある日、“バイトしない?”みたいな感じで声を掛けられて(笑)。昔から知っているスタッフ……それこそ『月刊 市川紗椰』を作ってくれたような面々と“何かおもしろいことができたらいいね”っていう話はしていたんですよ。みんな音楽が好きだし、せっかくだから“売れる”とか“売れない”に関係なく“かっこいいものを作ろう”ということになって」

――しっかりとしたバンド編成で録音されているところからも、そういう部分が伺えます。“売れる売れない”の話だったら音源使って済ませてしまうかもしれないし。楽曲は1曲だけですけど、本格的で、濃厚な仕上がりですよね。
 「あはは(笑)。そうなんですかね。本格的かどうかはわからないですけど、音楽好きから生まれたのは確かです。今って、みんなCDをなかなか買わないじゃないですか。それでも手に取りたくなる、欲しくなるものを作ろうとしたんですよ。“昔の音楽好きが、今の音楽好きに向けて何かやろう”っていう感じです。ノリとしては」

――紗椰さんご自身は世代的に、CDとデジタルの狭間という感じですよね。
 「でも全然CDでしたよ。iPodが出てきたのは大学に入った頃だったので、一番音楽を聴き込んだ中高生の頃はCDばかりで。アナログのLPも、わたしの周りでは流行ってましたね。社会人になってからはデジタルで買ってみるようにもなりましたけど、いまだにわたしはCDを買いますね。癖があるので(笑)」

市川紗椰 '夜が明けたら', 2015
市川紗椰 ‘夜が明けたら’, 2015

――では、浅川マキさんの楽曲を初めて聴いたのもCDで?
 「いえ。高校生の時にレコードプレイヤーを手に入れたんですよ。その頃、近所のレコード屋さんでLPを買い漁っていたんですけど、その中でジャケ買いをしたのが初めてですね。その数年後に持っていたLPを全部デジタル化したので、CDは買わなかったです」

――浅川さんは元々、LPの音質に拘ってる方だったんですよね。
 「そうですよね」

――では楽曲には馴染みがあったということで。
 「がっつりと聴き込んだ時期があったわけではないんですけど。以前から好きで知ってはいて、かっこいい人だな、というのはやっぱりずっと思っていました。だから、今回小西さんが浅川さんの楽曲を提案してくださった時にすごくピンときて。何を歌うか色んな意見があったんですけど、小西さんの一言でみんな納得したんですよ」

――どんなところにピンときたんでしょう。
 「個人的には、モノクロ感ですね。みんな色のイメージで考えていたんですけど、白黒の世界がしっくりきた感じがあったんですよ。鉄道要素のある“夜が明けたら”を選んでくださったのも嬉しかったですね(笑)。すごく細かいところを気にかけてくださったんだな、と思って」

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