テクノうどん

テクノうどん / ©techno-udon

――サブカルチャーっていうか、所謂“サブカル”が嫌いっていうことですよね。
 「そうですね。今、なかなか本物のサブカルの人ってあまりいないから。例えば音楽だったら、出演者の音楽を目当てに、本当に好きな人しか集まらないイベントってあるじゃないですか。数の大小ではなく、そこに目的を持って来て、お金を払って、鑑賞するという。そういうイベントに人が集まるっていうのはすごく良いことだし、大好きなんですよ。でも、お金払ってでも行きたくなる良いイベントは少なくなりました。だから最近は、馴れ合いや“いい人”ビジネス、村意識のあるイベントに行くことを避けて、自分が本当に行きたいものを欲求で選択して、常に新しいところやひどいところなど意見が同じイベントなのに、何パターンも意見や感想が別れるようなイベントに行くようにしてるんですよ。東京に限らず、全国おもしろければ。それがすごく勉強になってる。その場でしか見られないものを見に行く足の軽さも大事にしてるね。その点、“テクノうどん”はお客さんのメインはうどんを踏むことで、DJ目当てに来てるわけじゃないと思うんですよ。大度さん自身は有名かもしれないけど、DJとしては知る人ぞ知る存在だし、中西俊夫さんをDJで呼ぶという話もあまり聞いたことがないし。藤崎ルキノさんもそうですよね。お客さんの8割は知らない状態で。だから、音楽が好きで来てるかどうかというのとは、また別の話になってくる」

――なるほど……。でも、音楽を聴くという目的の人でも興味津々のDJラインナップですよね。それぞれに個性的で。人選はどのようにされのでしょうか。
 「自然な感じであのラインナップになったんですけど、色んな人に“なんでこんなセレクトになったんだ”って言われますね(笑)。アメシンくんは、10代の頃に木更津でDJをやってたみたいで。中西俊夫さんは個人的にずっと呼びたかったので、まさか本当に参加のお返事いただいたときは、嬉しかった。小田島 等さんや、bonoboの成(浩一)さん、長谷川踏太さん、真鍋大度さんは個人的にお世話になっていたり、恩返しや感謝の意味も含めてぜひ参加していただきたくて。野本かりあさんは、CAPSULEのこしじまとしこさんとメールのやりとりをしていた時に、“かりあちゃん良いよ”って紹介してくださったんですよね。こしじまさんのアドバイス、本当に助かりました!」

テクノうどん / photo ©clinamina

――それだけの面々を集めるからには、音楽目的の人とうどん目的の人をクロスオーヴァーさせていこうという意図もあるのではないですか?うどん目的でいらっしゃった方が、音楽に興味を持ち始めるような。
 「そうですね、“知らないけどなんか良い”と思えるような環境作りは考えてますね。19歳の頃から、カウンター・カルチャーに関して問題意識を持っていたので。根本的な考え方は、今も昔も変わっていません。言い方は悪いんですけど、洗脳していくというか。世の中の大マジョリティの中にも、一見マトモそうに見えて、実はヤバい人って多いじゃないですか(笑)。真っ当そうに世間が見る人ほど、多角的な視点では変態的。そのからくりはいったい何だろうか?っていう。健全な場所で、そういう領域まで持っていく方が近道のような気がするんですよ。ほかのスタッフの考え方はまたちょっと違うんですけど(笑)、僕個人としてはそういう感じで。本当に良いな、と思えるものはちゃんと評価されていくと思うんですよね」

――たしかに。 “健全”であることはツールとして大事ですよね。 “クラブ”と言えばノリピーに始まり、“摘発”“脱法”みたいなイメージしか持たれていない感じがしますもんね。
 「そうでしょうね。そこに今、“うどん”が入るっていう(笑)。いろんな人手や準備も必要だし、少し地味な作業だけど、そうすれば少なからず状況が変わる気がする。常に緊張感がある感じが良いですね。だから、次回以降は子供が巣立った世代、YMO世代の歳の人もいらっしゃるような年齢の振り幅が大きいイベントにしたいんですよ。10代の方や動物もOKにしたいっす!大変だけど。個人的には松平 健さんを呼んで、おばちゃんたちも巻き込んだ幅広い年齢層にもたくさん来ていただくことも考えてますね」

テクノうどん / photo ©clinamina

――そうなんですね(笑)。1980年代後半のレイヴが登場した時代って、DJが有名かどうかということよりも、その場所の空気を重視する傾向があったと思うんですよ。“テクノうどん”はそういう感覚に近いところもあるのでしょうか。
 「そうですね。昔インドのゴアに行ったことがあるんですけど、街中の、おばちゃんが経営しているようなレストランでパーティをやってたりするんですよ。ああいうのいいな、と思って」

――サウンドシステムもノリ的に近いものがありますよね。
 「そうかもしれない。実際そこまで考えていたわけではなかったんですけど、結果的にそうなって。最近“ラオスフェスティバル”内のイベントで観た高校生のジャズ・バンドの演奏みたいな感じも良かったですね。台しか置いていない手作りっぽいステージで、しかも高校生のジャズ・バンドはラオスとは全然関係ないのに、妙にカレー食べながら音楽を聴いてしまって。あと、数年前に沖縄のゲストハウスのイベントにDJで呼ばれた時、現地にCDJがなくて島民の方がPlayStation®をCDJ代わりに持ってきたんです。たぶん、普通なら怒るところだけど、その場の雰囲気や一生懸命用意してくださった気持ちは、完成度の高いステージ作りとはまた違った魅力があって。変に思い出に残ったんですよ。どんな音楽でも並列に見せてしまう、人の思想やプロ以外の手が加わる熱量を感じさせる手作りのステージ、そこが目指すところなのかとも思ったり……。80年代後半というところで言えば、水中にスピーカーを入れてプールでイベントやったりだとか、当時は場所に特化したイベントも多かったんですよね。そういうところにも興味があります」