BLACK GANION

BLACK GANION

――BLACK GANIONは“Super Metamorphosis Grinder”と名乗っていますが、“グラインド”に関してはいかがでしょう。
 「“グラインド”って、色んな意味のある言葉だから好きなのね。まあアレを細かくするのもグラインドだし、スケートとかピストバイクの言葉でもあると思うし。“これぞグラインド”っていう、例えば324が作った完璧なグラインドとか、Mick Harris(NAPALM DEATH, SCORN)のドラミングとかね、そういうテクニックはもちろん重要だけど、“表現”という部分でもっと色々出せるポイントを探していくっていうか。瞬発力とかね。そういう意味でグラフィティとか写真もグラインド感があるっていうかさ」

――なるほど。描き換えられないところとか。
 「そうそう。グラフィティで言えばイリーガルで、スピーディ」

――それがBLACK GANIONのグラインドコア感なんですね。
 「たぶんそうなんだと思う」

――音楽的にはグラインドってひたすら速いというパブリック・イメージがあると思うんですけど、例えばJustin(K. Broadrick / GODFLESH, FINAL, JESU, JK FLESH ほか)がいた頃のNAPALM DEATHなんて、ある意味完全に音響重視だったと思うんですよ。
 「そうだね、ノイズがパーンと来る感じね。音響でグワーっと来るのもグラインドだと思うし。envyのトレモロ感とかにもそういうのを感じるしね。そういう意味で俺はグラインドを捉えてるっていうか」

――グラインドって、一般的にリフありきの音楽なところがあると思うんですけど、BLACK GANIONはアンビエンスもリフにしてしまってるところがありますよね。
 「それはね、たぶんリフを環境音から作ってるからじゃんね」

――環境音をリフに変換するということですか?
 「そうそう。そんな感じでやってるかな。壊れた乾燥機の音とか、車が通った音とか。それを音感で辿って拾っていって、リフにしたり。今回は特にそうだと思うんだよね」

――それはバンドとして?
 「バンドとして。環境音からなんとなくのコード感でループを作って、そこから組み立てたりとか」

――それをグラインドのフォーマットに落としていくわけですよね。
 「うん」

――そういうことをやっているバンドって聞いたことないですね……。
 「そうなのかな。何なんだろうね。でもまあ、この方法だったら誰ともカブらんなあ、みたいな(笑)。それも“ハードコアをやる”っていうルールありきでもちろんやってるんだけど。ルールを基に、どう料理するかっていう」

――BLACK GANIONが持っているハードコアパンクらしさというのは、体に染み付いたものなんでしょうか。
 「たぶんそうだろうね。良い意味で手癖っていうか。俺はキャリアがそうだからね。ローカルのバンドから始まって、タケシくん(C.F.D.L.)に拾われてTOTURE、RESULTとやって、クラスト一辺倒なのに飽きちゃって、今度はCALUSARIをやって。あれはBODY COUNTとかが面白かったからなんだけど、ヒップホップとの価値観の差みたいなものでまた飽きちゃってさ。その頃からBLACK GANIONの初期メンバーと、Aiとかね、遊ぶようになって。それがバンドを始めるよりも先だったんだよね。遊ぶ時に聴く音楽ってこう、まだ若かったし、アレな要素が強いものが多くてさ。テクノとかハウスもそうなんだけど、生音で、ってなるとやっぱりプログレがハマるっていうか。まあ昔から好きではあったんだけど。そういう感覚を、所謂ミクスチャーじゃなくて“ハードコアでやる”っていう。パンクが枝分かれしていった時代ってあったと思うのね。例えばKILLING JOKEのYouthの活動とかさ。KLFがEXTREME NOISE TERRORとやったり」

――あの感覚は独特ですよね。
 「ね。まあ服装はどんどんユルくなっちゃって、川上くん(故・川上秀樹 / DISCLOSE)に怒られたこともあったけど(笑)。俺とかtAkちゃん(CHAOS CHANNEL)は革ジャン脱ぐの早かったから。東京で言えはソウジロウ(ABRAHAM CROSS)とかもそういう価値観を共有してるよね。よく山のレイヴで会ったし。あのへんの仲間は当時からずっと仲が良くて。それに別に流れていったっていう意識はないけど、なんかもっと、自分にも合った環境だったというか」

