イ・ラン 이랑

이랑

――そうなんですか……。ぼんやり韓国の外側にいる僕から見ると、音楽に関して言えば、K-POPなんて華やかで、元気で勢いがあって、すごいなーって思っちゃいます。
 「韓国では、みんなK-POPのアイドルだけ見て逃避してる。本当はヘル朝鮮なのに。アイドルみんな、かわいくて、かっこよくて、めっちゃがんばってるじゃん。その裏側は全部ヘル朝鮮。グワ~(笑)。みんなアイドルを見ながら生きてる感じ」

――アイドルの皆さんも、実際は相当過酷だって聞きますよね。
 「うん。めっちゃ大変だよ。アイドルと仕事することがあったんだけど、27歳くらいの子なのに、全然、何も知らないの。周りにはスタッフが7人くらいずーっと一緒にいて、話もできないし。家にもマネージャーと一緒に住むから、外のことを何も知らなくて、小学生みたいな感じ。今どこに行くか、明日何するかも全然わかってなくて、ロボットみたい」

――なんだか可哀相ですね……。
 「めっちゃ可哀相。でも、みんな自分を守ることで精一杯だと思うから。わたしは今がんばってるけど、友達が遠くに行ったり、自殺したり、辛いよ。韓国は自殺率1位だから。世界の中で。若い人が自殺するの。でも何で自殺するかも十分理解できる」

――自分でも考えたことがあるってこと?
 「めっちゃ何回もあるよ。自殺しようと思って薬飲んだりしてたよ。失敗したけど」

――失敗して良かったですよ。本当に。
 「失敗した時の話しようか(笑)?」

――うう……。
 「あはは(笑)。みんな元気で明るいアイドルとか見て、自殺したいとか、辛いこととか、本当の話は地下に隠してる。地上は楽しんでいるフリ。だからどんどん大変になるんじゃないかと思って。だからわたしは友達に、自殺したい話フツーにするよ。どうやって自殺しようかな?とか。そういう会話ができる人に話すと楽になる。“そんな話しないで!”とか“バカ!”とか言われたら、もっと悔しくて、もっと自殺したくなる。『神様ごっこ』を作る時、みんなそんな気持ちで生きてるんじゃないの?と思って」

――ランさんの音楽自体は、楽しい曲が多いです。その中に、辛いテーマをあえて内包しているということなんですね。
 「うん。わたしはフツーにギャグが大好きだから、自殺したいとかの話をする時もギャグばっかり。例えば映画でも、寂しい、切ない主人公が泣いているのを撮っても、お客さんは寂しくならない。全然、失敗。だけど、人生めちゃくちゃなのに笑ってたら、お客さんは泣くよ。わたしの音楽でも、死にたい!って見せたら、お客さんに伝わらないよ。だから、作品を作る時はそれを計算するのが大事。それはフツーに考える」

――もっと直情的に作っていらっしゃるのかと思っていました。伝わり方を考えて作っていらっしゃるんですね。
 「うん。気持ちはダイレクトだけど。最初作る時だけはひとりで泣きながら作るし(笑)。それを見せるために、もう1回歌って、またもう1回歌って、どんどん構成を考える。どの楽器を使ったらちゃんと伝わるか、とか。だから、出来上がった曲を自分で聴いてもわたしは泣かないし、何の感情もないよ。検索とかで反応を見て、みんな“泣いた”って言ってたら、よく出来たって思う」

이랑

――そうやって特定の感情を組み立ててゆく感じは、手法としては映画を作るのと似た感覚なのでしょうか。
 「そうそう。映画は、マルチアートでしょ?音楽、音響、美術、色々やって見せるものだから。わたしが撮った映画の編集とかミキシングの時は、ここでこのサウンドが入ってきたら、こんな感情になるんじゃないの?とか考える。楽器をチョイスする時も同じ。ここはチェロやろか、ベースやろか?ピアノやろか、シンセサイザーやろか?拍手やろか、コーラスは何人やろか?とか。わたし頭が良いから(笑)」

――頭が良いから(笑)。
 「そうそう。わたしが一番天才なの。韓国の女性の中で(笑)」

――(笑)。でも本当にすごいアルバムだと思いましたよ。今おっしゃっていたように、映画やドラマも作ってっしゃることが、今回の作品にはすごく良く出ていると感じました。
 「ありがとう~。よかった」

――今回は、前作と違って色んなミュージシャンが参加しているのが特徴的ですよね。
 「うん。今回も作曲からデモ作りまで全部ひとりでやったんだけど、それをレーベルに送ったら、社長さんがリアル楽器で録音するほうが良い、って。わたしGarageBandで作るから。GarageBandの中にいるドラムとかチェロ、フルート、ピアノとかで、全部なんとなくの感じでデモを作ったけど」

――でも、デモの時点でそういった楽器を入れることは考えていらっしゃったんですね。
 「うん。がんばったよわたし。マスター・キーボードでチェロとか入れて。それで満足してたけど、わたしはGarageBandじゃない本当の音を知らないから、社長さんがリアル楽器で録音しようって言い出して、なんでや?って思って(笑)。時間もかかるし、誰とやるかも難しいじゃん。だからう~ん……てずっと思ってて、結局社長さんが人を選んで録音したよ。聴いたらびっくりした。全然違う(笑)。リアル楽器の人は天才かよ!って思った(笑)」

――あはは(笑)。演奏のメンバーはご自身ではなくて、社長さんが選んだんですね。
 「そうそう。ドラムの人は元彼なんだけど(笑)」

――えっ!そうなんだ……。
 「うん。彼氏だったよ(笑)。ベースの人とチェロの人は社長さんが探してくれた。初めての人と会って、一緒にやったら、エネルギーがばっ!って出て、めっちゃ楽しい。前は人間材料があんまりなかったから、ひとりでマスター・キーボードと一緒にがんばってたけど(笑)。映画も最初は全部ひとりでやってたけど、今は色んなところからお金をもらって作るから、初めての編集監督とか、ミキシング監督とか会うよ。先月ドラマのミキシングをした時に、わたし、生きててよかったです、ってミキシング監督に言って。その人と仕事して、めっちゃ生きてて良かったと思った(笑)。神様ですか!みたいな。本当上手で、びっくりする。その人は、今までがんばって仕事してきたからそうなったじゃん。チェロとかもそう。ほかの人と会ったら全然違う。楽しい」

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