イ・ラン 이랑

이랑

――もっと直情的に作っていらっしゃるのかと思っていました。伝わり方を考えて作っていらっしゃるんですね。
 「うん。気持ちはダイレクトだけど。最初作る時だけはひとりで泣きながら作るし(笑)。それを見せるために、もう1回歌って、またもう1回歌って、どんどん構成を考える。どの楽器を使ったらちゃんと伝わるか、とか。だから、出来上がった曲を自分で聴いてもわたしは泣かないし、何の感情もないよ。検索とかで反応を見て、みんな“泣いた”って言ってたら、よく出来たって思う」

――そうやって特定の感情を組み立ててゆく感じは、手法としては映画を作るのと似た感覚なのでしょうか。
 「そうそう。映画は、マルチアートでしょ?音楽、音響、美術、色々やって見せるものだから。わたしが撮った映画の編集とかミキシングの時は、ここでこのサウンドが入ってきたら、こんな感情になるんじゃないの?とか考える。楽器をチョイスする時も同じ。ここはチェロやろか、ベースやろか?ピアノやろか、シンセサイザーやろか?拍手やろか、コーラスは何人やろか?とか。わたし頭が良いから(笑)」

――頭が良いから(笑)。
 「そうそう。わたしが一番天才なの。韓国の女性の中で(笑)」

――(笑)。でも本当にすごいアルバムだと思いましたよ。今おっしゃっていたように、映画やドラマも作ってっしゃることが、今回の作品にはすごく良く出ていると感じました。
 「ありがとう~。よかった」

――今回は、前作と違って色んなミュージシャンが参加しているのが特徴的ですよね。
 「うん。今回も作曲からデモ作りまで全部ひとりでやったんだけど、それをレーベルに送ったら、社長さんがリアル楽器で録音するほうが良い、って。わたしGarageBandで作るから。GarageBandの中にいるドラムとかチェロ、フルート、ピアノとかで、全部なんとなくの感じでデモを作ったけど」

――でも、デモの時点でそういった楽器を入れることは考えていらっしゃったんですね。
 「うん。がんばったよわたし。マスター・キーボードでチェロとか入れて。それで満足してたけど、わたしはGarageBandじゃない本当の音を知らないから、社長さんがリアル楽器で録音しようって言い出して、なんでや?って思って(笑)。時間もかかるし、誰とやるかも難しいじゃん。だからう~ん……てずっと思ってて、結局社長さんが人を選んで録音したよ。聴いたらびっくりした。全然違う(笑)。リアル楽器の人は天才かよ!って思った(笑)」

――あはは(笑)。演奏のメンバーはご自身ではなくて、社長さんが選んだんですね。
 「そうそう。ドラムの人は元彼なんだけど(笑)」

――えっ!そうなんだ……。
 「うん。彼氏だったよ(笑)。ベースの人とチェロの人は社長さんが探してくれた。初めての人と会って、一緒にやったら、エネルギーがばっ!って出て、めっちゃ楽しい。前は人間材料があんまりなかったから、ひとりでマスター・キーボードと一緒にがんばってたけど(笑)。映画も最初は全部ひとりでやってたけど、今は色んなところからお金をもらって作るから、初めての編集監督とか、ミキシング監督とか会うよ。先月ドラマのミキシングをした時に、わたし、生きててよかったです、ってミキシング監督に言って。その人と仕事して、めっちゃ生きてて良かったと思った(笑)。神様ですか!みたいな。本当上手で、びっくりする。その人は、今までがんばって仕事してきたからそうなったじゃん。チェロとかもそう。ほかの人と会ったら全然違う。楽しい」

이랑

――そういうところに、希望を見出したりはしないんですか?
 「そうだね。友達がいなくなっても、新しくエラい人と会うと、その人とやりたいな、って気持ちが出るから。ちょっと治った。でも寂しい。監督さんたちとか仕事で会う人は、友達ではないから。みんな忙しくて仕事ばっかりしてるし、わたしもめちゃくちゃ忙しくて、余裕作って会うことがあんまりできない。仕事でまた会って、楽しめるけど、友達じゃないのはちょっと寂しいなって思う」

