黒電話666

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――ノイズも、“音楽”をやるためのツールのひとつという認識ですよね。
那倉 「そうそう。ただの道具」
西山 「それは、ノイズを純粋に音質なり音のひとつとして捉えることができているからこそじゃないですか。ノイズって、ノイズという行為自体の意味性に引っ張られてきたところがやっぱりあると思うんですよ」
那倉 「“もうノイズはノイズじゃない”って言いたい。ノイズって“排除されるべき対象”って意味だから、そんな夢は見てられない」
黒電話 「緒先輩方と意識は違うんだろうけど、それがどう違うのかうまく言葉にできないですね」
西山 「そこは黒電話のおもしろいところですよね。意識してるかしてないかは知らないけど。文脈を踏まえて色々理解をしようとしているんだけど、そこから少しずつ外れてるっていう」
黒電話 「あまり意識的に制作するタイプじゃないからですかね」

――でもたぶん、そういうモヤモヤって、きっと秋田(昌美)さんの頃からあるんですよね。秋田さんとツェッペリンの関係みたいな。
那倉 「秋田さんはノイズが先か、自分が先か、卵が先か、鶏が先か、っていうレベルがありますけど。それを除けば、僕らも同じようなものかもしれないね。僕らもある意味ノイズの意味性に引っ張られてるところはあるし、ノイズって特許性が薄いんだよ。単純に、同じことやってたら有名なやつのほうが良いじゃん。別にディスってるわけじゃなくて、僕だったら絶対有名なほう買うもん(笑)」
西山 「それはノイズに限らずでしょ(笑)?」
那倉 「うん、有名なほう買う(笑)。だから、奇をてらってるわけじゃなくて、ちょっと有名になるためには、ちょっと違ったことをやらないと有名になれないっていう、すごく単純なことでもある」
西山 「世代交代がないですしね。J-Popの分野だったらすぐに消えることも多くて、世代交代があるけど、エクスペリメンタルの分野に行けば行くほど、やってる人は長いことやるから」
那倉 「でもそれは良いことですね。あまりにファストだったらさ、そのジャンルが好きな人は文脈が追えなくて、ただ“良い曲だな”みたいになっちゃうじゃん。固有名詞を出せば何のことを言ってるのかちゃんとわかるもんね。良い文化だよね(笑)」
黒電話 「今から始める人でも話が通じる」
西山 「だからこそ、上と同じことをやると、ずっとそこは超えられない」
黒電話 「我々より若い世代もきっと意識が違うはず」
平野 「違うんじゃない?30年選手の人たちのノイズがあって、俺ら世代にとってのノイズもあるし、俺らより下のここ2、3年で出てきた人たちにとってのノイズもあって」
西山 「レーベルをやっている立場としては、若い人たちのノイズをどう感じてるんですか?」
平野 「俺らの世代とは関係なく、素直に80~90年代リヴァイヴァルしてる感じがある」
那倉 「あと、僕の印象では自分の周りの年下のノイズファンは先行世代に比べて下地のオルタナ、グランジ、アメハー好きが透けてみえる人が多い。“みんなSONIC YOUTHとか好きなんだな”って、まあそこもある種リヴァイヴァルなのかな」
西山 「僕はSONIC YOUTH世代だけど(笑)」
那倉 「いや(笑)、SONIC YOUTHみたいなのはSONIC YOUTHがやってれば良いんですよ。僕はSONIC YOUTHが嫌いなんじゃなくて、もろSONIC YOUTHみたいになっちゃうってことを恐れずに、SONIC YOUTHに近づいていく人たちの気が知れないっていうだけなんですよ。どうよ?っていう」
西山 「そこで客観視できるか、というのが大事ですね」

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――そうなんですよね。スマートフォンですぐ調べられるのが当然の世代だから、検索上位の人、有名な人に左右されるのかな?って思ったりもするんです。メディアの功罪というか。
一同 「ああ……」
西山 「SONIC YOUTHもそういう意味ではそうですね。最初は型から入るっていう人も、もちろん多いだろうし」
那倉 「あと、閉塞感から逃げ出した人たちという点では、僕らともちろん似ているんですけど、ノイズの母性に寄り掛かり過ぎてる気がするんですよね。でもはっちゃけたいから、自分たちの素人性、稚拙さをそのままお客さんを巻き込んで観てもらうことで“ケミストリーが起きる”みたいなファンタジーを信じてるっていうか」

――そういうの、なんか“サブカル”っぽいんですよね……。
那倉 「そう。たとえケミストリー起きたとしても、そんなファンタジーが大して役に立たないってことは、わかるじゃないですか。というかもう、それは音とかノイズじゃなくて大量の言葉を必要とするわけじゃないですか。逆に僕らはおっさんなんで、ロック幻想があって。舞台に立つ者と、立たない者の差は、やっぱり舞台の高さだけあるべきだっていう。“曲を作る”って言ってるくらいだから。僕らの良かったところは、サブカル的な連帯をしなかったっていうことだよね。サブカル的な連帯はやっぱり、傍から見たらクソだよ」
西山 「でも、ノイズこそ昔はサブカルの象徴だったわけですよね?」
黒電話 「俺まさに中央線サブカル育ち」
那倉 「そうなんだけど!そうなんだけどさ、大阪的なジャパノイズ、電子雑音的なハーシュから、US、UKの“なんか色々いっぱいいるよ”っていうのを経て、形容詞としてメタリックに、硬くなっていったわけじゃん。それをサブカル的な乱痴気騒ぎで台無しにするんじゃない!って僕は思うんだよ。正に老害、抑圧的な意見ですが(笑)」
黒電話 「良い事言いますね」

――そう。それですよ。
西山 「例えば、自分はバックグラウンドがテクノなんですけど、ある時期のノイズとテクノが同じ場所を目指していたことで、ノイズがおもしろいと思えたんです。共通項がわかるとお互いの広がりも見えてくるというか」
黒電話 「五味さんが今テクノに寄ってるのはすごくおもしろいですよね」
平野 「そうそう。ノイズを実験音楽っていう有難げな何かじゃなくて、テクノを聴くような耳で聴いてるんだよね」
那倉 「音派なんですよね」
黒電話 「俺の場合は音派になってきた、って言うのが正しいけど。電話使ってる時点でサブカル背負ってるんで」
那倉 「すいません、忘れてました(笑)。僕も頭から血とか流してたんだった(笑)」
平野 「でも最終的に音派にならないと脱皮できないところはあるよね」
那倉 「それもあるし、やっぱりね、簡単なことじゃないんだよね。日々コンセプトを生成して見せるように軽やかに生きるのは。人はそんな簡単にChim↑Pomみたいに生きられないってことに気づくのよ!僕にはムリだって(笑)」
一同 「(笑)」
那倉 「あんなに健康度が高くて、なおかつ持続してるのは並大抵のことではないと思う」
西山 「例えば、Russell Haswellとかもそうだけど、アートカルチャーの中に入ってるノイズっていうのもあるじゃないですか。Russelと美川(俊治)さんて仲は良いけど、両者のノイズは正反対な印象がある。その違いは黒電話と往年のジャパノイズの違いと似てるところがあるように感じます」
黒電話 「サウンドアート / アカデミックなノイズの人たちとの違いって、ジャパノイズ好きの人たちは意識してるんですかね?」
西山 「昔はノイズという行為自体がアートだったんじゃないかな。それで成立してしまう。サウンドアート系のノイズは、“ノイズとしてのアート”じゃなくて“音としてのアート”で始まってるから、そこがやっぱり違う」

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