――古くはSxOxBのTottsuanさんと石野卓球さん(電気グルーヴ)の関係みたいな感覚ですよね。MULTIPLEXとか。
 「そうそう。そういうこと。BLACK GANIONはそんな環境の中から作っていったから。なんかこう、狙ったリフから開放されたっていうか」

BLACK GANION
photo ©Miki Matsushima 松島 幹

――リスナー視点で、“BLACK GANIONはグラインドではない”という意見があったらどうです?
 「まあでも、“Grinder”って付けちゃったからさ。それもそれぞれの価値観だもんで。小松くん(Takaho)のUNHOLY GRAVEみたいなローカルなバンド以外は、グラインドコアのバンドとはあんまり交流がないしね。所謂グラインド論とは違うことやってるから、好きな人嫌いな人と別れて当然だと思うし、そうじゃなきゃいかんと思う。所謂グラインドっていうのもかっこいいと思うんだけどね。こりゃ勝てんわ、って思うし。MORTALIZEDなんて本当にすごいもん。でも別にライバル心があるわけでもないし、常にフラットでいようっていうか」

――グラインドがサブカテゴリで細分化され過ぎていることについてはどう思われますか?
 「まあ、細かいことはどうでも良いんだよね。でもそういうのをもっと拡げつつ、全体をまとめようとがんばってる人もいるわけじゃん。ナルくん(関根成年 / C.S.S.O., BUTCHER ABC / はるまげ堂 / Obliteration Records / galeria de muerte)とかさ。そういうのはすごく尊敬してるけどね。通販もしちゃうしさ(笑)」

――メンバー間でもそれぞれ異なるハードコア感、グラインド感を持っていると思うんですけど、それをまとめているものって何なのでしょう。
 「まあ、よくあるバンド解散の理由のひとつに“音楽性の不一致”っていうのがあると思うんだけど、それは崇拝の対象というかさ、“何かみたいに”っていうのを求めた結果の意見のズレとかだったりする気がするのね。それが俺たちはハナからない。そういう定型化されたものじゃなくてさ。音楽ってもっと開かれたものだと思うし。(テライ)ショウタくんのGofishとNICE VIEWなんてまさにそうでしょ。それはクラシックにしろ何にしろ、同じことじゃないかな。それが勘違いでも良いと思うし」

――取り決めがないところが取り決めっていうか。
 「うん。でもジャムセッションて、キーさえ合っとれば、誰でもできるような惰性的な音楽になっちゃう危険性と隣り合わせだから。“曲を作る”っていうことは、そこから引き算して潔くリフを作るっていうことだし。細かいところを調整してながらね。さっき言ったドゥームとスラッジの違いとかさ、そういうフィーリングは共有するけど……それくらい?みんな好き勝手にやったほうが伸びると思うし」

――それでこういう、得体の知れない音楽になるんですね(笑)。
 「例えばDOORSのギターの人(Robby Krieger)だって、エレキ・ギターを持ったのってDOORSに入ってからなんでしょ。ずっとフラメンコ・ギターやっててさ。だからちょっとヘンじゃない。うちのギターのアキラ(小柴 彰)も、そんなにキャリアがあるわけじゃないしさ。前はAiもいたし、Aiのほうがリードだったんだけど、1人でがんばるって言うからさ。そしたら化けたもんね」

――Aiさんが亡くなられた後に、ギターを増やすことは考えなかったのですか?
 「最初は考えとったけど、アキラがそう言うから。その言葉の方が大事っていうか。さっき言った通り、俺たちは“何かっぽいバンドをやろうぜ”って結成したバンドじゃなかったからさ。なんとかなるでしょ、っていう。“こうしたい”っていうのがなかったのが良かったのかもしれんね」

――アキラさんには、Aiさんの意思を継ぎたい気持ちもあったのでしょうか。
 「そうだね。やっぱり死なれた当初はすごく重かったし、苦しんだ時期もあったけど、死んでから2ヶ月しか休まなかったしね。同じ頃にTokona-X(ILLMARIACHI, M.O.S.A.D.)を亡くしてたからっていうこともあるんじゃないかな。トコナメは家でBRUJERIAかけながらそこにラップ載っけてるような奴で、アキラのことは可愛がっとってさ」