――本当は友達とできたらベスト?
 「うん。最近死んだ友達は14年の付き合いだったから、14年分のギャグが通じたけど、新しく会う人は今から作るじゃん?それを作る力もあんまりないし。わたしも今仕事ばっかりだから。大変だ」

――それ聞いてると辛いですね……。
 「だけど、音楽作ったら楽しいし、録音したらまた楽しいし、映画作る時も楽しんでる」

――それは、完成するのが楽しい?それとも過程が楽しい?
 「過程。だからこのアルバムが出る時も、全然楽しみじゃなかった。完成すると無感覚になる。『ヨンヨンスン』が出た時もそうだったし、映画が公開される時も全然何も感じなくて。作るプロセスは全部楽しんでたけど、みんなはそれを全然知らないじゃん。だから出来上がった気持ちより、その前のほうが全然楽しい」

――そうなんですね。僕だったら、もしこんな素敵な作品がこう、パッケージになって売られているのを見たら、嬉しくなっちゃうと思う(笑)。
 「全然。デザイナーさんと、本にすることを考えていた時のほうが全然楽しい。見るより、考える時のほうが、やったー!みたいな感じ。天才じゃん!みたいな。チェロの人とやった時にびっくりして泣いたり(笑)。“平凡な人”の歌(『神様ごっこ』収録)あるじゃん?最初にドラムを録音して、それを聴きながらギター弾いて、歌ったんだけど、ドラムの録音の後に彼氏と別れたよ。わたしは別れた彼氏のドラムを聴いて録音するから、寂しくて泣いて(笑)。歌の歌詞も、“わたしが愛する家族を探す”とか歌うから、ドラムの録音の時のことを思い出して泣いて歌って。後で聴いたら、鼻をすする音とか入ってて、ミキシングの時に社長さんがキタネ~って言って消したりした(笑)。そういうのとかめっちゃ楽しい。綺麗になってから聴いたら、良く出来たな、って思うだけ。作るの時はめっちゃ色々あるけど。〈世界中の人々が私を憎みはじめた〉の曲も、インプロヴィゼーションでやって、ワンテイクで完成になった。チェロの人は天才で、わたしも天才。韓国インディ・ミュージック・シーンの歴史的な瞬間だよ(笑)。朝2:00とか3:00くらいで。終わって煙草吸って。周りが静かなホンデの中で」

――録音された雨乃日珈琲店とは、どんなご関係なんですか?
 「雨乃日珈琲店は、清水さんていう人が夫婦でやってるコーヒー屋さんなんだけど、わたしが日本に初めて来たきっかけが清水さん。清水さんはイ・ランの歌が好きで、自分の結婚式のパーティに招待してくれたの。その時に、せっかくの良い機会だからって、友達が金沢と松本、東京でライヴ作ってくれたの。清水さんが日本に行くドアをオープンしてくれた。めっちゃ楽しかった。テンションめっちゃ上がったよ。その時は日本語全然わからなかった。『スマスマ』観たから、“オーダー!メイン料理とチョコレートのデザート!”は言えたけど。日本で友達と出会って、めっちゃ喋りたくなったから、帰ってから勉強を始めたよ。留学した友達が教えてくれて。今はすごいペラペラ。でしょ?」

――うん、すごいと思います。
 「日本語でインタビューするとか、すごくね?」

――すごくね?って(笑)。やっぱ天才ですね!
 「あはは(笑)。でもインタビューやってる時は楽しいけど、後で読んだら、ふぅ~ん、な感じ」

――(笑)。
 「何でもプロセスが楽しいんだと思う」

――でもそうかもしれない。僕も自分で書いた原稿って、後からほとんど自分で読まないし……。
 「そっかー。わたしが書くことは映画だと台本だから、めっちゃ読まないと仕事ができない。撮影監督も、美術監督もそれで仕事するから。書く時は色んな気持ちで泣いたり笑ったりするけど、スタッフのみんなに説明する時は説明会みたいになる。設計図とか、ロボット掃除機の箱の中に入ってる取扱説明書みたいな感じ」

――音楽も、言わばそういう風に作ってるわけですよね。なんだか不思議な感じです。
 「わたしは全然音楽わからない人だから。ギターのコードも全然知らないし」

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